第24話 刹那の風景5:メイキング対談:エピローグと口絵と表紙2

――今回のメイキング対談は、『エピローグ』と『口絵』と『表紙2』について話していこうと思います。おそらく、1部構成になるかと思いますので、気楽に読み続けていただけたらと思います。


――今回も今までと同様、読者層は、『刹那の風景 5巻』を読んだ方で、『小説家になろう』の『刹那の風景』シリーズを読んでいる方を想定します。書籍版に興味がない方や、『刹那の風景 5巻』のネタバレを気にする方はブラウザーの戻るボタンを押すことを推奨します。


――また、書籍化された『刹那の風景』しか読んでおらず、5巻以降の展開の話を望んでいない方もいると思いますが、その方々のために、先の物語の展開にかかわる個所は伏字にしておきます。


――なお、本の後書きから読むネタバレ派や、書籍を買うか迷っていてきっかけを探している方、書籍は買わないけどどういう観点でWeb版から書籍版を作っているのか気になる方が、この読み物だけを読むことに関しては、全然問題ありませんので、楽しんでいってください。


――以下、緑青を「緑」、薄浅黄を「薄」でお送りします。


――<エピローグ 257頁>

薄 : それで、エピローグに入ります。

緑 : いつも、エピローグは書き下ろしだよね。

薄 : Web版でエピローグって書いてある時もあるから、エピローグ書き下ろしの時じゃない時もあるよ。


薄 : 1巻と2巻には、(その該当箇所のWeb版には)エピローグあったんだけど、

薄 : 3巻以降は、なくって、書き下ろしているね。

緑 : そうなんだよ。

薄 : ないのはなぜかっていうと、全体を通して、リペイド編だからない。

緑 : リペイド編にも、エピローグありませんけど。

薄 : いや、杜若がエピローグでしょ。

緑 : え、そうなの?大分長いけどね、あれ。それでも薄浅黄がエピローグだと言うなら、エピローグなんだろう、多分。


薄 : まあ、エピローグに当たる部分があるわけだよ。だから3巻と4巻は、エピローグを書き下ろしてもらったんだけど。


薄 : それで、5巻も書いてもらったわけだけど、エピローグに関しては、いつも一任しているので、プロットはありません。正確にいえば、エピローグ書くとしか指示はありません。


緑 : エピローグはね、書くこと決まってたんで、問題ないな。

薄 : でも、書く前にプロット起こさないからな、緑青は。

緑 : 書くときは書くけど、エピローグは実際に書いた方が早かっただけで。

薄 : まず、このエピローグを書くにあたって、命題は何だったの?

緑 : まあ、3巻でも4巻でもそうだと思うんだけど、プロローグとエピローグはワンセットだって考えているってのは最初に話したと思うんだけど、そのプロローグでは、ラギの寂しさを強く表現したかったんだよ。


緑 : で、プロローグの最後にセツナとアルトと会って、これからの未来について示唆する。

緑 : じゃあその後、その示唆について、どのような進展をしたのか、エピローグで書くようにしているんだけど、これは5巻だけではなく、どの巻でも。


緑 : それで、5巻のエピローグの命題は、家族の温もりみたいなものを、ラギが手にしたというのを、表現したかった。


薄 : この場面は、家族の温もりを感じられる話を書きたかったってことなの?

緑 : そうそうそう。

薄 : まぁ、そういう意図なんだよね。今はそうなんだねと思うけど、この話を聞いたのは実は二回目で、ちょっと衝撃だったから、同じ話を振ったんだけど、


薄 : というのも、最初に話を読んで緑青にこの話を聞いたときは、なんか、全然印象が違うなって思ったんだよね。このエピローグを読んで真っ先に感じたのは、ラギが、もうすぐ自分は死ぬから、セツナとアルトに、何か残して逝きたいなっていう、そんな決意に感じられた。


緑 : 自分が故郷に置いてきたものを、少しでも、仮初めでも取り戻せて、そこから自分の寿命と向き合ってる。


薄 : 最後の「望郷の念は、消えない。だが、夜半に響く雨音は、もう、私の心を濡らさなかった。」の受け取り方だと思うんだけど、最後が言い切りになってるから、家族の温もり(=望郷の念)は消えないど、セツナとアルトのために何かを残したいという、決意に感じるんだよ。


緑 : これは、二人の優しさや温かさが、望郷の念からくる寂しさを和らげてくれたっていう文だよ。

薄 : あと、前の文で「何ができるだろうか」が2回出て、何かを遺したいというのが、強めに感じたんだよね。


緑 : 普通にあるでしょ、独り言を呟いた後に、自分の中でそのことを考えるって。

薄 : まぁ、あるけどね。というわけで、納得もして、緑青の最初に上がってきた文章を大事にもしたかったので、そのまま載せています。だけど、最初に私が感じたように思う人もいるかなと思って、ここは聞いてみました。


緑 : で、プロローグができた時に(家族の温もりをラギが感じるエピソードでとして)、このアルトとラギが一緒に寝てるシーンが思い浮かんだんだよ。


薄 : 一巻で、アルトがセツナの布団に潜り込んで、朝、子狼になっていた話とリンクさせたかったんでしょ、きっと。本人は、無意識だろうけど。


緑 : そうそうそう。

薄 : でも、ここでさ、ジャッキー連れてって、かわいそうだよね。

緑 : なんで?

