第25話 刹那の風景5:メイキング対談:音信と後書き1

――今回のメイキング対談は、『杜若 音信』について話していこうと思います。おそらく、4部構成になるかと思いますので、気楽に読み続けていただけたらと思います。


――今回も今までと同様、読者層は、『刹那の風景 5巻』を読んだ方で、『小説家になろう』の『刹那の風景』シリーズを読んでいる方を想定します。書籍版に興味がない方や、『刹那の風景 5巻』のネタバレを気にする方はブラウザーの戻るボタンを押すことを推奨します。


――また、書籍化された『刹那の風景』しか読んでおらず、5巻以降の展開の話を望んでいない方もいると思いますが、その方々のために、先の物語の展開にかかわる個所は伏字にしておきます。


――なお、本の後書きから読むネタバレ派や、書籍を買うか迷っていてきっかけを探している方、書籍は買わないけどどういう観点でWeb版から書籍版を作っているのか気になる方が、この読み物だけを読むことに関しては、全然問題ありませんので、楽しんでいってください。


――以下、緑青を「緑」、薄浅黄を「薄」でお送りします。


――<杜若 音信:プロット>

緑 : ようやく最後、杜若だね。

薄 : まずは、プロットだね。テーマは3つあって、『エラーナの描写』と『勇者を導く者との邂逅』と『勇者を導く者の人物像』かな。


緑 : そのテーマに沿って、人物が切り替わってるから、分かりやすいよね。

薄 : まぁ、本編の後だから、なるべく読みやすいように、構成はしているつもり。

緑 : まぁ、1巻と2巻のティーレの話は回想があって、構成が分かりづらかったような気がするけど、今回はシンプルだったからね。


薄 : 1巻は、風の遺跡の話をして、69番目の勇者と遠征に行って、帰ってきてアギトと会談ってティーレ視点で行くと、セツナとの接点が最後まで出てこなくなるから、ずっと知らないティーレと69番目の勇者で話を進行するのは、無理があると思って、ああなっています。


緑 : それをいったら、今回の5巻は、セツナとの接点、最後の最後までないじゃない。

薄 : でも、すでに69番目の勇者は知っているから、そこは問題ないと判断してます。新キャラ視点でも、読者が「ん?」ってなるようにつくってあるしね。


緑 : 確かに。

薄 : 2巻については、69番目の勇者とティーレの出会いの回だから、回想にならざるを得なくって、構成が時間軸通りにならなかったんだけど、分からなくならないように、地の文の『勇者』と『勇者様』で過去と現在を区別しやすいようにかきました。読みやすくはしたつもりですが、厳しかったら申し訳ありません。


緑 : まぁ、薄浅黄も謝っているので、許してやってください。

薄 : どこから目線?

緑 : で、話をもどそう。これ5巻の杜若だからね。

薄 : といっても、もうプロットで触れることないな。何か話さなければいけないことある?

緑 : プロット見たときの感想とかは、次の詳細で話すとして、今回はなんで長編になったのか、かな?

薄 : あー。でもページ数の話どっかの章でしたと思うけど、思い出せない。まぁ、杜若が長い理由はここで被ってもいいからするべきかな。


緑 : じゃぁ、改めて、よろしく。

薄 : よろしく、されました。266ページから273ページまで、ティーレの話が約7ぺーじくらいあるんだけど、実は10ページ位になりそうだから、ちょいちょい削って、この感じになっているんだけど。


緑 : そうそう。

薄 : 何を言いたいかというと、この部分は、本当は全部4巻に収まる話だったと言うことです。

緑 : そうなんだよね。4巻のページ数が増えすぎて、この部分削ったんだよね。

薄 : 4巻のページ数が過去最大になっていて、もうダメだと思って半分ごっそり削ったんです。杜若は大体20ページを予定しているんだけど、4巻に載せきれなかった10ページ分を移してきて、結果30ページと長くなりました。


緑 : そのわりに7ページしかないのは?

薄 : すみません、5巻分が3ページほど浸食しました。

緑 : この移されてきたパート、かわいそすぎる。


――プロットといいながら、テーマしか話してませんね。各テーマにそってプロットは書いているのですが、詳細を次で話すので、触れてもというところです。今更ですが、最初に「プロット」について話そうとしたのがそもそもメイキングには合わなかったかなというのが正直なところで、テーマについて話しますといえばしっくりするんだと、今更ながらに思いました。次回有るならば、そこら辺を改善したいなとは思います。



――<杜若 音信:◇1ティレーラ 266頁>

薄 : ティレーラの部分の話をすると、エラーナの聖都を書きたかったっていうのがあって、今後ね、セツナがこの町を訪れるかどうかはさておき。


緑 : まぁ、この世界の中心ではあるからね、ちょいちょいWeb版でも名前はでてくるから、どんな町なのか知ってもらいたいというのは、薄浅黄の中にはあったよね。


薄 : むしろ、あの世界の宗教的な話をするときには避けれない都市なんだけど、セツナが今のところいっていないので、あんな話もこんな話もできないとなっていて、仕方なく小出しにできるところだけは書こうという感じです。Web版の四章以降で、もしセツナがエラーナに行ったら、読者は「知ってるよ、そこ!」とツッコミを入れてあげてください(笑)


