それぞれの"いいわけ" 【KAC20237参加作品】
あら フォウ かもんべいべ
第1話 カスガ大尉の"いいわけ"
◇
今までの人生で一番後悔したことは……だって?
そりゃあるさ、両手じゃ数えきれない程にね。
あんた、戦争した事はあるかい? ない?……いや、良いんだ、一番なんてどうでもよくなるだけさ。
そうだな、これはもはや"いいわけ"とも懺悔とも言えない、ただ過去の話だ。
俺の戦友、サマーフィールド上等兵は戦地の露と消えた。彼女が名誉昇進した話だ。
戦地にも慣れ、仲間とも打ち解け、俺とも解り合えるようになったメリケン小娘も、退役したら聖職者になる……そんな夢を語りながらさ、戦地の理不尽に耐えながらも、あいつは諦めず己の矜持と博愛を貫き通したんだ。
あるとき彼女は、戦地に取り残された子供を見捨てられず、不用意に飛び出してしまった…罠だと疑わず、たった一発の銃弾が彼女に牙を向けたんだ。
最早"いいわけ"で済まされない…目を離した一瞬の出来事だ。
銃弾が飛び交う中、彼女を救出すべく思わず駆け出した。
不思議なことに俺にはいっさい当たる気なんてしなかった。
何度も当たった事はあるが、不用意な事さえしなければそう当たるものじゃない。
あとは幸運か不運か、二つの運命だ。
彼女の当たりどころが悪かったのか、出血が酷かったものの、何とか応急処置を済ませ、ハンヴィーまで無事に運び込めば後方へ搬送、急行し、適切な治療を受けて助かる…はずだったんだ。
…突然、RPGー7が放たれ、至近距離に着弾したんだ…とっさに伏せていなければ俺は、耳鳴りとお友達はおろか、間違いなくこの世とおさらばしていた。
そう、運が良かった……俺だけはね。
一方、不運が重なった彼女は、それまであったはずの脚が吹き飛び……それでも諦めず応急措置を施し、ハンヴィーまで運び込んだ。
ああ、"いいわけ"なんて出来ないさ、俺の不注意で彼女をこんな目に合わせてしまったのだから。
それからまもなくだ、彼女が息を引き取ったのは──。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます