給食室の奇妙な某件

 皆さんご機嫌いかが? 女庭メオですわ。

ハオちゃんは保健室に行ってしまいましたわ。 彼女に掛かる重圧。それは想像を絶する所業ですわ。

 ハオちゃんが休んでる間、私がしっかり古墳中の平和を守りますわ。

 今日は考察する時間がないですわ。

その理由は……尺の都合ですわ。



–––– ハオちゃんが保健室でサボっているその頃。古墳中学校に鳴り響いたのは、昼休みの鐘の音でした。


「しかるに、給食当番。お昼ご飯の搬送頼むでござるぅ」

 先生は浮かれた様子で生徒たちに下知げちを下しました。そうです、今日の給食はカレーです。恋心が止まらないのは生徒だけではなく、殿がご乱心しても仕方ありません。


 そんな中、メオちゃんは胸元のペンダントを握りしめて瞳を閉じます。

 すると!ペンダントは輝き始め、そこから声がするではありませんか!

『メオちゃん、君の想いは受け取ったよ』

……誰でしたっけ?

『おおぃ!僕の扱い酷くないですか?! 劇場版で仲間になったヨクボウですよ!』


 まあ、どうでもいい事ですがメオちゃんはゆっくりと魔砲を唱えました。

「メオちゃん、変身ですわ」


 ああ、ヒロイン交代の予感がします。

ボディラインが露わになり、メオちゃんを光が包むのはハオちゃんと同じですが、メオちゃんは更にラメのエフェクトが追加されていたのです。

 光が収まり、姿を見せたメオちゃんは……

なんと! 給食当番になっていました。純白の割烹着が寂しい大人に癒しをもたらします!


「さあ、行きますわよ」

迷いないメオちゃんの行動は生徒たちに火をつけました。その強烈なリーダーシップは、給食当番をグイグイ率いて給食室に導きます!


 ––––しかし、事件は現場で起こってしまったのです。


『メオちゃん、気をつけるんだ!強烈なヨクボウの気配がする!』

 ペンダントが調子に乗って喋るな!というご意見はごもっともですがストーリーの都合上、仕方ないと諦めてください。

 メオちゃんは意を決して給食室に飛び込みました。そこに居たのは…… ヨクボウに支配された男子生徒の姿でした!


『ゴールデンなディナーだぜぇ!!』

 そんな馬鹿なッ!! ディナーではなくランチの筈です!

 ですが、市販のルゥにディナーカレーがあっても、ランチカレーがない矛盾が法治国家の根幹を揺るがします。

 彼はカレーのヨクボウに囚われたのでしょう。流石はカレー、恐るべき欲望です。


「みんなの希望カレーを奪わせませんわ! 喰らいなさい! 魔砲『怒雷ドライアイ』!!」

 メオちゃんは厄介な魔砲を放ちます。

しかし!! ヨクボウの男子生徒はカレールゥを顔に塗りたくって仮面みたいにしました! それにより、魔砲は打ち消されてしまったのです!!

『俺は人間をやめるぞ!徐々にぃぃ!!』


「いいえ、既に充分人間を辞めてますわ」


 なんと恐ろしいヨクボウなのでしょう。

きっと、目が大惨事になっているはずです!

そんな男子生徒の慟哭が給食室を揺るがせます!


『CURRYYYYYY!!!! 我が名はッ! 華麗カレーなる憎しみの食王ショッキング オディオ様だァァ!! 』


「カレーの王子様……の、上位互換ですわね」

 思わず、メオちゃんの頬を冷や汗が伝います。


ZEPPIN!バーモントッこの身体ッ!素晴らしいぞぉ!!』

 もはや、彼は人の言葉すら捨ててしまった様です。そんな強大な敵を前に、メオちゃんは冷静に呟きました。


「こんな事で躓くなんて、ハオちゃんの主役の座は奪えませんわ」

 本音がでました。正直なヒロインは応援したくなりますよね。次回からタイトルは『魔砲少女メオちゃん♡』に決定ですね!!


ジャワではとろけるこれはどうだ?』

 刹那、ヨクボウからスパイシィーな波動が放たれ、メオちゃんを襲います! ああッ、メオちゃんの表情が歪んでいます。読者の皆さん、応援(ボタン)を押して彼女を助けてあげましょう! いいねボタンとチャンネル登録をお忘れなく!


「そんな…… つ、強すぎますわ。……でも! 目には目をですわッ!!」

 メオちゃんは懐に忍ばせた生玉子をヨクボウに投げつけました! それは見事にカレーの仮面に命中します!


こ…く…ま…ろな…ん…だ…と?! き…キーマァ貴様ァ!!』

 なんと!! 玉子のまろやかさがカレーの仮面を打ち砕きました!! メオちゃん!チャンスです!


「カレーのヨクボウ、オディオと申しましたわね? その欲は人類等しく分け与えるものですわ。 これでトドメですわ!」

 メオちゃんに魔力が集まります。

–––– それは人類のカレーへの想い。そして、願い。人はそれを愛と呼ぶのです。

 カレーへの愛を一身に集めて、メオちゃんは放ちました。

「究極魔砲!『BomボンSplendid華麗!!」

 

『う、Leeぃぃいいい!!』

カレーのヨクボウは断末魔と共に消え去りました。

「悪•鬼•殲•滅!」

 こうして、今回はメオちゃんが古墳中学校の平和を守りました。

 ヒロインの交代を視野に魔砲少女は戦い続けます。その健気な少女たちの行く末に、どうか幸在らんことを。


          –––– つづく



「そういえば、首飾りさんって、元ヨクボウですわよね? ヨクボウの元凶はなんですの?」


『君達が戦うヨクボウの根源はね……。『カンジョウ』という想いの塊だよ。僕も詳細は知らないけどね』


「感情? 安直な名前ですわね?」


『油断しないでね。とっても強い想いだから、魔砲の鍛錬を忘れてはいけないよ』


「ええ、わかりましたですわ。これからも宜しくですわ、首飾りさん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る