緑 : そもそも、セツナが長期滞在している町以外、読者の興味が引けるのかという疑問もあって、書いてなかったんだ。


薄 : そういう意味で、書籍版の杜若は、読者の人気がなさそうな気がします。杜若のコンセプトって、セツナが行ってなかったり、意識的に避けていったり、無意識に通り過ごしてしまったりした、あの世界の補完をしようというものだから。


緑 : そうかも。

薄 : まぁそれでも、エラーナの聖都っていうのは、あの世界の人間文明の中心都市だから、話を書く価値はあるかなと思っていて、あとは、退屈にならないように、書ければなと考えていました。


緑 : でも、リシアの都であるハルの方が、発展しているよね。

薄 : あぁ、ハルは例外だよね。というか、文明は進んでいるんだけど中心ではないよね。なんていうか、ハルは中心ではなく、周りの文明とは隔絶している感じかな。例えば、鎖国していて最先端の文明だけど外には出さないみたいな感じ。


緑 : そうだね。

薄 : で、そのエラーナの聖都がどういう都市なのかっていうと、一番の特徴は、エンディアの巨像がある町という点だね。


緑 : すっごい高価そうな巨像だよね。蒼銀製だもんね。

薄 : 高さ100mの巨像なのだけど、この巨像を作っていくうちに出来上がった都が、聖都なんだよ。って、書籍にこのこと書いてあったっけ?


緑 : 書いてない気がする。

薄 : 削ったかな……、まぁいいか。

緑 : いいのか? 衝撃の事実とかじゃないの?

薄 : そこまでじゃないでしょ。きっと、想定内だよ。まぁ、そういうわけで、古代の人々がエンディアの巨像を作るために作られた都市だったわけです。書籍に書いてなかったら、感想欄でご指摘ください。


緑 : 自分で見直せという話では?

薄 : もう喋っちゃったし、この前提なしで話し続けるのも辛いし、しょうがない。

緑 : まぁ、確かに。仕方ないか。

薄 : そういうこと。で、じゃあなんでエラーナで女神像が作られたのかっていうと、ティレーラ的には、獣人滅ぼせよっていう教えのもとにこの女神像が作られていると考えていると。


緑 : でも、ちょっと、おかしな話だよね。

薄 : 何が?

緑 : なんとなく? そんな事のために、町を作ってでも巨大な像を建造するの?

薄 : さぁ、どうだろうね。

緑 : また、なにか隠して、何か企んでるな。

薄 : そんな大したことは考えてないよ。建造理由が一つだけとは限らないってだけで。まぁ、その一つであることは間違いなくて、獣人に対する嫌悪っていうのが、どれだけ強く歴史的に受け継がれてきたかが、伝えられていたらいいなと。


緑 : もう一つの理由は?

薄 : なんで、まあ、セツナの周りにいる人達は獣人に対して、差別意識がない人ばかりなんだけど、逆に言うと、セツナが意図的に避けている、それはまあ、アルトがいるから意図的に避けているっていうところがあって、人間の6割、7割は獣人が嫌いなんだ、あの世界は。


緑 : まぁ、人間のほとんどはエンディア信じてるからね。

薄 : 世界中のどこの町にでもエンディアの神殿あるしね。先述のハルにだって、エンディア神殿はあります。ハルの場合、エンディアの信者が人口比で2割くらい。表には出てないけど、ハルにも獣人嫌いな人間はいるってことだね。


緑 : エラーナはほぼ全員、ガーディルは8割くらいです。

薄 : で、話を戻して、この100mの女神の巨像ね、よくこんなもの作れたなって思うよね。魔物に襲われながらもね。


緑 : まぁ、襲われるよね。魔の国から近いし。

薄 : そうなんだよ、そんな中、こんな100mもの巨像をどうやって作ったかと言えば、当然魔法なんだけど、あの世界の現在の人間より多い魔法量だからこそ出来た建造物で、その製造に使われた魔法は、今では完全なロスト技術?ロスト魔法?になってます。


緑 : あと、どこからあれだけの大量の蒼銀を取ってきたのか?

薄 : 蒼銀の話聞く?聞きたい?

緑 : 聞きたくない。早く次に行こう。

薄 : 蒼銀はね。

緑 : 聞きたくないって、言った。大切なことだからもう一回言うけど、聞きたくないって言った。長くなりそうだから。


薄 : で、これは、物語お話ではなく、設定の話なのですが、まあ、女神像をつくる人々がいて、その人々が野ざらしにはしないだろうという思考が働いて。


緑 : あれですね、奈良の大仏をイメージしたんですね。

薄 : ちょっと、違うんだよね。

緑 : 違うの!?

薄 : ちょっと違うっていうのは、最終的には、そういう風な感じになったとんだけど。

緑 : 何で否定するの?

