それぞれの"いいわけ" 【KAC20237参加作品】

あら フォウ かもんべいべ

第1話 カスガ大尉の"いいわけ"




 今までの人生で一番後悔したことは……だって?

そりゃあるさ、両手じゃ数えきれない程にね。


 あんた、戦争した事はあるかい? ない?……いや、良いんだ、一番なんてどうでもよくなるだけさ。


 そうだな、これはもはや"いいわけ"とも懺悔とも言えない、ただ過去の話だ。


 俺の戦友、サマーフィールド上等兵は戦地の露と消えた。彼女が名誉昇進した話だ。


 戦地にも慣れ、仲間とも打ち解け、俺とも解り合えるようになったメリケン小娘も、退役したら聖職者になる……そんな夢を語りながらさ、戦地の理不尽に耐えながらも、あいつは諦めず己の矜持と博愛を貫き通したんだ。


 あるとき彼女は、戦地に取り残された子供を見捨てられず、不用意に飛び出してしまった…罠だと疑わず、たった一発の銃弾が彼女に牙を向けたんだ。


 最早"いいわけ"で済まされない…目を離した一瞬の出来事だ。


 銃弾が飛び交う中、彼女を救出すべく思わず駆け出した。


 不思議なことに俺にはいっさい当たる気なんてしなかった。


 何度も当たった事はあるが、不用意な事さえしなければそう当たるものじゃない。

あとは幸運か不運か、二つの運命だ。


 彼女の当たりどころが悪かったのか、出血が酷かったものの、何とか応急処置を済ませ、ハンヴィーまで無事に運び込めば後方へ搬送、急行し、適切な治療を受けて助かる…はずだったんだ。


 …突然、RPGー7が放たれ、至近距離に着弾したんだ…とっさに伏せていなければ俺は、耳鳴りとお友達はおろか、間違いなくこの世とおさらばしていた。

そう、運が良かった……俺だけはね。


 一方、不運が重なった彼女は、それまであったはずの脚が吹き飛び……それでも諦めず応急措置を施し、ハンヴィーまで運び込んだ。


 ああ、"いいわけ"なんて出来ないさ、俺の不注意で彼女をこんな目に合わせてしまったのだから。


 それからまもなくだ、彼女が息を引き取ったのは──。




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