劇場完結編 校長室の最終決戦(ラグナロク)③
–––– この世は不条理に満ちています。
それは物語の中でも同様に、時として読者の心を抉ります。
悲劇は読者の心に傷をつけ、その鮮烈な記憶はトラウマとして残り続けるのです。
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「ヨクボウのボス、カンジョウ!! アッシ達がやっつけに来たんだよ!」
ハオちゃんは勢いよく校長室のドアを開きました!
そこに待っていたのは……
『よくぞ辿り着いた、魔砲少女達。待っていたぞ…… 。 久しぶりだな、ハオ』
「ぱ…… パパん?!」
なんて事ぉぉ?!! カンジョウの正体はハオちゃんのお父さんです! 立派な埴輪です!!
「ハオちゃん! どういう事?!」
メオちゃんも驚きのあまり『ですわ』を付け忘れています。
『ハオ。全てを伝える時が来たようだ。よく聞きなさい』
カンジョウは空洞の瞳に優しさを湛え、ゆっくりと話し始めました。
それはハオちゃん達の誕生秘話だったのです。
『数年前の事だった。この世に絶望したある男が、神の来臨を願い禁断の魔法を使った。 しかし、その男は詰めが甘かった。 魔法を魔砲と書き間違えてしまったのだ」
「パパん。それがどうしたんだよ?」
ハオちゃんの問いに、カンジョウは『それがな…』と言葉を続けます。
『暴走した魔砲は天ではなく地に放たれてしまったんだ。私達が眠る地中にな…… そして、我々は意識を得たのだよ』
そんなことが……
『その中でも、ハオ。お前は多くの魔砲を身に受けた。だから、人の望む神の姿、『人』の姿をしているのだよ』
なんか取ってつけた設定ぽいですが、聞き流しましょう!
「でも、それとヨクボウの関係はないんだよ! 何故、パパんがラスボスなんだよ?!」
『ヨクボウとはその名の通り、その男の生みし『欲望』。それが暴走した姿だ。 そして、私の名である『カンジョウ』は『感情』ではなく『勧請』と書く。
つまり、この欲望を生み続ける願いの根源なのだ。さあ、ハオ。私を…… 破壊しなさい』
「いやだよぉぉおおお!! なんで、なんでパパんを壊さなきゃいけないんだよぉ!」
なんという悲劇でしょう。今まで積み上げたギャグが
その時、埴輪の髪留めが呟きました。
『おおお、ハオよ。我々埴輪は魂を鎮める存在じゃあ。つまり、魂のゆりかご。その器になり得るんじゃぁ』
「なにを……言ってるんだよ?」
『お主のお父上の
そん……な。 今までハオちゃんのピンチを助けてくれた髪留めが身代わりになるつもりです。
「いやだ! 絶対いやだ! お前は友だよ。戦友と書いて『トモ』と呼ぶ友達だよぉ。でも、パパんも助けたいよぉ!」
ハオちゃんが膝から落ちました。こんな理不尽な展開を用意した作者の性格は、きっと歪み切っています!
『おおお……ハオよ。ワガママをいうでない。お主との冒険……楽しかったぞぅ』
埴輪の髪留めはそう言うと、ハオちゃんから離れてフワフワとカンジョウに近づいて行きました。
『髪留めよ。いいのか?』
その、カンジョウの言葉に『ワシは髪留めにすぎんのじゃあ。ハオを幸せにしてやってくれぃ
刹那。
髪留めはカンジョウから『勧請』を吸い取っていったのです。
「髪留めぇぇーーーーいやぁあああ!!」
ハオちゃん、辛いですね。
でも、髪留めの想いを無駄にしてはいけません。
『さあ、ハオよ。魔砲でワシを…… 全て終わらせるのじゃあ…… 今まで楽しかったぞ、魔砲少女』
「ハオちゃん。立つのですわ。一緒に終わらせるのですわ。魔砲少女を必要としない世を私達で創るのですわ」
メオちゃんがハオちゃんの脇を抱え立ち上がらせました。彼女も涙を必死で堪えています。その想いが届いたのか、ハオちゃんは呟きます。
「メオちゃん…… わかったよ。 埴輪の髪留め。今まで、ありがとうだよ。お前の事……絶対に忘れないよ!」
二人の魔砲少女は手を繋ぎました。
そして、埴輪の髪留めに向かって、同時に魔砲を唱えました。
「「魔砲!! ありがとう!!」」
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–––– 眩しい程の閃光は
古墳中学校から全てのヨクボウを
その根源である勧請を
優しく消し去りました。
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