第六十六話

 川に立つ〝②〟の入力機がライトに照らされているのが見えた。

石段を渡っていると、よろめき、膝から崩れ落ちた。


 足がろくに動かない。

匍匐ほふく前進の状態で進み、入力機に向かう。


 絶対に、クリアする……。


 絶対に、クリアする……。


 絶対に、クリアする……。


 絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く……。


 絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く……。


 絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く……。


 躰がふらつく。

【02:23】

【02:22】

【02:21】

時間がない……。


 何とか川に入り、何とか泳ぐ。

疲労。

痛み。

重み。

入力機に近付くのに比例する様に、それ等は激しさを増す。


 もう少し……。

はしごまで、もう少し……。


 絶対に、クリアする……。


 絶対に、クリアする……。


 絶対に、クリアする……。


 絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く……。


 絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く……。


 絶対に、廣哉を《天国》に連れて行く……。


 はしごを掴み、それに重い足を掛ける。

息を吐き、指紋認証を行った。

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