#5



カップル限定喫茶店『BKぷる』にて花永と甘いひと時を送った。



「はーたん♡」


「ほーくん♡」



ソファー席に隣り合わせで座りイチャコラ。ちゅーしたり、無意味にお互いの指を絡ませあったり、ちゅーしたり、注文したケーキを食べさせあったり、ちゅーしたり。


お陰様で花永の脳はいい感じに崩壊した。



「おぇえ……おろろろろろろ……」



そして盛大にゲロった。


ふぅ。ゲロ袋用意しといてよかったぜー。




◇◇◇




「さて歩乃佳。そろそろ帰るぞ」


「何言ってんの。まだ昼ちょっと過ぎただけだし、喫茶店しか行ってないでしょうに」


「それで既に私のメンタルは崩壊してる。かなりハードな一日だった。もう無理おうち帰る」


「しょうがないなぁ。それじゃ俺の家に来てもらいましょうか」


「オマエの家か?どうしてそうなる」


「いや花永にはウチの両親にちゃんと挨拶してもらおうかと思って」


「…………」



花永が逃げたので捕まえた。



「離せ」


「イヤだ!俺はもう花永を離さないって決めたんだ!何があったってこの手は絶対に離さない!」


「ちょっと感動のシーンみたいに言うなバカが。急に親に挨拶など無理に決まってるだろうが」


「それを言うなら結婚したのに挨拶も無しの方がどうかと思うんだけど?常識的に考えて」


「うぐっ……それはまぁ……なんというか……いやほら……心の準備がだな」


「既にウチの母ちゃんの方には今日連れてくって言ってあるから。すっぽかすと怖いよ?ウチの母ちゃん。花永知ってるでしょ?ウチの母ちゃんが何をやってるか」


「ぐぬぬぬ……まぁ知ってはいる……知ってはいるからこそ会いたくないのはある」


「もう結婚してるんだから、今後も会わない訳には行かないでしょ?ガタガタ言ってないで来い」



そうしてぶーたれる花永を自宅に強制連行するのであった。




◇◇◇




「おう!アンタがウチのバカのセンコーでヨメか!俺はコイツの母ちゃんだ!よろしくな!」


「あっ、はい……よろしくお願いします……」



対面する花永と母ちゃん。母ちゃんは笑顔でテンションも高い。対する花永は普段の横柄な態度は引っ込んでおり、これでもかってぐらい居心地が悪そうでちっちゃくなっていた。



「しっかしアレだな!自分の義理の娘になるヤツが自分より年上ってなんかおもしれぇな!クックックッ!」


「あっ、はい……なんかスイマセン……」



楽しげに笑う母ちゃん。そうなんすよね。花永の歳は母ちゃんの一個上なんだよね。


年上の義理の娘。普通なら接し方が難しそうだけど、母ちゃんだからね。なんも気にしなさそう。



「別に攻めてるわけじゃねーよ!何にしてもだ!コイツ、アホだからな!センセーがしっかり面倒見てやってくれや!」


「あっ、はい……わかりました……」



などと返答する花永だが、実際お世話してるのは俺の方である。怠惰を極めた花永に家事能力は無い。



「へぇー……花永が俺の面倒見てくれるのかー!よろしくな!花永!」


「お、おう……」



ねえねえ、花永。今、どんな気持ち?ねえねえ、どんな気持ち?なんて煽り散らかしたかったが母ちゃんの前だし我慢しとこ。まぁあとでコレをネタに弄り倒してやるけど。



「それはそうとセンセーよぉ……なんか別んトコで会ったことねぇーかな?センセーの顔見覚えあんだよな」


「……?いや、初対面だと思いますけど……?」


「んー……そうかぁ?」



考え込む母ちゃん。そして母ちゃんは何かに思い至ったのかスマホを取り出して何処かに電話をかけ始めた。



「あー、俺だ俺ーーオマエさ姉妹とかいっか?ーーそうそうーー妹か。ちなみに名前はーーやっぱな!気配似てっからそうだと思ったぜ!ーー実はなーーすぐ来る?わかった。まってんぜー!」



しばしの会話の後、通話を終了する母ちゃん。



「あ、あの……誰か来るんですか?」


「おう!ちょっと待ってな!多分すぐ来ると思うぜ!」


「そうですか……?ちなみに誰が来るんでしょうか?」


「安心しな!センセーが知らねぇヤツじゃねぇーから!」



イタズラを企てるワルガキの如く、ニヤニヤと笑う母ちゃん。一体何を企んでいるのか。


母ちゃんが連絡先を知っていて仲良さげに話す相手で、花永の知ってる人が来るそうな。


誰だろうね?




◇◇◇




「やあやあ!随分と面白い事になってるじゃぁないかっ!まったく!こんな面白いことはもっと早くに知らせて欲しいものだね!」



部屋の扉を軽快に開け放ち、1人の女性がこの場に乱入してきた。


白衣を纏ったとても綺麗な女性で俺にとって非常に馴染み深い人だった。



「ね、姉さんっ……!?」

「あっ、しーちゃんママ」



俺と花永の別々の言葉が重なる。



「は……?ママ……?」

「ん?姉さん?」



お互いに顔を見合わせて疑問符を浮かべる俺と花永。えっ、なに?姉さんってどういうこと?



「はっはー!戸惑っているようだね、キミ達!それではこの場でボクのことを知らない者はいないが、改めて名乗らせて貰おうか!みんなのママにしてなんでもアリのスーパーお姉ちゃんのしーちゃんママお姉ちゃんだ!改めてよろしく頼むぜ?実の妹にして義理の娘の花永ちゃんに義理の息子で義理の弟になるホノカくん?」




結論から言うと……。


しーちゃんママお姉ちゃんは花永の実の姉にして、俺の父ちゃんの8人居る妻の1人で俺の義理の母にあたる人であった。



なるほど?







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