何が言いたい。このぼけ。このボケカス。

エリー.ファー

何が言いたい。このぼけ。このボケカス。

「もしも、君が本当の言葉を知っているなら。それは、完全には語られない物語の始まりと言えるだろう。寂しがる必要はない。一流であるということは、天才であるということは、頂点であるということは、常に風の中を生き、風になるということと同義だ。失ってはならない。手に入れてもならない。この冷酷な哲学の中で、君が君のことを知り、そして、君の知らぬ君の可能性を光り輝かせることを祈っているよ。なんてね、すべて嘘さ。君の中には、そんな希望に溢れたものなんかないよ。でもね、たとえ、僕の言ったことが嘘だったとしても、その嘘を本当にできる可能性が君にあることは、嘘偽りのない真実なのさ」

 何が言いたい。このぼけ。このボケカス。

「いや、僕は本当のことを言いに来たのさ。例えば、僕と君が出会えた事象は、奇跡の連続によって成り立っている。星が生まれるように、その星に何かが生まれるように、その星に生まれた何かが死に絶えるように、そして、星が死ぬように、数えきれない偶然の集積によって紡がれている。僕たちは、そんな僕たちの手から離れたものをただ見ることしかできないと思っている。観測者にしかなれないと諦めている。でもね、それは違う。僕らは、僕ら以外のものと、か細いけれども、決して切れない糸によって結ばれている。僕たちの行動の一つ一つが大きな事象に繋がることはないまでも、必ず何かに影響を与えている。けれど、そう、それでも、だ。僕たちの手が届くことはない。でも、僕たちは物語を与える。いや、押し付けると言った方が正しいかもしれないね。そうすることで、僕たちは偶然を必然に変え、必然を伏線に変え、伏線を重ねて物語にする。誰が主人公になるのか。誰が悪役になるのか。誰が脇役になり、誰がキーパーソンになるのか。もちろん、決めるのは君自身だ。何故なら、この世界は君のことなんか待っていないけれど、君は君のことをこの世界の主人公にすることができる力を持っているんだ。単純な話さ。たとえ、君が世界の中にいても、世界は君の想像力の中なのさ」

 何が言いたい。このぼけ。このボケカス。

「もしも、僕らに死が訪れなかったとしたら、僕らは命を大切にできるだろうか。難しいだろうね。僕らは、何を大切に思うかを決める権利があり、侵害されることは一切ない。それは主観に大きく依存しているが故に、客観のような確固たる地位を築くことのできない証明でもある。さぁ、先ほども言った通り、難しいはずだ。でも、できるはずだ。自分が大切だと思っていないものを、大切だと思うために必要な能力は何か。簡単だよ。想像力さ。もう一度、言おう。人の持つ、想像力だよ。僕たちは、死を知りながら体験することはできない。死を体験している時には、もう知ることはできなくなっている。でも、今、僕たちは、生きている。君も、生きている。そして、死を想像できる。もちろん、本物の死ではないだろう。だけれどね、繰り返し、繰り返し、繰り返し、死について考えるうちに、僕らは死の本質に近づいていく。死、という言葉や、繰り返す、という意味に囚われるとネガティブに感じてしまうかもしれないが、この心の動きはね、思いやりと同義なのさ。きっと、君なら理解できるはずだよ。絶対にね。僕は君を信じている。いや、君が紡ぐ物語を信じているよ」

 何が言いたい。このぼけ。このボケカス。

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