言い訳をしないほうが良い訳。

かなたろー

トイレの電気を消し忘れる話。

 私は普段から割とぼんやりしている人間だ。

 忘れ物は日常茶飯事。電車の乗り過ごしも日常茶飯事。


 1日のうっかりのタイムロスを合計したならば、ちょっと恐ろしいことになってしまいそうだ。


 そんな私のうっかりの中でも、一番よくやらかしてしまうのが、家のトイレの電気の切り忘れだ。


 そして、私と正反対の性格の、しっかり者で絶対にトイレの電気を切り忘れない妻に、私は烈火の如く怒られる。


「つけることができるのに、なぜ消すことができないの?」

「ちょっと、考え事をしていたんだ……」


 電気の消し忘れをするたびに、妻に注意をされて、私はついついくだらない言い訳をしてしまう。

 そしてそのくだらない言い訳を聞いた妻は、さらに激しくブチ切れる。


 本当に申し訳ない。本当に申し訳なく思っているのだけれど、ついついトイレの電気を消し忘れてしまう。


 ぼんやりしてしまうタイミングというのは、大抵は小説を書いている時だ。


 あれやこれやと物語の展開を考えながらトイレに入り、用を足している最中に「フッ」とアイデアが降りてきて、アイデアを忘れないうちに夢中になって執筆をしていると妻に電気の消し忘れを詰められる。


 最近はあんまりにも電気のつけ忘れがひどいので、電気のつけ忘れを発見されてしまうと『罰金100円』を請求されるよになった。


 電気の消し忘れは、執筆に夢中になればなるほどひどくなる。

 なかでも、カクヨムコン開催中の時期はひどかった。


 計画性のない私は、規定の十万文字に届かせるため、ヒイヒイ言いながら執筆をつつづけていた。寝ても覚めても執筆のことを考え、そのたびにトイレの電気を消し忘れ、妻に烈火のごとく怒られる。


 おかげさまで、エントリーした作品はどうにかこうにか中間選考を突破できたのだけれども、それで得たなけなしのリワードは、綺麗さっぱりトイレの消し忘れの罰金へと消えてしまいそうである。


 しょんぼり。

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言い訳をしないほうが良い訳。 かなたろー @kanataro_

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