【掌編】ネコのきもち~777文字で綴る物語⑦~

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

●ゅ~るに免じて許してやるよ

――ガッシャーン!


 部屋中に響きわたるその音にビックリし、俺は目を見開いてしまった。

 音の衝撃で背筋がわずかに痺れ、その場から動けない。

 同居している人間はその音を聞いてハッとしてかけつけ、しまったという顔をしている。


「こらっ!」


 なんか俺、叱られた。

 なんでさ。

 俺と遊んでたのに板から音が鳴ったと思ったら途中止めにして喋り出し、放置して隣の部屋に行ったのが悪いんだい!

 フンッだ。


「もう~。ちょっと用事してただけなんだから、いい子で待っててよね」


 そんなの知らない。

 だってせっかくこの人間とゆっくり遊んですっごく楽しかったところだったのに途中止めにしたせいなんだ。

 俺はいつだっていい子だぜ?


「危ないから、片付けが終わるまではちょっと隣の部屋に行っててね」


 そう言って人間は俺をそこから締め出し、片付けをしだしたようだ。

 俺が落とした透明で液体の入っていた何かが割れて砕けて床に粉々なった、キラキラとしたやつを。

 ニャーと鳴いて出入口を引っ掻いてみたが応答がない。

 こっちの部屋、ちょっと寒いんだよな~。


 俺はどうしたものかとウロウロとした後、椅子に飛び乗った。

 ここにはフワフワした物が置かれていて幾分か温かい――と思う。

 肉球でグッグッと押してその場の具合を確かめ、体を丸くしてうずまる。

 しばしここで待つとするか……。


「――ンタ。ニャ~ンタっ」


 俺を呼ぶ声が聞こえてくる。

 あぁ、いつのまにか寝てしまっていたのか。


「お~い。寝てるの~?」


 面倒くさかった俺は尻尾の先をパタパタと動かして返事をしておいた。

 眠いんだよ、俺は。


「あ~ぁ。せっかくお詫びに●ゅ~るをあげようと思ったのに」


 魔法の言葉を聞き、俺は飛び起きる。


「プッ! げんきんなやつ」


 何とでも言え。

 あぁ、美味しい。

 これ好きだ。


「ごめんね。でもニャンタにとって大事な電話だったからさ。春だしそろそろ時期だから」


 何のこと?

 まぁいいさ。

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