第98話 無双状態


「スピカ! 〔コメット・アタック〕!」


「きゅーん!」


「グワアアアアアアアアア!」


「スピカ! 〔ホーリー・バレット〕!」


「きゅーん!!」


「ギャアアアアアアアアア!」


 ――森の中で敵を薙ぎ倒しながら進むスピカ。


 ちなみに、今相手にしてるのは”トレント”という樹木のモンスター。


 そこら辺の木に擬態しているので、森の中を適当に進んでいれば必ずエンカウントする。


 本来であれば擬態からの奇襲が得意でぼちぼち厄介な相手なのだが、ステータスにバフをかけたスピカの敵ではない。


 むしろ少し進めば必ず襲ってくるので、完全に飛んで火にいる夏の虫状態である。


 ん~、経験値美味しいです(^q^)


「ふはははは! 蹂躙じゃーい! スピカの強さとかわいさにひれ伏せ! このウ○ッキーもどきがぁ!」


「きゅきゅーん!」


「……絶好調ね、あの二人」


「そうですわね。まあ、ノエルさんはもう悪役みたいになってますけれど」


「きゅわ~」


 スピカの活躍を後方から眺める三人。


 一方俺たちはもう何体目かのトレントをぶっ倒し、


「ふぅ、いい汗かいたなスピカ!」


「きゅーん!」


 爽やかに汗を拭った。

 いやまあ、俺は汗をかくようなことはなにもしてないんだけど。


 それにしても、この調子なら何度か『チェルテラの森』に通えば十分グリフォンを倒せるレベルになりそうだな。


 ククク……いくら主人公補正のあるレオンと言えど、この短期間でスピカ以上にアークを鍛えることなどできまい……。


 次会った時には、


「スピカちゃんをこんなに短期間で鍛えるなんて、ノエルくん凄い!」


「僕の完敗だよ!」


「流石は学園一のドラゴン調教師テイマー!」


 と先輩調教師テイマーである俺のことを称えて……。


 ……あれ?


 でもその流れだと、またレオンの親密度が上がってしまうような……?


 それに、出会った当初から似たようなことを言われてるような気もするんだが……?


「お、おかしい……このままだとレオンの親密度が上がる未来しか見えない……!?」


「きゅーん」


「ほらノエル、スピカちゃんお腹空いたって」


「お、おおっと! ごめんねスピカ、それじゃあそろそろご飯にしようか」


「また”カサマツキノコ”を食べさせるんですの? それじゃあその辺りを探して――」


「いや、”カサマツキノコ”を食べるのは戦闘前だけに限定しよう。あんまり食べ過ぎると、また飽きがきちゃうからね」


「それでは――」


「ああ、休憩も兼ねてちゃんとした調理をしようか」


 ――ここは大自然溢れる森の中。


 しかも近くには川も流れている好条件。


 探せば食材になる物は幾らでも自生しているはずだ。


 さあて……今回はスピカになにを作ってあげようか。

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