親ガチャ以前

星之瞳

第1話俺を救った言葉

俺には親がいない。赤ん坊のころから俺は施設で育った。

親は知らないが、施設長夫婦は親代わりをしてくれたし、ほかの子供たちとも兄弟のように育った。

だが、親がいないことでからかわれることも多かった。ガキの頃は仲間外れにされたりするくらいで済んでいたが、小学校に通うようになって、ある担任が何か起きると俺を真っ先に疑い俺が何か言おうものなら、『いいわけするな!』と怒鳴りつけるようになった。

ある日、俺に又疑いがかかって、施設長が学校に呼ばれた。担任から話を聞いた施設長は「彼がそうしたという証拠はありますか?」と担任に話した。

担任は「こうゆう証言があって」と言葉と濁す。

施設長は「証言した人に会わせてください。自分で確かめたいので」と担任に行った。

「それはプライバシーで」とかなんとか言って担任は逃げようとする。

「いいわけは聞きたくありません、なぜ彼に疑いがかかったのか事実が知りたいんです」と施設長は畳みかける。「証拠がないのならあなたと話をしても無駄ですね。校長に報告します、施設育ちだからと言って疑われたのは許せません」と強い口調でいった。担任はまだグタグタ言っていたが「いいわけは結構、さ、行こう」と俺を連れて教室を出た。施設長はその足で校長室に行き事の顛末を話した。

校長も何やら逃げ腰だったが、「あなたまでいいわけするんですか。今後このようなことがあったら教育委員会に直談判しますからね。覚えておいてください!」と強い口調で言い「帰ろう」と俺を連れて学校を出た。

帰り道「ごめんなさい、迷惑かけて」と言う俺に施設長は「お前が悪いんじゃない!これからも理不尽な扱いを受けることはあるだろう。だが、それに負けてほしくない。お前はいいわけしなくいい胸の張れる生き方をしてくれ、そしてあいつらを見返してやれ!」と俺に話しかけた。「はい。約束します」俺はそう答えのが精一杯だった。

それからも理不尽なことはたくさんあった。でも俺がグレずに成長できたのはあの時の施設長の言葉があったから。俺を信じてくれたから。


俺は高校卒業後、就職。夜間大学で資格を取って、正社員として建設会社で働くようになった。

俺の過去に理解ある女性と付き合いだして、来年結婚する。親を知らない俺に初めて本当の家族が出来る。

ここまでこれたのも、あの時の施設長の言葉が支えになってくれたから。

感謝してもしきれない。これからも俺は胸を張って生きる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親ガチャ以前 星之瞳 @tan1kuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