二人の英雄となんでもないボク

プミ

ルミナスストーリー

 ルミナスストーリー。


 二人の少年少女を主人公として描いた物語。


 二人は様々な困難に巻き込まれるが、知恵と勇気、そして仲間の力を借りて立ち向かい、困難を打ち破る。やがて二人は英雄と呼ばれるほどに成長し、王国を守る騎士となる。


 とても有名な英雄譚で子供からお年寄りまで、誰もが知っている人気作品だった。


 しかし、この作品が有名なのは面白いからだけではなかった。


 惜しまれつつも完結したルミナスストーリーだったが、数年後に続編とする物語が発表される。この続編が問題作だった。続編では、前作で英雄となった二人が私腹を肥やす為に王国を乗っ取り、悪政を敷いている。


 前作とはまるで違う残虐で傲慢、悪逆非道な元主人公の姿に大勢の人がショックを受けた。


 発表時は荒れたが、あの二人が理由もなくそうなる筈がないとファンの人々は続編を読み始めた。しかし、前作とのギャップにファンは困惑した。


 前作は英雄譚を謳うだけあり、困難を乗り越える熱い展開や悲劇でありながらも希望を繋ぐ、胸を打たれる物語があった。続編は違う。続編は主人公が復讐を遂げるまでの物語だ。ダークファンタジーを謳い、後味の悪い話や救いの無い話ばかりが続く。


 主人公もあまり魅力的とは言えない。主人公は両親を失った。それは殺人が日常的に起こるほどに荒れた国のせいだ。陰鬱で悪政に対する罵倒が主人公のモノローグで描かれる。みんなから愛されるキャラクターではなかった。


 物語もなかなか進展しない。悪政を打倒する力を得るため旅をするが、その旅が中々進展しない。悪人を退治し、その地の人から感謝を受けて次の場所に向かうという流れがずっと続く。力を得る為というふわふわした目的はいつ達成されるのか分からなかった。変わらない展開にファンは飽き飽きしていた。


 一方登場人物の数はとても多かった。次々と新しいキャラクターが登場し、人気があったキャラクターはメインに据えられ、不人気なキャラクターはいつの間にかフェードアウトして存在が消えていた。


 ファンは誰もがうんざりしていたが、前作主人公が悪人となった理由を知る為、延々と続く引き延ばしに頑張って着いて行った。そして、いよいよ物語のクライマックス、二人の前作主人公と続編主人公が決着をつけるという場面に辿り着く。ついに二人の口から理由が明かされる。手に汗を握ってファンはページをめくる。


 語られたのはなんてことの無い内容だった。


 地位、名声を得る事の快感。金の輝きの美しさ。人を屈服させる征服感。ただそれだけだった。陰謀に巻き込まれているだとか、より強大な悪役が存在するだとか、人質を取られて仕方なくだとか、大それた理由なんて何もない。ただただ堕落しただけだった。


 当然、納得できないファンの怒りが爆発した。


 続編は大炎上し、燃え尽き、消滅した。

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