第5話 親友と
私は
入野李ちゃんの一番の友達と自負している。
李ちゃんが私のクラスに転校してくると聞いたとき、一部の庶民を見下す生徒を除き、クラス内で壮絶な『李ちゃん争奪戦』があった。理由はお察し。ツインフェアリーでオーディションを優勝した上、生徒会にも選ばれたのだから。しかも、李ちゃんと友達になれば、憧れの高等部の桃子さまや成美さま、聖紅さまに接近できるかもしれないのだ。
私にはそんな下心はまるでないとは言えないが、少なくとも他のクラスメイトよりはましだと思う。
『李ちゃん争奪戦』に敢えて敗れた私は、特に李ちゃんと仲良くなる予定はなかった。
しかし、席が前後になったことが幸いして、プリントを後ろへ回すときなど、二言三言交わすようになり、やがて仲良くなったのだった。
李ちゃんはハーフツインテールの髪にパッチリ二重の目が可愛らしい。この聖央華の茶色と緑のチェックの制服と、大きなリボンも似合っている。
「今日は部活を案内してあげるね」
私は、李ちゃんと色々な部活を見て回った。
「わあ、凄い!」
バトントワリング部まで来たとき、李ちゃんが歓声を上げた。バトントワリング部の人達はバトンを回しながら、自身もくるくると回っている。
李ちゃんのフェアリー、リイリーとメイリーも喜んでくるくる回る真似をしている。天使の羽と悪魔の羽が揺れる。
「ここで決まりだね」
私が言うと、李ちゃんが頷いた。
「うん、うん!バトントワリング部、凄いね!」
そこで、李ちゃんは思いついたように言った。
「絵実ちゃんは、どこの部活に入っているの?」
「私はクイズ研究会だよ」
「クイズ研究会かあ。それも面白そうだなあ」
「掛け持ちしてる人もいるから、興味があったら、入ったら良いよ」
「そうだね、考えてみる」
そこで李ちゃんは真顔でガッ、と私の肩を掴んできた。
「あのね、絵実ちゃん。最近、嫌がらせとか受けてない?」
私には李ちゃんの言っていることがさっぱり分からない。
「どういうこと?何もないけど?」
李ちゃんは肩にかけた手を外して嘆息した。
「あー、良かった。私、転校初日にクラスでかなり浮いていたから、私のせいで絵実ちゃんに迷惑かけていないか心配だったんだ」
「何だ、そんなことか。あのときの悪口は、庶民を見下している一部の人が言っていただけで、李ちゃんが気にすることじゃないよ。嵐藍さまと由梨乃さまも庇ってたし」
「由梨乃先輩が、自分が入学するときも、反発があったって言ってたから心配になって」
「由梨乃さまのときかあ。私はその時初等部2年生だったから、詳しいことは覚えていないけど、反発なんて感じなかったな。由梨乃さまって、すっごく頭が良いし、フェアリーバトルも負け無しだから、誰も文句のつけようがなかったよ」
「そ、そうなんだ…」
李ちゃんがなぜかガクリと崩れ落ちる。
「どうしたの?」
「私、頭良くない…。フェアリーバトルも大して強くない…」
「大丈夫だよ。李ちゃんはツインフェアリーだから。フェアリーゲットチャンスで、ツインフェアリーを出す子なんて、初めてだよ」
「それは実力じゃなくて、運だよ。由梨乃先輩はどうやってフェアリーバトルを勝ち上がっていったんだろう」
「由梨乃さまもすごく努力してたみたいだよ。あの成美さまが認めたくらいだもん」
「成美先輩?」
「成美さまは実力主義で有名な人だよ。富や名声に胡座をかいて、フェアリーバトルを疎かにする人を成美さまは認めないの。その成美さまが由梨乃さまはすごいって誉めてた」
「そうなんだ。私には雲の上の話だなあ」
「雲の上じゃないよ。もう生徒会の仲間入りじゃん。羨ましいくらいだよ」
私が言うと、李ちゃんは照れたような顔をした。
「そっか。もう、生徒会の一員なんだ、私。由梨乃先輩みたいに勉強もフェアリーバトルも頑張らなきゃ」
「その意気だよ」
そこへ聖紅さまがやって来た。
「あ、いたいた。李ちゃん、これからフェアリーフェスティバルのセットリスト会議するよー。生徒会館に集まってー」
「あ、はーい」
李ちゃんが答える。
ああ、麗しの聖紅さま、今日もお美しい。
やっぱり私、下心あるかも?
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