第48話 セレナの嫉妬?

 三日目の移動もそう変わり映えのない景色を歩いて行く。


 秋晴れの空と風がとても気持ちよく、時折森から現れるゴブリンと対峙しながら、移動中は冒険者についてエリナさんが色々話してくれた。


 元々話すのが好きだというエリナさんは、話し上手でとても分かりやすく説明してくれた。


 Cランク冒険者ともなれば、依頼一つで銀貨数十枚の依頼もあるという。


 前世換算で一件数十万円の依頼と考えれば、みんな高ランク冒険者を目指す理由もわかる気がする。


 三日目のお昼は、うどんを。三日目の野営は、たれ焼肉とたこ焼きにした。


 前日同様、俺はブレインさんの手ほどきを受けて、戦い方をより深く学べた。


「は~い。みなさん! 風呂にしますよ~!」


 そう声をあげるミレイちゃん。


 今日は周辺に泉はなかった気がするが……。


「先にお兄ちゃんから!」


 ミレイちゃんが僕の手を引いて茂みの中に入った。


 一体何をするのやら……?


「お兄ちゃん。動かないでね?」


「わ、わかった」


 両手を前に出したミレイちゃんは「水魔法!」と唱えた。


 すると、僕の顔以外の全身を水袋が包み込む。


「うわっ!? お、おお!」


「じゃあ、洗うね~」


 水袋はくるくると回り始めると、僕の体から衣服まで一気に洗濯し始めた。


 ちょっとだけくすぐったいけど、風呂に入るより気持ちいいかも…………。こうジェット水流で流される感じ、今まで経験したどんなものより気持ちいい。


 数分で洗い終わったので、今度は温風が僕の体を包み込んだ。


「そういや、ミレイちゃんは水魔法と風魔法に火魔法まで適正があるんだっけ?」


「そうだよ! 普通は二属性を持つ人が多いから、三属性から五属性は珍しいみたい」


 魔法には【火属性】【水属性】【風属性】【雷属性】【土属性】の五大属性と呼ばれている五つの属性が存在する。


 他にも特別属性に【光属性】【闇属性】など、特殊な属性もあるらしいけど、こちらは特別な才能がないと使うことはできないみたい。


 五大属性は、二つの属性を持つ人が一番人口が多く、三つ四つ五つとなるにつれ、どんどん人口が減るらしい。中には単属性……つまり、一つの人もいるが、かなり少ないという。


 ちなみに属性の数が増えれば増える程、使える呪文に悪い方がで差が開いてしまうらしく、単属性の場合、その属性に特化する代わりに強力な呪文を使えるらしい。


 中でも【賢者】という才能だけは全属性が使える上に、最強呪文が使えるとエリナさんが熱弁していた。


「三つに適正があるおかげと【自然魔法】が得意みたいで、こういう使い方ができるみたい!」


「そうか。ミレイちゃんは本当に凄いね」


「えへへ~これでお兄ちゃん達の役に立つなら、本当に嬉しい! 私、これからも頑張るからね!」


「ああ。よろしく頼む! 僕もミレイちゃんのために美味しい料理をどんどん作るからね?」


「わ~い! 凄く嬉しい!」


 丁度洗濯兼風呂が終わったので、次の人を呼びに仲間の下に向かうと、セレナが頬を膨らませて僕を見つめた。


「セレナ? どうしたの?」


「むう……ミレイちゃんとばかり楽しそうに話してた」


 あはは……お父さんを他の娘に取られた気持ちにでもなったのかな?


 セレナの頭をポンポンと撫でてあげた。

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