それでいいわけ

@ns_ky_20151225

それでいいわけ

「しょうがないよ。こんな旧式の機械じゃ」

 相棒は肩をすくめる。

「だからって、どうすんだこれ」

 手を振って一面の緑を示した。ちょっとした設定の間違いで現れたこの緑は丈夫で繁殖力が強く、そして厄介な気体を生みだした。酸素だ。

「これでおしまいだな。ここまでやってきたけど、放棄しよう」

「でも、放棄は減点っしょ? まずいよ。後がない」

「けどさすがにこれは言い訳できないぞ。水のある所全部緑だし、酸素は隠しようがない。なにもかも壊しちまう猛毒だ」

 相棒は泣きそうな顔をした。これに弱い。それに、助けてやれば融合させてくれるかも。

「言い訳を考えないとな」

「やっぱ機械のせいにしようよ」

「ううん、それしかないか。整備ミス……、いや、それじゃ技師を巻き込む。あいつら絶対反論してくるぞ」

「そっか。機械のせいにするのが手っ取り早いけど、技師連中まで報告が行くのはやだな」

 ふだん使わない頭をひねりまくる。なにかないか。この間違いを隠す方法は。

 いや、あった。相棒に言うと喜んでくれた。ついでにそれっぽい身振りもしてくれた。やった、融合だ。


「これはどういう事だね。説明しなさい」

 監査官は様子を見るなり馬鹿にする口調になった。融合の跡が少し残っていたせいかもしれない。こいつらろくに仕事もしないでいちゃいちゃしやがってという怒りもあるのだろう。監査官はもてない。

「は、この酸素を放出する生命体が我々の新案です。たしかに酸素は破壊的な猛毒ですが、それだけ激しい反応をするという事は……」

「ああ、もうよろしい。その下手な言い訳は聞くだけ時間の無駄だろう」


 そして二人は減点され地位を落とされた。その後どうなったかは分からない。


 残された猛毒の気体に覆われた世界は放棄され、誰かが誤って接触しないよう宙域ごと封印された。だからこっちもどうなったかは分からない。


 まあ、ろくな事にはなっていないだろう。

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