ドラゴンメイド三連星
「頼む、助けてくれ」
【陛下】はとある女性に連絡を取る。この女性との秘密の関係は、【陛下】とこの女性、そして女性の仲間二人しかしらない、極秘の関係だった。
「…はぁ、何というか。事態は既に把握しています。ですが、まぁ。ここまで役立たずとは思いませんでした」
「誰のせいでこうなったと思ってる⁈お前が計画にないこと命令したからじゃないか!」
そう、計画。実は【陛下】とランキング1位【迷宮】、というよりその配下のユニットは同盟を結んでいた。
【陛下】は中位ユーザーや見込みのある下位ユーザーたちを集め上位打倒を掲げて中位ユーザー連盟を結成。
中位ユーザーたちを上位ユーザーにぶつけ、一人でも多くの上位ユーザーを撃破、そして将来性のある中位下位ユーザーを道連れにさせる。
その代価として、【陛下】は【迷宮】より豊富な物資、技術、兵力の提供を受ける。
そういう計画だった。だが、強制的に加入させるなんてことはしないはずだった。
もうすでに200人以上のユーザーを仲間に引き入れることに成功したのだ。別に、山田竜に圧力を加えてまで仲間に引き込む必要はなかった。
そのはずなのに、この女は!いきなり命令してきたのだ!山田竜を従えろ。しなければ、連盟を殲滅すると。
何が計画だ!
「計画通りに行くことなど稀。何事も予定外のことが起きると言う物です」
「そういうことを言っているんじゃない!僕たちの目的は、上位ユーザーと中位ユーザーを衝突させることだったはずじゃないか!戦力は十分、そもそも山田を連盟に取り込む予定はなかった!」
「山田竜は強力な力を持っていることが明らかになりました。彼は将来、間違いなく、上位ユーザーとなるでしょう。敵対する前に手を打つべきだと考えたのです」
「それなら、【傭兵会社】と同じように、取引をすればよかった!そうすれば、敵対することはなかったはずだ!」
「答えろ!なぜ、こんな命令をした!」
「…私の創造主【迷宮】様は、最高のユーザーです。ランキングも1位、だから当然、最も注目され、人々から称賛の声を浴びるはずだった。」
「『人気投票結果閲覧権』という非売品の権利があります。これはこれまで公開されたランキングとは別物の、ただ人気投票によって順位を決めただけの、ゲームへの影響も報酬も何もない非公開の単純なランキングです。面白いのは、地球人だけではなく、運営も投票することができるということだ。1位が誰なのかだけを、知ることができる」
「当然、中間発表でも1位を維持している我が主だと思っていた!だが、違う!運営も異次元の視聴者も、地球の馬鹿たちもみんな、主ではなく彼を注目する!それが許せない!我が主よりも注目されるなど!許されることではない!」
「は…?そんなどうでもいい、くだらない理由で…⁈」
「しかし、すべては無駄でした。ユーザーを50人以上殺傷したことにより、彼の注目は強まってしまった。死んだユーザーたちは本当に、役立たずです」
「この裏切り者め…!何が計画だ…中位と上位を衝突させるんじゃなかったのか」
「それはあなたも同じでしょう?中位ユーザーを扇動し、上位ユーザーに無謀にも挑ませる。そして将来性のある中位ユーザーをつぶす。それが計画だったはず。でもあなたは中位ユーザーに情が湧いた。彼らを使い捨ての駒ではなく、仲間として共に戦おうとした。計画通りに進めないのは、あなたも同じじゃないですか」
「……」
「まあ、いいでしょう。あなたたちが役立たずな以上、我々が直接動かなければなりません」
「では、始めましょうか」
あれから俺は、数だけは多い中位ユーザー連盟相手に、戦い続けていた。既にガチャ禁止期間は終了し、そして1日ぶりに回したガチャも大したアイテムを入手することができないまま、魔王武装を着用し自ら戦っていた。
だが、敵の時空間魔法により通常の世界から異空間に引き込まれ、隔離されてしまった。
「またか」
またか。芸のない奴らだ。俺を閉じ込めて隔離。孤立した俺を襲撃する。それしかないのか?
しかし、前回とは違うことが1つ。目の前にいるメイド3人が、俺よりも明らかに強いということである。正直言って、正面から戦って勝てる気がしない。
●空間魔法により、異空間に隔離されました!
●今すぐに逃げろ!このままでは勝ち目はない!
●だめです!転移が妨害されています!一人でも倒せれば、どうにかなりそうですが…
●まずいぞ…
「お前らは誰だ?【陛下】…じゃあないな。雰囲気が違う」
【陛下】のユニットは、人間とは違う異種族で構成された、まさに悪の魔王軍といった風貌だった。
だがこいつらは違う。貴族に仕えるメイドというか。姿勢の正しさなどの所作から品の良さを感じる。【陛下】のユニットとは別系統のユニットだ。あとなんだその角は。でっかいな、ドラゴンか?
「話す必要はありません。あなたのような小物が知っても無意味なことです」
「偉そうだな、お前大嫌いだ」
「ええ、私もです」
●鑑定不可能。対象とのステータス差が大きすぎます!
「そうか。なあ、俺は疲れているんだ、今は戦いたくはない。何とか、平和的にいこう」
「いえ、無理です。個人的に苦しんでほしいので。ですがまあ、土下座して泣いて詫びるのであれば」
俺は剣でドラゴンメイドに斬りかかる。
その瞬間、俺は地に伏せていた。受け身をとることができず、顎が床に激突する。
は?
立ち上がろうとするが、うまく立てない。後ろを振り向くと、両足の膝から下が千切れていた。
いや、足だけではない。腕も、肩から先がない。
「本当に下品ですね。人が話している途中で攻撃するだなんて。で、どうですか?自らがどれだけ矮小な存在か、わかりましたか?」
なにか、何かをされた!
わからん!わからん!攻撃されたのか?
感覚を思い出す、斬られた、潰された、殴られた?違う!
…千切られた?
ドラゴンメイドが地に伏せる俺の前にしゃがみ込み、一枚の紙を提示する。他の2人は遠目からニヤニヤを俺を見ている。クソが。
「これにサインしなさい。今は亡き【契約者】が残した契約書です。現存する未使用の契約書はこれが最後でしょう。内容は文字通り、絶対服従の契約書。さあ、サインをするといいなさい。言うのであれば、腕を治してさしあげます。もちろん、左腕ですけどね。シルバースライムなら私たちでも対応できます」
ペッ
俺は唾を契約書に吐いた。
【自爆】
ポン!
ポップコーンが弾けるような音と共に小さな爆発が起き、契約書には穴が開いて、使い物にならなくなってしまった
「誰がするか」
「そうですか。残念です」
●複数のLR相当のアイテム『弥勒菩薩の拝謁状』『閻魔大王の裏帳簿』『月の錆びた鐘』『白薔薇』『逆行・潜伏病魔』『ハサミ』『世界自己中心説』『生存不許可令』『加速する魂』『壊れかけたグリニッジ時計』『魔王の予言書』その他複数のSSR、SR相当のアイテムの発動を確認。
LR⁉は、マジか。
●あなたは死亡した
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