薄 : あのどちらかというと、野ざらしになっている方を思い出して、可哀想だなと。

緑 : 鎌倉の大仏とかかな?

薄 : そうそう。だから、こうね建物の中に入れないとなっていうのが最初に考え付いて、で、建物を作ろうと思ったんだけど、ただの建物だと違和感しかないんだよ。


緑 : 大仏殿じゃ、駄目だったと。

薄 : やけに、大仏押すね。どうしたの? 奈良の鹿にせんべいでも奪われた?

緑 : 大仏と鹿は関係ないだろ。ただイメージしやすいようにフォローしてただけ。

薄 : そうか。まぁ、イメージしやすいかどうかは置いといて、巨像を専用の建物の中に入れておくっていうのは、立像っていうのもあって、窮屈だなと。である時、急に、これ王宮なんだなって浮かんできて、もう、これしかないなってなりました。


緑 : なんか、すごい特殊な王宮だよね。このエラーナの国の王宮っていうか、なんていうのかな、貴族階級とかが住んでる塔の隣に、聖職者が住んでいる塔があるのって。普通、「二世帯住宅ですか?」みたいな感じには、ならないんじゃないかと思ったよ。


薄 : 確かにそう見えるよね。まぁ、そんな事を考え付いて、その流れから、聖都の歴史が私の中で出来上がりました。


緑 : どんな感じ?

薄 : まず、魔物のを討つ人々の士気高揚のために、女神の巨像の建造が始まる。

緑 : あー、これクッカ呼んだ方がいいんじゃない?限定近況ノートでやってる感じの話でしょ。

薄 : クッカ関係ない(笑)一応説明すると、カクヨムのサポート限定近況ノートの一企画で「クッカの教えて、チャットUSG(薄浅黄)」というのがあって、そこでクッカが聞き役となって『刹那の風景』の世界観を説明しているんですが、それと同じ雰囲気を感じたということですね。まぁ、ネタとしてあのコーナーまで取っておいてもよかったけど、大盤振る舞いです。


緑 : 大盤振る舞いって言うほどの物でもない(笑)

薄 : まぁ、話を戻すと、当時の指導者や聖職者が集まり、魔物のを討つ人々の士気高揚のためと、この地を守り抜くという意志を表明するために、女神の巨像の建造が始まります。その女神像を護り、自分達が立て籠もるための建物の建設も一緒に行われ始める。それにともない、資材を置く場所も必要になってくるし、魔物から身を守る壁も必要となってくる。こうしてできていったのが三尖塔で、周りの資材置き場が壁で囲まれ町になっていった。


緑 : 砦みたいな感じだね。

薄 : 最初から、この尖塔を建てて立て籠もるのが目的だからね。周りの資材置き場が町になっていったのは、自然の流れといったかんじです。


緑 : じゃあ、その尖塔を中心にして民衆は、塀の中で暮らしていると?

薄 : 兵?塀?ああ、城壁ね。

緑 : そうそうそう

薄 : 4巻に書いた10mぐらいの城壁が、資材置き場を囲っていた壁のその後の姿です。

緑 : ずっと戦闘状態なんだね、この国は。

薄 : まあ、そうだね。魔物の発生率は、あそこらへんがすごいことになっているから。

緑 : 魔の国が近いからね。

薄 : これはティーレがいっていたけど、あの世界が魔物で溢れかえっていないのは、ガーディルやエラーナが前線で魔物を駆逐していることが大きい。だから、ガーディルで勇者を召喚して戦わせていなかったら、あの世界の平和はないんだ。奴隷として縛るのは許されないと思うけどね。


緑 : でもさ、そうするとティーレの言ってる方が間違ってるよね。

薄 : ああ、それね。建造理由が一つではないと言ったところと、ここで言っていた設定が、矛盾しているってことがいいたい?


緑 : そうそう。

薄 : 女神エンディアがいた時に魔物などいないと言うのは5巻でティーレが言ったとおりです。

緑 : ふむふむ。

薄 : 一方でこの女神像の建造の趣旨は、士気高揚でもあるわけだから、勇ましい姿である必要がありました。

緑 : ああ、見えてきた。

薄 : つまり、あの巨像は、間違いなく女神エンディアが獣人を討てと指揮していた姿をモチーフに造られているのだけど、目的としては魔物を討てという目的で立てられているのですよ。


緑 : めんどくさい。

薄 : 結果として、その姿が獣人を討てっていっている姿の巨像なんだから、獣人への敵愾心も煽ってしまう形になってしまったと。


緑 : めんどくさい、果てしなくめんどくさい。そんな事考えついた、薄浅黄が鬼畜に見えてきたわ~(笑)


薄 : 酷い(笑)


――長い(苦笑)一旦分けますが、これだけ語っているのに、1ページしか進んでいないという、驚愕の事実。設定の話になると話が長くなるのは反省ですね。基本、セツナがかんでいない表に出ない設定を考えるのは私の役目なので、お披露目する場所がほとんどないので、つい長話になってしまいました。


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