第59話 和解、それから
里長さんとスライムさんが手を取り合い、互いの種族を連れてフェンリルの里へやってくる。
それぞれの「
「「「……」」」
まだ若干
でも、だからこそ俺の出番なんだと思う。
ここは両方を理解できる俺が間を取り持つしかない。
「できましたよー!」
そんな思いで、俺が考えたのは「みんなでご飯を食べること」。
難しいことは細かいことは一度後にして、まずはみんなでお腹を満たす。
そうやって人は仲直りをしてきたと思う。
俺の勝手な考えだけどね。
「ほーら!」
大きな鍋の
少し辛さの混じった、日本人が大好きな食欲をそそるあの匂いだ。
「ウォフ?」
「ポヨ?」
その匂いには、黙り込んでいた両種族が反応を示した。
フェンリル達はよく利く鼻とクンクンさせ、インフィニティスライムは真ん丸とした液体の体を何度かその場で跳ねさせた。
気になってくれたのなら嬉しいな。
「やすひろ殿……」
「これはなんなの?」
そんな両種族を代表して、里長さんとスライムさんがそーっと鍋の中を覗き込む。
人間の料理だし、何か分かっていないのも当然だね。
「これは、カレーです!」
「「カレー?」」
「はい!」
そう、俺と美月ちゃんが作ったのはカレー。
『王種』野菜をふんだんに使えて、一度にたくさん作れる料理といえばやっぱりこれだった。
どちらにも気に入ってもらえるんじゃないかな。
「みんな、じゃんじゃん運んじゃってー」
「ワフ」
「ムニャ」
「キュル」
「プク」
指示をすると、うちのペット四匹が皿に料理を分け、フェンリルとインフィニティスライムの前に順に置いて行く。
四匹も俺と同じで、カレーの良さを味わってほしいのかもしれない。
うちではよく出てくる(
「ぽ、ぽよ……」
ちなみに、ぽよちゃんはぜーぜーと息をしながらそこで転がっている。
色々と能力を使い過ぎて疲れちゃったのかも。
料理の時には、ぽよちゃんの色々な便利能力は必須だからな。
「ありがとうね。ぽよちゃん」
「ぽ、ぽよっ!」
それでも、声を掛けると右側から飛び出たちっちゃな触手を上げて返事をしてくれる。
本当に頑張り者さんだな、ぽよちゃんは。
そうして、両種族にカレーが行き渡った。
「「「……」」」
でも反応はよくない。
興味はそそられながらも、中々手につけることができないのだろう。
「やすひろさん……」
「大丈夫だよ」
「え?」
悲しそうな美月ちゃんに対して、里長さんとスライムさんが座る場所を指差した。
「い、いただきます……」
「ごくり……」
「あ」
「食べてくれるみたいだね」
反応がまだイマイチな種族に率先してるくれるのは、やはりこの二匹。
周りが様子を窺っている中、里長さんとスライムさんが真っ先に手を付けた。
「「!!」」
二匹は同時に目を見開く。
「美味しい」
「うまーい!」
そして、声を上げた。
「やすひろさん……!」
「うん!」
二匹とも喜んでくれたみたいだ。
それを機に両種族がカレーを口にし始める。
「クゥ~ン!」
「ポヨオオ!」
それから歓喜の声に包まれるまで、そう時間はかからなかった。
みんな満足してくれたみたい。
「ワフー!」
「ムニャ!」
「キュル!」
「ポヨー!」
「はははっ」
それを見て嬉しがる四匹。
完全に提供する側の気持ちだな。
学園祭での経験も生きて、そちらの気持ちも分かったのかもしれない。
「うまくいきましたね!」
「うん! 美月ちゃんもありがとう!」
「もう、これぐらいはさせてほしいですよ!」
そうして所々で、さっきまでは見られなかった光景が。
「ウォフ」
「ポヨ……?」
まだ様子見しているインフィニティスライムに、フェンリルが「食べてみな」と言っているみたいだ。
雰囲気も
「ふふっ」
「良かった、良かった」
その雰囲気は広がり、いつの間にか大きな輪になっている。
両種族の距離が少しづつ近づいているんだ。
「やすひろ殿よ」
「里長さん?」
「こんな和解の形もあるのじゃな」
里長さんは優しい目で両種族を眺める。
「はい。これが人なりの和解の仕方です」
「そのようじゃな。まだまだ学ぶことがあるわい」
そして、細まったがこちらを向く。
「やすひろ殿」
「なんでしょう」
「一つ、頼みがあるのじゃが」
「頼み?」
一息つき、里長さんは口にする。
「フェンリルの里を、お主の住む場所と繋げてもよろしいか」
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