いつもの帰り道

或日空

第1話桜舞い散る帰り道

小鳥の囀る音、風に揺られきしむ木々の音がまるで自然のオーケストラみたいだった。


その日も俺達はいつもと同じように一緒に帰宅していた。そのとき僕、佐々木こうたは中学3年生。


帰りのホームルームが退屈で少し眠く、頭が働いてない僕の耳に大きく、透き通った声が響いた。


「ふぁ〜!、こんないい天気の日に午前授業で早く帰れるなんてなんて幸運なんでしょう!」


 僕の隣で無邪気に喜んでるショートカットで夏服の制服がやけに似合っているこいつ。僕の小さい頃からの幼馴染である名鳥ととである。


「まったく、大袈裟なんだから」


「だって、来年にはこうたと一緒にこの道を帰ることがないかもなんだよ!?」


「一応志望校一緒のはずですけどー?」


「だ、だって落ちちゃうかもしれないし……」


「お前……その言葉、俺よりテストの順位高いこと知りながら言ってるよな!?」


「ふっふーん♪来週模試が控えてるこうたくんには効いちゃったかぁ(笑)」


「てめー、結果返ってきたら覚えてろよ」


「しーらないよーだ♪」


 べーっと舌をちょっぴり出して走り去るととを追いかける。追いかけることに多少の面倒臭さを感じるが足を止めることはない。


来年もまた、ととと一緒に帰れたらいいな、と思いながら走った。


道の横に桜の気が植えてあるいつもの帰り道を全力疾走で駆け抜けていく。


そんな俺達を春風が追い越してく、始まりの季節は春。桜の花びらがまだ散り去ってない早春のことだった。

 

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