第54話 メイちゃん

「お兄ちゃん~この子の名前はどうするの?」


 首を傾げながら聞くミレイちゃん。


「ミレイちゃんが温めたから、ミレイちゃんが好きな名前でいいんじゃないか?」


『名前ええええ!』


『僕に似たカッコいい名前がいいと思うニャ』


「ポンちゃんみたいな名前?」


『そうだニャ!』


「そもそもオス? メス?」


『女の子だよ!』


 そうか……ひよこも自分のことを、女の子というのか。


「女の子みたいだね。ミレイちゃん。可愛い名前を付けてあげよう」


「わ、分かった!」


 少し緊張した面持ちで、考え込むミレイちゃん。


 その間に巨大ひよこの気持ちいい場所・・・・・・・を探す。


 ポンちゃんの場合、首下と腹だ。


 あちらこちらを撫でていく。


『ママああああ! くすぐったいよおおおお!』


「ん~どこかな~」


『キュヒュヒュヒュ~』


 わ、笑い声が…………。聞こえて来る声はめちゃ可愛らしい声なのに、勢いと笑い声は圧が強すぎる。


「この子は羽根の下が気持ちいいみたいだね」


「覚えておきます! ノア隊長っ!」


「うむ! セレナ隊員も試したまえ!」


 セレナも反対側の羽根の下を撫でてあげると、巨大ひよこは嬉しそうに鳴き声を響かせた。


「名前決まりましたっ!」


「おお。どんな名前だい?」


「その子の名前は――――メイちゃん!」


 メイちゃん…………そうかトから始まらない名前で良かった気がする。


「よし。君は今日からメイちゃんだ!」


『メイちゃん! 私の名前ええええ!』


「メイちゃん。あまりうるさくしたら、ご飯あげないからな」


『あいっ!』


 やっと少し声の圧を減らしてくれた。


 新しい仲間が増えたところで中断していた蒸しトーモロをまた食べ始めた。


 僕達と一緒に食卓の上に顔をぴょこっと出したメイちゃん。とても可愛らしい巨大ひよこ。


 時々メイちゃんにトーモロをあげると、パクっと丸呑みしてしまうが、やはり可愛いは正義かも知れない。


 食事を終えた頃、どうやら外が騒がしくて外を見ると、町民数人がビニールカーテン越しで中を覗いてきた。


「あ、あの~」


 外から呼ばれて出てみると、町民の中からいかにも町娘の格好をした女性が声をかけてきた。


「はい。どうかしましたか?」


「大変失礼だとは思いますが、とても香ばしいトーモロの匂いがしまして……」


「あ~新しいメニューを開発したんです。匂いが広がらないようにしてたんですが、漏れてたみたいですいません」


 いくらビニールカーテンで囲っても、少量の匂いは外に出てしまうのか。


 人里から少し離れた空き地だったから油断していたけど、意外と来るもんだな。


「明日のお昼に開店しますので、ぜひ食べにきてください!」


「わかりました! その時にお邪魔させて頂きます!」


 他の町民の人達も頷いてその場を後にした。


 それから宿屋に戻ったら、大きな従魔や動物は中に入れないとのことで、馬小屋を借りてメイちゃんはそこで泊まることになった。


 意外にもそんなメイちゃんを一人ぼっちにはできないと、ポンちゃんもメイちゃんと一緒に馬小屋で一緒に寝てもらった。

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