濡れ衣侯爵令嬢の復讐
ゆーり。
プロローグ 処刑場にて
「っぁ……あああああああああぁぁぁっ!!!」
処刑台の上、慟哭するひとりの女。手入れされていない髪はボサボサで、牢獄ではろくに眠れなかったのだろう、目の下の隈もひどい。見開かれた目は血走っており、もはや侯爵令嬢の面影などない。
………嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、絶対に私は信じない。信じない。何故?何故レネまで?レネは、レネは私の侍女で、侍女で……こんな、令嬢ですらなくなった、牢獄に入れられた私の世話を、してくれてっ……!!
女は問う。何故、と。
………主よ、私はそこまでの罪を犯してしまったのですか。何故皆を巻き込むのですか。私1人の償いでは足りないほどの罪なのですか。…そもそも私が犯した罪とは何なのですか…
絶望、諦め、後悔、怒り、嘆き……女は、黒く染まっていく。
………許さない、絶対に。もう私は何も出来ないけれど、死んで下界に堕ちても、呪って、祟ってやる………!
女は観衆を睨みつけながら、復讐を誓う。
「ふふっ」
そのとき響いたのは、処刑場に似合わない、少女の嗤い声。
………誰?
辺りを見渡し、女は見つける、その少女を。王族のために用意された貴賓席に座る、その姿を。
女は愕然とする。そして、全てを理解した。
………あぁ、そうだったのか。最初から、私は…
女は空を仰いだ。雲一つない晴天。女は微笑んでいた。足元には、彼女の筆頭侍女、レネの首。木枯らし吹き荒れる中、それは行われた。
ソルディア歴219年 風の季 4の月 第3の水の日
ティナリア・アージェ・ミューレント 処刑
罪状 聖女殺害未遂
執行見届け人
第1王子 クレイヴン・フレーメ・レトレラ
第1王女 ミュリエッタ・アージェ・レトレラ
(敬称略)|
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