今日から始まるファンタジー
うめもも さくら
ファンタジーは突然に
俺はファンタジーなんて信じない。
この世界は目に見えるものが全て。
妖精やらおばけやら
神様なんてものがいるなら不幸な人間などいなくなるだろう。
それなのに、この世界には俺を含めて不幸な人間が多く存在してる。
だから神様も信じない。
急に可愛い女の子たちに囲まれて全員に好かれるようなラブコメ展開も存在なんてしない。
どれもこれもフィクションだ。
フィクションなんて
マンガもアニメもゲームもドラマも小説も何もかも全て。
この世界は偽物で溢れかえっている。
そんなものにのめり込むのは現実逃避する者だけ。
そんな偽物を世に出して金儲けする奴らなんて詐欺師とそう変わらない。
……って思いながら生きてきたんだ。
今日のこの日までずっと!!
出逢いは都心から少し離れた場所にある小さな本屋だった。
俺は
この時点でだいぶファンタジー。
現実的にありえない。
しかも7人全員が神様で全員が幼馴染を好きだなんて。
そんなラブコメ展開、あるわけない。
そんなラブコメなファンタジーありえるわけない。
俺は大切な幼馴染の目を覚まさせるべく、この本が光ったという
店内に足を踏み入れるとギャーギャーと騒がしい声がした。
多くの客で賑わっているということかもしれないが、あまりにも騒がしい。
それもまるで
まるで本屋ではないみたいな騒がしさに少々戸惑いながら店内を見て回る。
とりあえず、人の声でうるさい以外は普通の本屋に見える。
広くはないがいろんな本が置いてあって、
基本、俺は本屋も得意じゃない。
フィクションが場所を
俺の買うものなんて参考書か、たまに買うファッション雑誌くらいのものだ。
それも電子書籍を利用し始めてからは、最近は特に本屋に立ち寄るなんてこともなくなった。
久しぶりの本屋に少しだけ妙な心地をおぼえる。
見慣れた参考書、あまり読んだことのないライトノベル、昔ながらの童話。
あれは源氏物語か?
古典の教科書でしかあまり知らないな。
源氏物語って平安時代で人気だったらしい。
……いつの世も、フィクションにのめり込む奴はいたんだろうな。
俺があまり興味を持つことなく、ただ店内を見回していると一人の女性が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ!何かあればお気軽にお声がけくださいね!」
その女性があまりにも嬉しそうな笑顔で声をかけてきたので少し驚いた。
その優しげで甘い笑顔に、何故か胸のあたりが脈をうつ。
……なんだろう?風邪でもひいたかな?
軽やかに歩いていく彼女の後ろ姿を見送ってから、何の気なしに目の前に並んでいた一冊の本を手に取る。
男女の恋愛が描かれたファンタジー要素のあるライトノベルのようだ。
正直俺が一番苦手な
この本に興味など一切ない。
しかし、何も買わないで帰るのも、あの女性店員に申し訳ない気がした。
せっかく声をかけてくれたわけだし。
いや、べつにやましい気持ちは一切ない。
ただ、せっかく久しぶりの本屋に来たんだし、何か買って帰るのも悪くはないかなって思っただけだ。
俺は本を手に持ったまま、レジに向かった。
本棚が並んでいる奥にレジはあるようだ。
レジに近づけば近づくほど騒がしくなる。
レジの近くで誰かが喧嘩でもしているのか。
そういえば外にコーヒーなどのメニューがチョークで書かれた看板が出ていたっけ。
レジ近くにカフェでも
俺はそのまま本棚を通り過ぎ、レジの前までやってきた。
「ほんとーっにひどいのよ!この子ったら私に見向きもしなくなっちゃって!!」
大人びた話し方だが、少女のように可愛らしい声が聞こえる。
「私のことをゴミ捨て場に何度も捨てたのよ!!」
とんでもないこと言ってる。
「捨てられてるってわかってるなら帰ってこないでよ!忙しい朝に捨てに行くこっちの身にもなってほしいわ!何回も何回もイヤガラセ?」
とんでもないこと言ってる!!
どんな人がどういう関係でどうなったらこんな会話になるんだろう。
会話からは事件性しか感じない。
思わず俺は本棚の影から声がする方を覗いた。
「まぁー!!こんなヒドイ事言って!昔は私がいなきゃ泣きまくって何もできなかったくせに!全く一人で大人になったような態度、失礼しちゃうわ!」
若い女性とぬいぐるみがしゃべっている。
……。
……え?
うぇ!?ぬいぐるみがしゃべってる!?
俺が何度も
若い女性の横でぬいぐるみが動いてしゃべっていた。
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