第4話 初めての目標
「ノア? これからどうするの?」
コーンラビットの焼肉で満腹になったのか、ご満悦になったセレナが落ち着きをみせる。
「そうだな。ミグニル王国の外に出たいかな?」
ミグニル王国というのは、僕達が住んでいる地域を領土に持つ国であり、アスカジュー家とイゲイム家が所属する王国だ。
「じゃあ、東に向かう?」
「そうだな。隣国のイデラ王国を目指そうか」
「うん!」
セレナと共にいつもお世話になった泉から東を目指し歩き始めた。
ここ一帯にはコーンラビットが生息しているので、焼肉には困らないし、泉の水も美味しいから過ごすには丁度いいが、いかんせん実家に近すぎるので離れたい。
ここ五年くらいは休息日は全て森の中で過ごしているので、森の中を歩くのは何の苦もない。
満腹のセレナは言うまでもなく元気そのものだ。
森を暫く歩き休みを繰り返し、夜になった。
異世界の気候は不思議なもので、日本のようは春夏秋冬のようなものは存在せず、常に一定の気候で安定している。
ただ、場所によって春夏秋冬の雰囲気が出る。
大陸の北側は冬。東側は春。南側は夏。西側は秋である。
ミグニル王国は大陸の西側なので、常に秋のような季節だ。一番過ごしやすい地域でもあるが、代わりに魔物が弱くて良い素材が取れないので人気はない。
そんな気候なので夜は少し肌寒い。
本来ならテントとか立てたかったけど、森の中でテントを立ててしまうと魔物の餌食になったりする上に、追い出される形なので荷物を殆ど持っていない。いつか生活が安定したら買いたい。
僕とセレナは大きな木の根っこ部分に納まる場所を見つけて二人で入った。
少し窮屈だけど、彼女の肌と息の音が安心感を与えてくれる。
「ノアは私が守るから、ゆっくり休んでね!」
「あはは……できれば僕が言いたい台詞だけど、ごめん」
「いいの。適材適所ってやつだから」
「いつも僕を気遣ってくれてありがとう」
「う、うん! 任せておいて!」
彼女のために夜食用の焼肉を包んで匂いがしないようにしてお椀に入れておいた。
仮眠を取るけど、満腹状態の彼女はあらゆることができるので探索能力まで使えるようになる。
魔物が通りかかったら、事前に発見して僕を守ってくれる。
さらに浅い仮眠でも全く問題ないらしい。本当に才能【暴食】
そして、僕はセレナと共に眠りについた。
◆
「おはよう~!」
朝から元気よく挨拶をしてくれるセレナに笑顔を向ける。
屋敷にいた頃は、誰一人呼びに来なかったし、稽古に遅れたら何をされるかわからなかったのに、素晴らしい笑顔で朝を迎えるのはとても幸せなことだ。
「おはよう。セレナ。やっぱり魔物が通りかかったんだね」
「意外と通り道だったのかも」
「守ってくれてありがとうな。セレナ」
「う、ううん! 私にできるのはこれくらいだから!」
少し顔を赤らめるセレナ。
それからすぐに朝食の準備をする。と言ってもコーンラビットを一瞬で焼肉に料理するだけだが。
僕が持つ才能【アプリ】でインストールした【一秒クッキング】はとても便利だ。
目の前の素材を一瞬で調理するスキルで、コーンラビットが一瞬で美味しい焼肉に変わる。
ただ、一つだけデメリットがある。
【一秒クッキング】を使うためには必ず【レシピ】が必要なんだけれど、僕が持つレシピはたった一つ。【焼肉】だけ。肉を焼くだけなんだからとても
【一秒クッキング】の【レシピ】を手に入れる方法。それは単純明快で、課金して購入するだけだ。もちろん異世界の貨幣で。
異世界の貨幣は小銅貨が十円相当で、小銅貨十枚で銅貨一枚になり百円相当。銅貨十枚で大銅貨一枚になり千円相当。大銅貨十枚で銀貨一枚となり一万円相当となる。その上には金貨があり、銀貨百枚分なので百万円相当だが、平民となった僕には縁の遠い存在だ。
「ご馳走様でした~!」
「もう食べたの!?」
「うん! ノアが作ってくれる焼肉はとても美味しいから!」
朝から焼肉というのにペロっと食べちゃうセレナは凄いと思う。
僕はやっぱり朝はパンかおにぎりが食べたいな。
そんなことを言っても仕方がないので、東を目指して再度歩き始めた。
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