人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり

第1章 異世界との遭遇

第1話 事の始まり。奴らは1匹見つければ100はいる。

 昨日、田の畔を草刈りをしていて、変な生き物を刈ってしまった。


「なんだ今の?」

 人が草刈りしていたら、突然顔を出して来た、緑色の変な生き物。

 つい草と一緒に刈っちまったよ。


 おれは高知の山の中で、小さな田んぼと、鉄工所に勤めている兼業農家。

 顔は悪くないし、身長もそこそこある。あくまで、自分でそう思っているだけだが。

 20代の時には、そんなにあせらずとも、結婚位できるだろうと思ったが、無慈悲なことに月日は流れ。もう少しで40歳になる。

 20歳過ぎれば、70年から80年成長が止まり元気に生き続け、再び成長が始まり老人に成ったら数年でぱったりが理想的なんだがなぁ。


 それはさておき、今、近所の友人と酒を飲みながら、昨日見た変な生き物の事を話していた。

 ああ。友人も当然、独身だ。


 俺が、松田広大。友人は窪田真一。ともにもう38歳。

 生まれたときからの腐れ縁。


「うん? 狸かハクビシンじゃないのか?」

「そんなもの見たらわかる。それにな、切ったら、煙になって消えた。後にはこんなガラス玉だけが残った」

 机の上にコロンと取り出す。

「何だこれ? ラノベで言う魔石か?見方によれば、きれいだな。今度見つけたら俺も狩ってみよう」



 そんなことを言っていた、数日後。

 ニュースで、一般に言われるダンジョンが発見されたと騒いでいた。

 TVに映った洞穴には、警察と自衛隊がバリケードを張り、誰も近づけない? いや違うな。逆だ。何かが出てこないように、見張っている。


「近づかないでください」

 そんな注意が、叫び声となって聞こえる。

「出て来たぞ、狙え。うてぇ」

 そんな号令と共に、銃が発射される。


 ニュースのひとコーナーだったはずなのに、カメラがスタジオに戻らない。

「しまった、抜けられた」

 そんな声が聞こえる。近寄ってはいけないところを越え、食い気味に撮影していたカメラに、飛びついてきた緑色の小人。

 身長は120~130cmくらい。

 小学生、それも低学年くらいだな。


 ああ、写っちゃいけないものが。体のわりに、意外とかわいくない股間にぶら下がったものが、どアップで映った。テレビ局も大変だ。


「ああ。あいつだ」

 テレビの画面を見て確信をした。

 先日、間違って刈ってしまった奴だ。

「そうかダンジョン。谷から来たと言うことは、あそこの辺りにできたな」


 翌日の新聞には、でかでかとゴブリンにご用心と書かれていた。

 人を襲う。

 個体によっては、武器を持っている。

 詳細は書いていないが、特に女の人は気を付けてと書かれている。

 ラノベの常識通りか。


『一匹いれば100はいる。すぐ通報』

 などという文章も、書かれている。


 新聞を持ったまま、真一の家へと行く。

「おーい居るか」

「おう。どうした」

「新聞を見たか?」


「ああ見た。というか、昨日のニュースはうけた。さっそく拡散されていたよな」

「それでだな、この前刈った奴が、どうもこれだったんだよ。100匹いるらしいぞ。レベルアップの為に、一狩り行かないか?」

「レベルアップ。いいなあ。魔法使えるようになるのか?」

「さあ? ほとんど情報がないからな。自分で実験だ」


「武器は? 草刈機は楽だけど燃料も食うし、重いからなあ」

「鉈と、ああ。柄鎌がある」

「俺もそうするか。草刈り用の防刃手袋はしとけよ。噛みつくらしいぞ」

「わかった。じゃあ足もスパイクとプロテクター装備だな」


 一応装備して、探しに行くとすぐに見つかった。

 周りを探して、野良がいないかを確認する。


 なぜかダンジョン入り口で、ゴブリンが引き返して奥へ戻っている。

 入り口から、ゴブリンの姿が見えなくなったときに中へ入り込み、またこちらへ戻ってくる。

「大丈夫そうだけど、入口で何かを越える感覚がある」


「まあ奥へ行こうぜ」


 このモンスターが出てこられない壁は、入り口を開いてすぐにモンスターが死ぬと安全装置としてダンジョンが作る障壁のようだ。この出口は危険。使用禁止みたいな物らしい。ずいぶん後に知り合った自称賢者に聞いた。

 水の中とか、崖の途中に開いたら、ただモンスターが死ぬだけになるからな。

 そう言って賢者は笑っていた。いや、知っているぞ。お前魔王だろ。



「さあどうかな。真一。自分たちで切りあうのは勘弁だから、距離をとれよ」

「おうさ」


 こわごわ始めたが、切ると消えるため、3D のゲームのように楽しめた。


 それから、6か月後。

 入り口わきの石板に手をあて、転移ゲート機能を利用して一気に最下層へとジャンプする。

「結局、ずっと洞窟タイプで、青い海とか期待したが、なかったな」

「そうだな」

 そう返事をしながら、脇に伸びている道を俺は気にしていた。

「なあ暇つぶしに、脇道とかマッピングして潰したよな」

「ああそうだな」

「この道は何だろうな?」

「そう言えばなんだろうな、そこの石板も気になるよな」

「うーむ、これは絶対、転移用の石板だよな」


「行ってみるか?」

「ダンジョンもここの扉で最後っぽいし、後で良いか。どうせボスはドラゴンかキマイラだろ」

「どうだろうな、フェンリルは途中で出たが、キマイラの方が強いのか?」

「あーそうか、どうだろうな。ケルベロスなんかも見ていないな。扉の感じはボスっぽいからなぁ。まあ後でいいや、先にそっちへ行こうぜ」


 ふたりそろって、登録がてら石板に触れて一度飛ぶ。

「もうひとつ、どこかの入り口があったみたいだな」

 転移先で見ると、岩山に口を開けた洞窟だった。

「こっちの入り口は、岩だな。迷彩用のシートを注文しておくよ」

 反対側。家の近くの入り口は、よしずに草を差し込み、ギリースーツのように偽装して隠してある。


 ウームなんだろう。

 違和感を感じて考えていると、くらっと来て、さらに頭痛が来た。

 横を見ると、真一も変な顔をしている。

「真一。顔が変だぞ」

「やかましい。昔からだ。そんなことより、この空気。もしかしてまずいのか?」

「お前もか。俺もさっきから、めまいと頭痛がひどい。思ったより標高が高いのかもしれない」


 さっさと、転移すればいいのに、俺たちは仲良く気を失った。

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