小説を書くために必要なこと

福岡辰弥

小説を書くために必要なこと

 趣味はネット小説を読むこと。理由は金が掛からないからだ。

 しかし最近、内容の質が落ちているような気がする。目が肥えたのか、単純に程度の低い執筆者が増えたのかは不明だ。最近は誰でもスマホを持っているから、程度の低い小説を書き始める若者が増えた可能性は高い。

 そんなことを呟いたら「お前が書け」という心ないリプライを受けた。苛つく一方、その考え方は一理ある。膨大なネット小説を読んできた僕なのだから、書いてみれば案外傑作が出来上がって、ランキングを席巻する可能性もある。

 小説を書くことに決めた僕は、まず必要なものを調べ始める。スマホ一台で書き始められるとは言っても、傑作を書くのにスマホじゃ心許ない。流石にパソコンがいるだろう。大きなモニタも必要そうに思える。それにキーボードも良いものを買うべきだろう。長時間の執筆に耐えうる高級品を揃えたい。作業中に音楽も聴きたいから、良いスピーカーも検討したい。もちろん、資料を置いておけるよう、広々とした作業机も必要だ。長時間作業と言えば、良い椅子も必要か。

 調べれば調べるほど、究極の執筆環境を構築するためには高級機材を買い揃える必要があると分かる。テキストエディタはどれを使えば良いか。市販小説本に使われているフォントはいくらするのか。電動昇降デスクという選択肢もある。ざっと見積もっただけでも、百万円くらいは予算が必要だということがわかった。

 ひとまず、汎用性の高い椅子から購入することにした。今は在庫がないようで、届くのは三ヶ月後のようだ。まあ、道具が揃えばあとは書くだけなのだし、三ヶ月くらい気にならない。椅子が届いたら、今度は机を買わないといけない。中途半端な環境で書き始めて、変な癖がついては困る。

 道具が全部揃えば、あとは傑作を書くだけなのだから。

 慌てる必要はない。道具さえ揃えば、僕はもう傑作が書けるんだから。

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