36話 昔馴染み

 真波に連れて来られた別海医師と匠、そして柑乃が、縁側から姿を覗かせると、加邊は伸び上がるようにして、やあ、やあ! と別海に手を振った。

「久しぶり、なお──」

 気やすく言いさして、別海に氷柱つららのような眼差しで睨まれ口をつぐむ。

「あら、お知り合いだったんですか?」

 真波が気にした風もなく、ごく自然にそう訊くと、別海は鼻に皺を寄せたまま頷いた。

「この目で見るまでは、とても信じる気になれなかったがね。……そうかい、まだ生きていたかい」

「まるで幽霊みたいに言ってくれるね」加邊は苦笑し、真波に顔を向ける。「僕は昔、別海さんと同門で学んでいた事があるんです。ここに来た理由も、半分くらいは、彼女に会える事を期待したからでして」

「思い出話は後にしとくれ」ひどく疲れた様子で別海はため息をつき、柱に手をかけて体を支えながら外に出てきた。

「正直、こんな所で会いたくはなかったが、来てくれて助かったよ。──こちとら手詰まりでね」

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