薄 : 目が丸くなって、いらないみたいな、そんな怖いものはいらない、もってこないでみたいな。

緑 : ああ、ラギさんがね。怖いよね。だってさ、首も縫われてるんだよ。こうさ、こうギザギザに縫われてるわけだからさ、ちょっと部屋には置きたくないよね。


薄 : あのさ、一緒に寝るときにジャッキーが隣にあったら、大丈夫?

緑 : 無理、むり、無理無理無理。でも、ぬいぐるみはやっぱり欲しいよね。抱き枕ぐらいにできるやつ。

薄 : でもね、それをアルトは平気な顔してるんだから、結構、おばけに強そうだよね。なんか、不気味系の。


緑 : ハロウィンみたいな?

薄 : フランケンシュタインとか、ああいうの見ると、かっこいいとか言い出しそうだよね。

緑 : それはそれ、これはこれだな。また、違うものなんだよ。

薄 : いや、絶対、興味深々で怖がらないって。まぁ、いいや。話を戻そう。セツナとラギが飲んでいるところにアルトが起きてくるところなんだけど、ちょっと、困ってこの形にしました。


緑 : 最初に、セツナとラギが二人でお酒飲みながら談笑するというのが、僕達の中にあったからね。

薄 : 『楽しい語らい』の周囲は、本当にそんなのばっかりだったね。大きな場面が先にあって、それに整合性を取るように修正するというか。この二人のお酒を呑んでいるシーンは、5巻のプロット初期から決まっていました。まぁ、どうしてというのは後で話します。それなのに、エピローグでラギとアルトで一緒に寝る話を作るんだから。何が問題化というと、二人がお酒を呑むのは、アルトが寝てからと決まっていて、そのアルトがラギと寝ないといけないという、論理矛盾が発生するわけです。


緑 : まぁ、だから途中で起こせばいいかと思って。

薄 : そうね。だから、『トルコキキョウ 楽しい語らい』の最後の部分で、アルトが起きてきた話を、エピローグに合わせて、加筆したんだよね。


緑 : そうだね。でも、書いたの僕だし、手直ししたのも僕だから問題ないでしょ。

薄 : 文字どおり、自作自演ですね(笑)


――緑青はこういっていますが、エピローグが出てきたというタイミングから察して欲しいのです。締め切りまであと〇日というカウントダウンが始まっているのに、加筆修正するぞというつよつよメンタル。あそこで、半日潰れたこと、私は絶対忘れない!



――<口絵~表紙について2>

薄 : で、実はこの場面、口絵なんです。

緑 : いわれるまでもないよ。皆知ってるよ。

薄 : アルコール中毒にはならないの?

緑 : 大丈夫だよ。そんなきついお酒じゃないから。

薄 : へぇ。じゃぁ、このお酒ってさ、何のお酒なの?

緑 : 何のお酒って、どういうこと?

薄 : いや、米のお酒とか、芋のお酒とかあるよね。

緑 : トウモロコシとかじゃない。

薄 : 適当だね。トウモロコシってリペイドで育つの?

緑 : トウモロコシは、あれだよ。結構、あれた土地でも育つ作物なんだよ。で、連作障害も少ない。トウモロコシのお酒って言ったらウイスキーとか、そっちらへんだけども。


薄 : という訳で、セツナとラギがワイン飲んでいる、口絵です!

緑 : ウイスキー ジャナカッタ。

薄 : という茶番は置いといて、実は緑青がどうしても、セツナとラギがこれだけ親密になったんだよという感じの話を作りたくて、そして、それには絵が絶対必要だよねということになりまして、それでsimeさんに、こんな感じで新たに書き下ろすので本文にないですが宜しくお願いしますと依頼しました。


緑 : なので、このイラストは本当にご迷惑をおかけしたと思います。

薄 : ラフの時も話がないから、机の上に小物がない状態だったんだよね。ワインとおつまみをお願いして。あと、セツナの座ってるソファーは、一人用だったので、アルトも座れるようにでかくしてくださいってお願いしました。こんな、面倒な依頼、ないんじゃなかろうかと、反省しています。


緑 : うん。

薄 : で次に、カラーラフが来て、居間が板張りだったってことに、はじめて気付きました。私は、絨毯だと思ってたんだよ。緑青は絨毯だと思ってた?板張りだと思ってた?


緑 : 何も考えてなかった。

薄 : 聞かなければ、よかった。板張りの床、かっこいいよね。

緑 : うん。

薄 : なんで絨毯だって言ってないのに、絨毯で描かれると思ったんだろう?

