第一章 山田滅亡対策委員会

山田のガチャから出るものは基本的に全部微妙。

その微妙なものをマッドサイエンティストやホムンクルスが無理やり使えるようにしているというだけで、大半のものは倉庫で管理されている。


そんなガチャではあるが、たまにとんでもないものを吐き出す。それは世界を変える神物であったり、超技術であったり。

そして今回は、まぁ碌でもない物が出てしまったという話。




SSR『予言書』




A4用紙に書かれた予言書は、残念ながら未知の言語で書かれておりその詳細は不明。オマケに方言や字の汚さもあり、解読は困難極めている。



だが、何もしないというわけにはいかない。山田ドラゴンガチャ王国は歪ではあるが一応国家。しっかりと役人達が集まり、対策を練っていた。






『第4回予言に対する占星術部門及び国体維持局その他関連団体合同会議』



出席者は予言の専門家である占星術師、国家の維持を目的に活動するボランティア団体【国体維持局】

その他多種多様な部署から多くの人々が集まっていた。


注目すべきは、この場唯一の地球人であり、今回の会議の司会兼進行。過酷極まる研修を経て、ついに王へと辿り着いた傑物。地球人メキシコ出身の麻薬カルテルリーダーの男。指定手配中。アメリカ出禁の男。

その名はギルガルド・ギガイアス・ゴローニャである。



「現在占星術師班の予言では凶。これまで3回、大規模な対策を行いましたが、以前として変わりありません」


ギルガルドはため息を吐く。


「まったく、碌でもない物を出してくれた物だ。アホの宗教狂い達はガチャを崇めているが、正気と思えん。実際そうだろう?あらゆる可能性を秘めた夢のガチャだなんて言ってはいるが、俺の仕事が増えるだけだ」


「それはそう」


多くのホムンクルスが思った。この場に出席したホムンクルスは多少だが理性が効く。少しだけまともなのだ。



「予言書にも2種類存在します。予言が100%起きる確定タイプ。未来の出来事を示し、回避可能な可能性タイプ。今回は後者です。考えようによっては、事態を未然に防ぐことにより、仕事が減ると考えることもできるのでは?」


「だとしても7号を投入すれば大抵のことは解決する。今回の世界の危機もそうなのだろう?」


「はい、世界情勢に大きな影響を与える規模だと」


「なら問題ないですね」


「あぁ、よかった」


会議室にホッとした雰囲気が流れ、張り詰めた空気がなくなり、ホムンクルスは安心したようだった。


ホムンクルス以外はダメだろ…思っていた。


ギルバルトも同じく、

(…いや、問題だろう。ダメだなホムンクルスは。脳の作りが根本からおかしい。危機に対して鈍すぎる。メキシコなら死んでいるな)


と考えたが、麻薬カルテルが返り討ちあうイメージしか湧かなかった。不死身かこいつら。


「しかし、予言書の解読も進まない今、このような会議に意味があるのか?もう少し、解読が進んでから会議を行なった方が良いのでは?」


「なぁに、心配するな。会議は今回で終わりだ」


「?それはどういう」


突如としてバンッという空気が響く音ともに、会議室の入り口扉が開き、一人の男が入ってくる。白衣を着た、目がキマッてる男だった。


「ギルガルド代理王!予言書の解読に成功しました!マッドサイエンティストが一晩でやってくれました!」


「おお!流石はマッドサイエンティスト!ハッピーな差し入れをした甲斐があったな!それで予言は⁈」




予言  山田竜による支配体制に大きな影響を与える。日本を起点として多種多様な国際問題が発生する。地球世界情勢に大きな影響を与える。


脅威度 非常に高い。


パラレルワールドにおいて山田竜と互角に渡り合った男が主犯。現在埼玉県道頓堀市ネオトーキョー地区に潜伏中。

7号以外のホムンクルスは絶対に派遣しないこと。碌なことが起きない。マジで。山田竜を筆頭とした少数精鋭で向かうべし。









「すぐにあのガキを呼び出せ!」


「ダメです、ジャミングされています!通信つながりません!」」


「破壊工作か⁈敵はここまで浸透しているというのか⁈すぐにスパイを撃ち殺せ!」


「そ、それが…」












山田ドラゴンガチャ王国パチンコ店前要塞



「目標命中。味方航空部隊の攻撃は成功です」


「よし、これで付近の友軍は全滅だな!」


うん、綺麗さっぱりだ!

目の前のレーダーでは、ついさっきまで友軍を示す青色の反応で埋め尽くすされていたが、今はもう我々以外に反応はない。邪魔者は徹底的に排除しなければ!


我ら山田竜直属近衛隊過激派!!!

文字通り、山田様に忠誠を誓い、王の命令なら何でも実行するスペシャリストである!


山田様はここ最近忙しい様子であった…何としてでも、快適な休暇を過ごしてもらわなければ。


そのためにはまず、付近の邪魔な友軍を排除しなければ。

山田様へ挑むため、付近の友軍がパチンコ店襲撃計画を立てていたのは諜報部が確認済み!


どの友軍が敵なのかはわからなかったので、とりあえず全部撃破したぞ!



「しかし、占星術師の占いでは『山田様は休暇を快適に過ごせるか?』の問いに対していまだに凶を示しています。事態は深刻です。」


「なんだとぉ⁈何故だ!こんなにも友軍を撃破しているのに⁈仕方あるまい、衛星軌道上の艦隊を動かすか」


「あぁ、大凶に悪化しました!」


「これはまずい!もっと味方を撃破しなければ!」


「索敵より連絡!全方位より、友軍が接近!レーダーを埋め尽くす勢いです!」


「諸君!ここが踏ん張りどころだ!我ら近衛隊!日頃の訓練の成果を見せようではないか!」


「パチンコ屋を無敵要塞に改造してやる!予算は無限!俺の考えた最強の要塞を作り上げる!」

「反乱軍に応援要請!これを機に山田軍の力を削ぎ、企業勢力を拡大させる!株価上昇でウハウハだ!」

「アハハハハ、これこれ!このメチャクチャさが好きで近衛隊に入ったんだ!」

「ウオオオオオオオオ、何で戦ってるのかよくわからんがやるぞ!」









「ミサイルを打ち込め!あのガキを呼び出せ!」


「もうしてます!現在落下傘部隊がパチンコ店制圧のために降下中!」


「傭兵団より連絡!敵の攻撃激しく、前進困難とのこと!火力支援を要請していたので傭兵団ごと吹き飛ばしました!」


「7号さんは⁈7号さんはどこにいる!」


「冥王星で宇宙人と戦っています!今あの人は呼び戻せません!」


「我々も加勢に行くぞ!」


ドタドタドタ。





会議室に残されたのは、ホムンクルス以外の人員だけ。


「…アホだ…まだメキシコの奴らの方が使えるぞ…」










「なんで甘デジでも当たらないんだ!絶対裏で確率操作してやがる!」


「そんなことありませんよ。山田さん以外は皆勝ってますから」


「なんで神様の俺が負けて最高司祭のお前が勝ってるんだ!」


「さぁ?あ、また当たりました」


「クソがッ!」








----------------------------------------------------------------------------

書籍化作業進行中。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ガチャと僕のプライベートプラネット【書籍化】 太陽くん @karlking

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