真っ白い世界

野林緑里

第1話

 冒険へ出る前の買い物を済ませた俺はパーティのみんなの待つ宿場へ戻ろうとした。


 いつもの道を歩いているとなぜか混雑している。なんだろうと覗いているとなにやらサーカス団が来ているらしい。なんというサーカス団なのかは知らないが人気のあるサーカス団だということはわかる。


 俺は仕方なく迂回して宿場へ戻ることにしたのだ。


「こんにちわ」


 すると路地に入ってすぐのところにピエロのかっこうをした人物が俺の前に現れて俺に向かって話しかけてきた。


 なんのようかと怪訝な顔をしているとピエロはなぜか不適な笑みを浮かべながら俺に近づいてくる。


 畏怖を覚えた俺が後ずさろうとしたとき、突然さっきまであったはずの街の景色がなくなり真っ白な世界へと変わったのだ。


 いったい何が起こったのかと呆然としていると、さっきのピエロの声が聞こえた。



「ねえ、僕と少し遊ばない?」


「はあ? つうか、なんだよ!? ここは?」


「ここは僕の世界さ。僕としばらく遊ぼうよ。遊んでくれたら帰してあげる」


「本当か?」


「本当だとも」


「わかった」


 そういうことでしばらくピエロと遊ぶことにした。


 どんな遊びをしたかって?


 よく覚えていない。


 なんか結構大変な遊びをしていたような気がする。


 どれくらい遊んだかももちろん覚えていない。


 最後にピエロが「また遊ぼうね」といったことだけは覚えている。


 気がついたら路地裏にいたんだよ。


 それなりに時間がたったのか、もう陽が沈みかけていた。


 俺はとにかく慌てて戻ってきたというわけだ。




 ******


「はあ? なにそれ?」



 アイシアは両腕を組んで冷たい目で俺を見る


「だから、遅くなったんだよ」


「キイ。そのいいわけはないと思うよ」


 ショセイが俺の肩をポンとたたく。


「そうそう。なんだよ。その白い世界って意味不明」


 ムメイジンはご飯をパクパク食べながらショセイに同意する。



「遅れたのは仕方ないわ。だけど、なんで手ぶらなのよ!? あなた、旅に必要なものを買いにいったんじゃないの?」


「えっとそのお」


 俺がショセイたちに助けを求めるも二人はそっぽを向く。頭の上に乗っていたリデルも俺から離れた。


 ペルセレムはただオロオロしているだけだ。


「さーて、買い物もろくにできないキイくん。次はどんかいいわけするつもりですか~」


 怖い


 こわいこわいこわい


 アイシアがものすごく恐い!



 アイシアの怒りをおさまるようの言い訳を必死に考える俺がいた。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真っ白い世界 野林緑里 @gswolf0718

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