陰陽師少女・野良のはなもり♪

健野屋ふみの

1話 式神くんの言い訳

吾は野良の陰陽師。通称【野良のはなもり】

野良なので貧乏です。

ゆえにボロいアパートの1階に住んでます。


昼間は女子高に通ってます。

友達はいましたが、引き籠ってしまって、学校にはあんまり行きたくありません。


お仕事はネットゲームの実況です。儲かりません。


最近、吾が実況をしていると、隣の二階から時々視線を感じる。


吾部屋のすぐ隣には、同じタイプのアパートがあって、そっちはほぼ空き家です。

ほぼ廃墟です。

そんなところから見られているなんて、怖いです。

だからと言って、引っ越すお金もないし。


いるかいないかだけは、ハッキリさせたい。

ので、実況配信中に、カーテンを開けて、チラチラと伺ってみた。


チラ・・・チラ。


いた。今、目が合った。

12か13くらいの年齢の少年のような。


吾は家宝の名刀村正を手に、隣のアパートの2階に走った。

村正があれば大抵大丈夫だ。

村正は大袈裟かと思われるかも知れないが、物の怪の類だったら、村正は最適なのだ。


ボロアパートの階段を駆け上がり、その部屋のドアを開けた。

12か13くらいの年齢の少年がいた。


こいつは式神だ!


野良とは言え、それはすぐに分かった。

「なぜ吾の部屋を覗いていた!?」

陰陽師に対して式神を使うなど、敵対行為に等しい!

吾は村正の柄を掴んだ。

「待って!」

「今更!」

「ぼくは式神の微風そよかぜ、マキの式神です」


マキ。絶賛引き籠り中の吾の親友だ。

良く見ると、微風そよかぜの顔はどことなくマキの面影がある。

分霊型の式神だろう。所謂分身の術に近い。


「マキは、はなもりちゃんに、会いたくて、会いたくて、陰陽道を勉強してやっと式神を派遣することが出来たの。分身とは言え逢えて嬉しいよ」


ネットワークが世界中に広がった昨今。

ネットワークを利用すれば、幾らでも連絡は出来たのに。


「なぜそこまで遠回りをしたの?」

「だってメールとかドキドキするし、引き籠りで久しぶりだったし」


解る。とっても解る。

ネットで実況とかしているくせに、吾もものすごく臆病で人見知りなのだ。


ネットワークが世界中に広がった昨今。

どうして我々は、こんな面倒くさい事をしているのだろう?


吾は早速、吾の分身たる式神を、マキの元に派遣した。

数分後、分身たる式神を通じて、マキの歓喜が伝わってきた。


ネットワークが世界中に広がった昨今。

どうして我々は、こんな面倒くさい事をしているのだろう?



          完 

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