第17話 「助けに行く覚悟」

「どうしたんだ、一体なにが起こってる?」


「あっ、カイリさん。カイリさんも止めて頂けませんか? ハルトさん、ウロボロスのダンジョンに向かうと言って聞かないんです!」


「うるせえ! てめえらみてえな奴らになにが分かる! オレが弱いはずないんだ!」


 ハルトが受付嬢に拳を上げようとしていたから俺が割って入る。


「やめろ。武器もなくしてどうやって勝つつもりなんだ」


「黙れ、気安く話しかけてんじゃねえよ無能が!」


「これまでと違って俺はもう無能じゃない。それに、そんなことは今は関係ないだろ」


「黙れ黙れ黙れだ黙れ黙れぇ! このオレに、口答えすんなぁ!」


 顔が真っ赤に染まっている。もう何を言っても聞く気がない。


「おい、お前ら早く来い!」


 ハルトは自分のパーティーメンバーを怒鳴りつける。

 いつもハルトに付いている三人の女の子たちはハルトから距離を取っている。


「なにをしている! オレの言うことが聞けねえのか!?」


「で、でも流石に……これは……」


「付いてこねえなら全員捨ててやるからな! オレに助けられた恩も忘れるような連中、必要ねえ!」


「……っ! 分かり、ました……お供させていただきます……」


 顔を蒼ざめさせてハルトの後ろを歩く。その足ははたから見ても分かりやすすぎるほどに震えていた。


 馬車で移動していく彼らの姿を俺たちは呆けて見送るしかなかった。

 そんな状況からいち早く立ち直ったのは受付嬢だった。


「すみません、カイリさん……こんなこと、止められなかった私が言うのもおこがましいんですが……」


「ど、どうしたんだ?」


「お願いします! あの人たち……ハルトさんたちを助けてあげてくれませんか?」


 俺を追放した奴らを、しかもほとんど自業自得に近い無謀なことをしでかす奴らを。


「きっと、イレギュラーをも乗り越えたカイリさんなら……きっと、ウロボロスだって倒せると信じています」


「カイリ様……どうされますか?」


 ナナが心配そうな目で見つめている。


「イオリちゃん的には放っておいていいと思うけどね~。自業自得としか思えないし」


「それは、そうかもしれないけど……」


「それと、こんなことでカイリが傷つくようなことがあったら、もしあいつらを助けられたとしても……イオリちゃん、親衛隊使って潰しちゃうかも♪」


「親衛隊ってなんだ!?」


「イオリちゃんだーい好きな連中が集まってできた集団だよ。なんか知らない間にできてたんだけど、あるなら有効的に使わないとね」


「イオリ、お前ちょくちょく口悪いよな」


 好きな連中、とか、潰すとか。いや、別にいいんだけどさ。


「それでも、俺は行くよ。ナナやアリシア……あとイオリも。ついてこいとは言わねえけど、俺はあいつらを助けに行く」


「それはカイリらしいけど……分かってるんだよね。カイリを酷い理由で追放した人たちだってこと」


「分かってるよ。だから……まあ、あいつらを助けるのだけじゃない。どうせ俺たちは王座を狙うために名を上げないといけないんだ。大魔獣『ウロボロス』の討伐、なんて良い宣伝文句になるだろ」


「だったら、イオリちゃんもお手伝いするねー! 出会ったときはちょーっと情けなかったかもだけど、イオリちゃん、こんなに可愛いのにそこそこ強いんだよ?」


「一人でダンジョンに潜れてた時点で、弱いとは思ってないよ」


 恐らく、パーティーを組めばイレギュラーでも対応できたんじゃないか? もう終わったことだから確かめようがないことだけど。


「イオリちゃんのスキルは――『心眼』って言うんだ。人と物を視ることに関しては、誰にも負けないと思うよ。有効に使ってね♪」




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