占い師フールの移動喫茶

空付 碧

第一世界 勤勉な彼女の、恋愛事情。

私の名前は、フール。

愚か者、という意味らしい。なぜこんな名を付けたのか、親のに聞いてみたいけれど、親の記憶なんてない。気づけば、ガタガタ荷物を引っ張って、旅をしていた。思い出せないのも、フールの呪いかもしれない。

けれど、特技はある。人の相談を聞くことと、アドバイスをすること。色々見てきたからこそ、言えることもあるから、色んな人に出会えて嬉しいし、たのしい。

そんなこんなで、今日も喫茶店を開くのだ。


物静かな片隅で、『占い師フールの移動喫茶』と看板を下げた。

今日はいいお天気だ。どんな人に出会えるだろう。

ワクワクしながら、飲み物を取り出していると、人影が見えた。

これは、地の国のお嬢さんだ。

「開いてるかしら」

髪をいじりながら、お嬢さんは言う。

「いらっしゃいませ、よくぞいらっしゃいました!美味しい飲み物を用意していますよ」

「そうね...」

地の国のお嬢さんは、基本的に勤勉だ。そしてお金を大事にするから、常識的なお嬢様が多い。

「我が国の、ダージリンファーストフラッシュで」

「……かしこまりました!」

お嬢さまは、舌も越えているようだ。


紅茶を入れるのに手間取っていると、どこかソワソワした様子で、お嬢さんはため息をついた。

「どうかなされたんですか?お話ならいくらでも聞きますよ」

「大したことじゃないの。でもね……」

もう一度ため息をつかれたので、紅茶をの時間を計る、砂時計をひっくり返した。

「紅茶が入るまで、時間がありますし、世間話でも」

「……そうね」

少し躊躇ったあと、お嬢さんは言った。

「……恋愛って、どうやるのかしら」

「れん、あい。ですか。」

なんとまぁ、勤勉なお嬢さんでも、恋はしたいらしい。

「タイミングとか、分からないのよ。どうしたら恋人が作れるかしら……」

「そうですかぁ。お若いですね」

「……フール!!」

「あっ、失礼しました。紅茶入れます」

余計な一言で、怒られるのはよくある。そそくさと紅茶を入れて、アドバイスを考えた。

「お嬢さんは、知識欲が強いとお見受けします」

「ありがとう」

「恋愛にも、好奇心を持たれるのは素敵ですが、まず淑女としての、身だしなみや、知識の幅を広げて見てはいかがでしょう。自分でルールブックを作ってみたら、面白い恋愛ができるかもしれません」

カップに口をつけて聞いていた、小さな女の子は、一段と大きなため息をついた。

「あのね、私、今恋人が欲しいの」

「あっ……」

「もう、役たたずっ!!これだけあればいいかしら。失礼するわっ」

颯爽と去っていってしまって、考える。

妙案だったと、思うけどなぁ。

まぁ若いし、堅実なお嬢さんだろうから、大丈夫でしょう。

気楽に、カップを片付け始めた。


『解説』

お客様:ペンタクルペイジ

お話:恋人逆位置、運命の輪逆位置

アドバイス:女教皇

結果:隠者逆位置

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