言い訳って難しい!

翠雨

第1話

「ニーナがいいと思います!」

「賛成!」


 へ?…勘弁してよ。このクラスの代表に選ばれるなんて、冗談じゃない!


 魔法の箒を使ったスピードレース。魔力を箒の先から放出することでスピードを上げる、魔力量が物を言うレース。ニーナが通う国内トップの魔法学校から、毎年優勝者が出ていた。

「私じゃ、無理だよ。」

 ニーナは、なぜこの学校に受かったのかわからないくらい魔法の使い方が下手だった。

「ニーナがいいよ!皆で応援しよう!」

 クラスメートは、私を除いて盛り上がっている。

 え?私の意見は無視?

 これは、全力で言い訳を考えないと!!


 クラスメートは、私を応援するための横断幕や、似顔絵の入った看板などを作り始めた。中には、大きな音のなる魔法や光が出る魔法を練習し始めるクラスメートもいた。


 あぁ~!こんなに全力で応援されたら、負けたときにどうすればいいの?


 よし!箒の調子が悪かったってことにしよう。


 自分の箒をとってきて、跨がった。

 皆から隠れてボサボサにしてこよう。


「ニーナ?練習か?俺が付き合うよ。」

 へ?クラスのエリートのアラタが一緒に来たら、箒に細工が出来ないじゃない。

「ちょっと、スピードを上げてみようかな。早く飛ぶと、茂みに突っ込んで、箒が痛んじゃうかもしれないな~。へへへへ。」

「箒が痛んだら俺のを貸してやるから、気にせず練習していいぞ。」

 そんなに笑顔で言われても!

 アラタと競うように飛んだけど、箒に細工なんて出来なかった。

「アラタが出ればいいんじゃない?」

 アラタは授業でも、いつもトップだ。

「え?俺じゃ先輩に勝てないよ。授業と違って、長距離だろ?俺じゃあ、魔力が切れる。それに体重も軽いほうが有利だろ?」

 体重?

 そっか!!

 体重ね!

 戻ると、クラスで一番器用なミハナが待っていた。

「ニーナちゃん。最高の状態にするから、私に箒のメンテナンス任せてね。」

 う、う~。私の言い訳が潰されていく…。

 でも!大会までに太れば!!

「ミハナちゃん。よろしくね。私、おやつ食べに行ってくる。」

「私も行く!」「私も!」「私も!」

 え?皆もおやつ?



 ゾロゾロと学食にいくと、

「パンケーキ3つください。」

 甘くて大きいパンケーキを毎日お腹いっぱい食べれば、ブクブクと太るはず!

 テーブルに運んでいくと、

「ニーナ、私の分、買ってきてくれてありがと~。」

 皿を一つ奪われて、代わりにお金を握らされた。

 結局、私の食べられたのは、半分だけ。


 ……?


 太るっていう計画が…。





 箒は綺麗に穂先は揃えられ万全の状態。私は太ることはなく、魔力も満タンで本番を向かえた。

 予選はもちろん楽勝!魔力量には余裕がある。

 同じ学校から出場した6人は、全員決勝に残っている。

「位置について!スタート!!」

 私の気持ちなんか関係なく、競技が始まった。

 私は、決勝に進出した12人のうち、真ん中より少し後ろ。トップは同じ学校の最上級生。

 一年生の私が勝てるわけないじゃない。


 あれ?

 一年生だから負けたって、良い言い訳なんじゃない!?


『わ~!!ニーナ、がんばれ~!!ニーナ、可愛い~!!』


 なにその応援!!恥ずかしいじゃない!


 箒の先から放出する魔力を増して、逃げるように通りすぎた。


『ニーナ!!かわいい!!超キュート!!』

 うわ!横断幕がピンクでハートだらけ!!恥ずかし~!!!


 もっともっと魔力を放出して、早く通り過ぎたい!


『ニーナ、最高!!1年のアイドル~!!』

 花火やら、華やかな音やら、うわぁぁ~!!


 全ての魔力を出し尽くして!!



 ゴール!!!

 目の前に見える背中は一つ。負けた…。なんて言い訳しよう…。

「ニーナ!すごいじゃん!2位だよ。一年生が2位だよ!やったね!!」

「やっぱり、不器用なだけで、魔力お化けだな!次の大会は、魔力調節できるように、特訓だな!!」


 うげ!!


「わ、私、特訓すると、え~っと、ブツブツが出る体質なの!ブツブツがうつるから、特訓は禁止されているの!」

「んな訳あるか!言い訳、下手すぎ~!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言い訳って難しい! 翠雨 @suiu11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