第8話 「討伐依頼」
魔力適正も調べようと勧められ、俺は再び水晶玉に魔力を込める。
――バリン
「あああああああ! 水晶玉がああああ!」
まさか二回目もやらかすとは思ってなかったのか、受付嬢がもはや奇声に近い声を上げる。
「こ、これ、すっごく高いのに……いや、それよりなんで壊れるんですか!?」
「俺も分かんねえよ!」
むしろ俺が教えて欲しいくらいだ。
受付嬢はたっぷり考え込んで、人差し指を立てる。
「……原因として考えられる理由なんて一つしかありません。カイリさんの適性を測るだけの許容量がこの水晶玉にはなかったんでしょう」
「つまり、どういうことなんだ?」
「カイリさんぼ才能は測定不能でした。……こんなこと、今まで一度もなかったのに」
冒険者になる前、冒険者のことを色々と調べたが、そんな話は聞いたことない。
「ただでさえ、無能力者だと思われていた人物が才能を開花させるのもごく少数なのに、測定不能って……カイリさんは何者なんですか?」
「何者って、そんな大した人間じゃないよ」
ただの日本に住んでただけの高校生だ、なんて言えなくて適当に誤魔化す。
「これで大したことないって……いえ、これ以上はやめておきましょう。おかしなことが起こりすぎて許容量をオーバーしてしまいます」
受付嬢がどこからかほうきとちりとりを持ってくる。
水晶玉の欠片を片付けようとしていたから、俺は思わず彼女の手を掴む。
「あ、俺がやりますよ」
「へぁ!? 急に積極的すぎます! ここ、職場ですから!」
……ん? なんか勘違いが起きてないか?
「そういうことは、もっと人気がない場所で――っ!」
「なんの話をしてんだお前は!?」
言い方的に乱暴でも働くと思われたのか。あまりにも危険すぎる誤解だ。つい最近ハルトから誤解を広められそうになって敏感になってる。
「掃除を俺がやるって話だよ。水晶玉割ったのも、俺のせいだし」
「ならわたしもお手伝いします〜!」
「みんながやるなら私もやろうかな。こういうのはみんなでやった方が早く終わるし」
なし崩し的に参加型の掃除が始まった。
……うん。俺から始まったこの流れだけど、ここまでの人数はいらなかったな。
◇
掃除も終わって俺たちは再び元の場所に戻っていた。
「さて、色々ありましたが、無事冒険者登録は終了です。ようこそ、ナナちゃん」
「はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
「冒険者になったらパーティーを組まないといけません。ギルドとしても冒険者の方はなるべく死なせたくないので。どうしてもパーティーを組めない事情があれば別ですが……」
「いや、俺たち三人でパーティーを組むよ。ちょうど最近、追い出されたばっかだし」
「パーティーに所属していないと大きな仕事も回ってきませんからね。それで良いと思いますよ」
やっぱり、依頼者側としても大人数で仕事してくれた方が安心感がある。
そういうこともあって、パーティーを作るのはそれだけで意味がある。
「今日は登録だけですか? まだ時間はありますし、クエストを受けていきますか?」
「そうだな。今ってどんな仕事があるんだ?」
「最近は特に『厄災』の影響が強く、ダンジョンが増えているんです。なので、ダンジョンボス討伐がほとんどじゃないでしょうか」
ダンジョンは魔物の巣みたいなものだ。ダンジョンを支配する強力な魔物をダンジョンボスと呼んでいる。
「なら、それ行こうか。できる限り難しいやつがいいよな」
神の言っていたことを信じるなら、俺の力で魔物を討伐するのは難しくないはずだ。それがたとえダンジョンボスでも。
そう思って強気に言ってみた。すると受付嬢がパラパラと資料に目を通していく。
「今一番難しいって言うと、この……大魔獣『ウロボロス』の討伐ですかね。――って、こんなの受けたら死にますよ!?」
「やってみなきゃ分かんないだろ」
名前からしてすごいヤバそうなのは伝わってくる。めっちゃ怖い。けど、いけるはずだよな……?
「ぜっっっっっったい駄目です! せめてやるにしても実績を積んでからにしてください!」
どうしても俺に行かせたくないらしい。万が一ってこともあるし、仕方ないか。
実際、俺自身で積み上げた実績はないわけだし、全く無名のやつがいきなりウロボロスを討伐……なんて、無謀としか思えないだろうな。
「分かったよ。じゃあそれより一個危険度低いやつにするよ」
「それでも危険ですけど……キマイラのダンジョンですかね、私が許可を出すのは。でも、危ないと思ったら逃げてくださいね。このダンジョンだって、普通の冒険者じゃ無謀みたいなものですから」
「大丈夫だよ。絶対、帰ってくるって」
「もう、カイリさんは楽観的すぎですよ。……約束、ですからね」
受付嬢からダンジョンの場所が書かれた依頼書をもらって、俺たちはギルドの外に出た。
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