未完

食連星

第1話

「俺,力使う時…

精霊族に増幅させて貰ってるって…

し…

知ってた?」

ぼんやり床見ながら,言って…

言った後,ふらっと

リルを見る.

横たわったリルを.


ゆっくり眼が開いて,

「知っていますよ.」

ゆっくり口が開いた.

「そうか…」

そしたらリルが,

ゆっくり首を動かして,

目を見つめ合ったまま.

俺は言葉を出した後,

考え込みながら…

見続ける.


少し息を吸い込んで,

「悪かったな.」

そう吐き出した.

知らなかったんだと

付け加えようかとも思った。

思ったが、こんな事

今更言った所で、

こんな逃げは要らないように思って

止めた。

「そんな事無いですよ.」

そう戻って来た返事に

おかしさを感じる.

「何で?

命を使うっておかしい事だよ.」

命を燃料にしてきた.

やっておきながら,

これを言う俺もおかしい.

おかしさを感じながら,

ずっと何でも今まで明け透けでやってきた

俺とリルを感じる.


「それが精霊族の存在意義なので.」

「え?」

「そうやって,存在してきたので.

私たちは必要とされています.」

「うん…」

ちょっと範疇超えてて…

上手く理解できない.

「使われずに,命を全う出来た方がいいよね.

絶対,そっちの方がいいよね?」

ね?なんて同意を求めて,

求めてしまって…


「でも,そうすると,分離するか分解するしか

ないんです.

それは,意味のないものになるんです.

だけど,必要とされて命を全うする事は

とても素晴らしい事なんです.」

・・・

「そうやって!

思い込んで!!

そんな事言われた俺の気持ち分かるっ!?」

あぁ…

やっちまった.

「悪い…」

悲しそうなリルの顔が見たかった訳じゃない.


腕組んで上見上げて息を吐いた.

全部…

全部…リルを失いたくないんだ.

どこ向かってってもバッドエンディングって

有り得ないだろう.

「何か伝説とか伝統とかなんかそういう

伝家の宝刀級の言い伝え無いの?

外の王子様と永遠に結ばれましたみたいなさ.

中抜けみたいな,そういうルート無いの?」


「あったらいいですね.」

そう,ふんわり笑ったリルが言った.

「あって欲しいんだ.」

ただ突っ立ったまま真面目に返す俺に,

「あったら知りたいですね.」

そう戻ってきて…

力なく,あぁそうだなって同意するしか無かった.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未完 食連星 @kakumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る