緑 : まぁでも、難しいよね。

薄 : 絵を描く人は、きっと思うんだろうね。描いてる時に、床とかどうしようかなって。

緑 : うん。

薄 : 私達は絵を描かないから、お酒飲み交わすシーンですって言ったときに、イメージの中にある伝えなければいけない要素を、認識できていないんだと思う。


緑 : そうだね。

薄 : 酒を飲み交わしてるシーンって言うと、酒とソファまでは考えついて、机もきっと考えつくけど、最終的に、「床はどうなんだ」なんて発想はないんだよ。板張り、かっこいいってなる前に、あ~って、その発想はなかったって、思ったよね。


緑 : うん。

薄 : これ、虎の皮の式物だったら、どうしてたよ?(笑)

緑 : それはそれで、かっこいいと思うよ。かっこいいと思うけど、うーん、ちょっと変えてもらってもいいでしょうか、って言ってそうな気はするよね(笑)


緑 : なんていうのかな、こうやっぱりさ、いつも考えてくれてると思うんだよね、ラギのこういう生活の中にあるものっていうのを。


薄 : そうだろうなぁ。

緑 : 持ってるものとかね。こう一つの一つの小物に、木で作られてるとか、そういう風な細かいところが、ものすごく丁寧に描いてくれているよね。


薄 : ありがとうございます。

薄 : では、最後に表紙の話を、再度します。本当だったら、お食事会の時に触れるべきだったと思うんだけど、口絵と一緒の方が、編集しやすいかなって思ったので、ここまで延ばしました。


薄 : まず、サイラスの顔は、どうなった疑惑について。対談最初の方では、見本が届いてなくて、保留になっていますが、この対談中に見本がきたので、結果を発表しようと思います。


緑 : 表紙だと折れちゃってかわいそうなことになってるんだけど、伸ばしたらちゃんと顔あるから大丈夫だよ。小説家になろうのコメント欄にも、ちゃんと書いておいた。


薄 : ありがとう。

薄 : で、風景の景の文字の上にラギさんの顔がでているんだけど、これは編集さんが最後に気付いて、直してくれたんです。


緑 : 最後の最後まで、字の下になって顔が隠れてたんだ。顔がでてよかった。

薄 : そうだね。助かりました。それで、私達は、この刹那の風景って文字が入ってないバージョンの絵も見せてもらってるんだけど、後日、文字がないカバーもアップしようと思ってるので、ご期待ください。


薄 : それにしても、この秋の景色っていいよね。

緑 : いいよね。これ見た時本当に華やかだなって思って、で次に感じたのは、なんか、ちょっとノスタルジックだなっていうか、感傷的になるような感じがあった。


薄 : なんていうか、こう秋の食事会でよかったなって思ったよね。この黄色い世界が。

緑 : そうだね。1巻から5巻までの中で、一番華やかな色味になっているよね。

薄 : 寂しい寂寥感みたいなのが漂いつつも、パーティーの華やかさがあって、なんかいいなって思う。

緑 : なんでだろうね。

薄 : わからない。これ、夏でも春でもなくこの秋の黄色がしっくりくるんだよ。

薄 : 春で描いてくださいったら、何色になるのかって、ちょっと気になるけどね。桜はないので、全然分からないよね。


緑 : でも、なんか春っぽい絵にしてくれると思うんだ。

薄 : あと、この食卓の光の当たり具合が、秋っぽさがでてて、なんとなく、こう秋の日差しの弱さの感じが出てる気がする。それに、セツナの腕に当たっているところの光とかも。


緑 : なんか、アルトの髪とかね。そう、秋の日の黄色い光っていうのが、表現されてていい感じだよね。柔らかというか、穏やかとか。


薄 : このパーティの絵は、素晴らしいよね。でも、パーティの話書いてて、アルトが漫画肉を食べてるところを、絵で描いてもらいたいなとも、一瞬思った。


緑 : ないない。

薄 : わかってる。それだと、ギャグ漫画とかになっちゃうから、絶対のイメージが崩れるもんね。

緑 : あの漫画肉ってさ、一体どこの部位のお肉なんだろうね。

薄 : そんなの、考えているわけない。

緑 : あれは、一体どこの部位なんだ。

薄 : どちらかというと、しっぽじゃない。

緑 : あんなに大きな肉のしっぽってなに?ドラゴン?いないよこの世界に。

薄 : あっちの世界にはいるよ。

緑 : 食べちゃだめだ、神の使いなんだから。意味わかんないよ。

薄 : 元に戻るけど、キッシュがおいしそうだよね。

緑 : おいしそう。飯テロだよね。ほんと食べたい。

薄 : あとさ、白いテーブルクロス使ってないところが、きっといい要素になっているんだと思う。あえて無くしたんだと思うんだけど、黄色い陽光が、木の机ともマッチしていいんだと思うんだよ。


緑 : 色々考えるの、大変そうだよね。


――口絵の所でも、表紙の所でも思いましたが、絵における小物が印象を左右するというのは、こう、チェックしなければいけないという立場になって、初めて気付いた視点でした。そういう意味でも、いつも丁寧にイラストを描いてくれるsimeさんには感謝です。


――対談中に、文字の入っていない表紙をアップするという話をしていましたが、あれも大分前の話になってしまいました。こんなに長くメイキング対談をあげることになるとは思っていなかったです。でも、それも、次回からの杜若で終わりです。最後までお付き合いくだされば、嬉しいです。

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