あるテディベア蒐集家の話

藤堂 有

あるテディベア蒐集家の話

 だって、可愛いから。


 ──可愛いでは理由になってない?

 ……そうかしら?くりくりした目、佇まい、毛並、素材は様々だけど、どの素材で作られたものだって可愛らしいわ。

 よくあるのは、座ったポーズの、そう、テディベアといったらこういうポーズよね。実は、手足を動かせる仔もいるのよ。ポーズが取って動きを出しても可愛いの、今にも動き出しそうで。まあ、この部屋では皆、座ってもらっているけれど。


 ──だからといって、こんな数にはならない?

 初めてテディベアを作ったドイツのシュタイフ社がどれだけの種類のテディベアを出していると思って?国や地域限定がたくさんあって、こんな数では収まらないわ。あっちの壁は皆シュタイフ社の仔たちなのだけれど、ほら、耳にタグがついているでしょう?それが特徴なの。可愛いでしょう?

 それにテディベアって世界中のメーカーで作られているのよ。少し行ってたのもあるけれど、私はイギリスメーカーの仔をよくお迎えしているの。こっちの壁がイギリスの仔たちで…メリーソートとディーンズが多いかしら。

 あとここの棚が、もう閉めてしまったけれど、イングリッシュテディベアというメーカーの仔たち。ここのメーカーの仔を最初にお迎えしたの。ほら、この仔なのだけど。ユニオンジャック柄のリボンがトレードマークで、名前はジャックというのよ。イギリスへ留学した時に、お店で一目惚れしてお迎えしたの。ふさふさした毛並みが可愛いでしょう?そこからかしら、テディベアにも色んな仔がいて、もっと出逢いたいと思ったのは。だから、原点はここね。


 でも、そうね、何より大好なのよ。大好きだからお迎えする。言い訳にして雑かしら?

 けど、あなたにも、好きなもののひとつやふたつ、あるでしょう?何故好きか、それに理由なんてあるかしら。大好きだからではなくて?


 私の場合は、たまたまテディベアだっただけのことよ。

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