運命教会の実態
運命教会の自称最高司祭のアリスだが彼女は運命教の地盤を固めるために様々なことをし始めた。
まずはショッピングモールの一角を占拠し、運命教会の礼拝堂兼教皇庁を設立した。
といっても家具屋から椅子と机を持ってきただけで、正面に掛けられている看板も紙にマジックで教皇庁と書かれているだけだ。あとキャビネットの上にSSRカプセルが置かれており、彼女はそれに向けて祈っていた。
次に彼女が始めたのは布教だった。運命教会の神。つまり俺を信仰すれば望んだ未来を掴み取れ、さらに運に恵まれ幸せな暮らしを送ることが出来るといろいろな人物に布教し始めたのだ。
正直こんな胡散臭い宗教に誰も入信しないと考えていたが、驚いたことにそこそこの数の入信者がいた。
ホムンクルス数人に剣闘士のルーカス、殺し屋のスナイパー。
彼らは俺について行けば良い未来が待っていると考えているようで、俺を信じていると話してくれた。
ちなみに最高司祭のことは一切尊敬していないらしい。なので最高司祭の命令にも従わないという。
最後に彼女は教典『運命書』の編集作業に取りかかった。
どうやら宗教には教典が必要だと考えたらしく、俺がこの部屋に監禁されてからこの運命教の設立されるまでの過程を記した教典『運命書』の作成を始めた。
しかしその過程は行き当たりばったりのガチャを引くだけの代わり映えしない毎日。
だが彼女は雰囲気が大事だとして教典をそれっぽく書くそうだ。
何でも俺は運命と幸運の神、ホムンクルスが12人の始まりの子、蜜柑ジュースを恵みの聖水だとして蜜柑は運命教の象徴の一つらしい。ヘルメス神は俺に仕える神のようだ。
さらに言えば首無しが芸術の神、ガチャはあらゆる物が入っているアカシックレコードだと書かれてあった。
大丈夫?アカシックレコードの意味理解してる?
今日のログインボーナスは家電確定ガチャコインだった。家電。正直いって生活に必要な家電はホテルにほとんどあるから必要ないんだよなぁ。
それ。
ガタンッ
C『ホームベーカリー』
家電製品の一つ。小麦粉、水、イースト菌を入れるだけで機械が自動で生地の生成、発酵、焼き上げることで誰でもお手軽に手作りパンを作ることができる。
出現したのは炊飯器のような黒い家電製品だった。なるほど、これがホームベーカリー。実際に見るのは初めてだ。
パンねぇ。俺はどちらかと言えば白ごはん派なのだが、ピザやホットドッグなどの惣菜パンは大好きだ。
だがこれででき上がるのは普通のパンだろう。とにかく使ってみよう。
ホームベーカリーと共に説明書が実体化してあり、そこにはメーカーや製造日、商品名に保証書、使用法が書かれてあった。
メーカー『ガチャ』
製造日『今日の日付』
商品名『どこでもいつでもパンメーカー』
保証書『故意に破壊しない場合はいつでも交換』
………
使用法の項目には150グラム入れてスイッチを押してくださいとだけ書かれてある。何を?いやまあ、小麦粉なんだろうけど。
俺は小麦粉が欲しいと叫び、次々と注文が来る中で一番初めに来たクエストを達成し、届いた小麦粉を機械に入れ蓋を閉じる。
いや、小麦粉だけでいいのか?水とか、イースト菌とか、他にも色々とひつようなんじゃないのか?
うーん、わからん。だがとりあえず、小麦粉を150g投入しスイッチを押した。
するとチーンと言う機械の音が鳴った。
えっ早。一瞬じゃん。これはあれか?一瞬でパンが作れるホームベーカリーという訳か。へー、便利じゃ無いか。
俺は蓋を開ける。そこには一つのカレーパンがあった。
茶色く揚げられた、カリッとしたパン。香ばしい匂いは鼻を刺激し食欲をそそる。
機械馬の検査の結果、特に有害物質は検知されなかったので食してみる。
食べてみるとパンはもちもちとしていて、中から熱々のカレーソースがあふれ出す。ニンジン、ジャガイモ、牛肉。具だくさんのカレーには複雑なうまみが溶け込み広がっていて、あっという間に食べ終わった。
一瞬でパンを製造するホームベーカリー。
作られるのはカレーパン。
カレーは一体、どこから来たんだ⁉
検証の結果、とにかく150グラムの物をホームベーカリーに入れるとカレーパンになることが判明した。
蜜柑ジュースを入れてもカレーパン。土を入れてもカレーパン。ゴミを入れてもカレーパン。
ゴミ箱として利用。非常にエコロジー。
アリスがゴミ問題を解決した瞬間だと運命書に書き足していた。
それでは無料ガチャ!
ガタンッ
R『50%割引券』
割引券。商品を購入する際に使うことで、決められた額を定価より割り引く、つまり安くすることができるお得なクーポン。
…出現したのは、黄色い紙に赤い文字で50%オフ!と書かれた紙だった。
有効期限はいつまでなのか、どこで使えるのか不明。
調べるとショッピングモール内のどの店舗でも使えるらしい。
…別に割り引くほどお金に困っていないので放置。
今日の鑑定
●王権神授説
神が王に与える正当なる王権、その証明書。この証明書に神の名と王の名を書き、両者の同意により発動する。王はその王権の正当なる権利者として活動することが神により認められ、国家はその神またはその神が所属する宗教を崇拝せねばならない。神はその権能を国家に対して使用しなければならない。
俺は、俺のことを崇めるアリスを見ながら考えた。
なぁアリス。俺のこと神様だと思うか?
はい。私、運命教会最高司祭は貴方様を神だと信じ信仰しています。
…これは、俺が神だと主張して、他のユニットに王権を授けることもできるのではないか?
そうすることにより、俺の権能、こいつ曰く運命と幸福の神である俺の力をこの王国に使えるのでは?
要検証。
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