【KAC20237】わたしと女神様2

かなめ

ギャップ萌えってこれかってなった話

「あ! 絢ちゃん、お願い助けて~!」

「…………助けてって」

「ねぇ、お願~~い!」

「お、お願いならしょうがないか。で、千紗さんや。私は何を手伝えば良いの?」


 たっぷりとをしたあと、同じ制服を身にまとった高い位置で結んでなお背中の真ん中まである艶やかな長い黒髪の少女がどうにか絞り出したかのような声で返事をしてくれた。さすが私の女神様!

 黙って立っているだけなら近寄りがたく華やかな印象が先立つけれど、頼りになる姉御肌で非常に面倒見が良いと知ったのは高校二年で隣の席になってからだった。私が勉強で困ってたりヘルプの声を出したら、高確率で手を貸してくれる女神様のようなひとだ。


「家庭科の課題があったでしょ? もふもふ毛糸が余ったから編み物してたの」

「……家庭科の課題? 確かエプロン作るやつで……ああ、そういえば千紗に似合いそうなエプロン作ってたね」

「そうなの、絢ちゃん! 絢ちゃんはシンプルですぅっごく格好良いの提出してたね!」

「千紗さんや。褒めても飴ちゃんくらいしか渡せないのよ」


 いそいそと制服のポケットからストロベリーキャンディをひとつ取り出して食べさせてくれた。ん~、甘い! 美味しい!

 世間一般的に可愛いの部類に入るらしい私は、肩まで伸ばしている茶色に限りなく近い黒茶色のふわふわした猫毛を華美にならないリボンやバレッタで飾るだけでふわふわしてて可愛いねと言われることが多い。

 編み物をしてたから両手が拘束されているのを考慮して食べさせてくれたみたい。


 なんだかと思ったけど、それを言ったらたぶんもうやってくれなくなるなぁとも思うので、絢ちゃんには内緒にしてる。

 小さなしあわせをくれる私の大事で大好きな女神様。

 みんな彼女をとても冷たいとか、私のことを可哀想とか色々言ってくるけれど、彼女はちっとも冷たくなんてないし、私は彼女が彼女でいてくれるならそれで良かった。


「絢ちゃん?」

「……………かわいい」

「え?」

「……ちょっと待って。違うから。お願い言い訳をさせて。私がこの苺飴を持ってたのは飴が美味しかったからで可愛いからなんて理由じゃないから。勉強して頭使うとすっごく糖分欲しくなるし思わず飴売り場で偶然手に取ったのが苺飴だっただけだから!!!!」

「……偶然」

「そう! ぐうぜ……ん……笑うなあああああああ!」


 いやあ~。笑うなって言われてもさあ。無理~。にやにやしちゃうのは止められない~。だってあんなに早口で怒涛の勢いで捲し立てたら鈍い私でも絢ちゃんがすっごく可愛いものが好きなんだなってわかっちゃうよ~。

 あの苺飴、袋も個別包装も全部可愛いもんね!




終わり

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