サメ!
機械馬による武功、不壊門の解読が完了した。
俺の予想とは異なり、体の中にある功力、機械馬曰くMPを操作して行う訓練方法と戦闘方法らしい。
なんでも足腰と背骨に魔力を流し込んで行う鍛錬、体操のようなもので、これを繰り返し究めることにより戦闘において決して倒れることなく戦い続けることができるようだ。
その頑丈さ、まさに不壊の門であると書かれているらしい。
そんなわけで俺たちはラジオ体操に続いてみんなでこれの習得に励むことにした。MPの操作というのがよくわからないが、とりあえずみんなで頑張ってみる。
さてさて。今日のログインボーナスは素材確定ガチャコインだった。
素材、これまた何がでるのかわからない。
それではまずは無料ガチャ!
ガタンッ
C『公衆電話』
公衆電話はかつて日本中の駅や道路などいたるところに設置されていた。硬貨やテレフォンカードを入れると利用でき、通話サービスを提供してくれる。
これがあれば家の外でも電話ができ、駅などの人通りの多い場所では多くの人が公衆電話の前に並んでいる姿が目撃されていた。一部の公衆電話ではパソコンをつなげることでインターネットに接続できたらしい。
しかしそれは昔の話。誰でも携帯電話を持った現在においては不要とされ維持費などの問題から撤去され設置されている場所は少ない。公衆電話の使い方も知らない若者も多い。
そんな公衆電話が一台、ショッピングモールの隅っこに出現していた。
よくある緑色の公衆電話とその台座だ。
さて、使ってみるか。
…んん⁈この公衆電話、硬貨を入れる場所がないぞ!それどころか電話番号を打ち込むボタンもない。
…ええ、どうすればいいんだこれ。
調べてみると、台座の下に紙が入っていた。お、これに使い方が書いてあるのかな?どれどれ。
『伝説の総菜屋』専用公衆電話
通話料金、運送料金は必要ありません!
ロックバードのモモ肉から揚げ 300円
ホーンラビットのシチュー 1200円
食獣植物の野菜炒め 900円
シードラゴンのステーキ 1800円
ブルースライムのもつ鍋 2500円
ポイズントードのスープ 1200円
ワイルドボアのラーメン 850円
うわあ。なんだこれ。どんな料理なのかほとんどわからない。
というか、メニューに書かれてる食材全部地球に存在しないでしょこれ。
なんかちぐはくだなぁ、この公衆電話を使ったデリバリーサービスというのは現代的なのに、届く料理はファンタジー。
一部はなんとなくどんなモンスターなのか予想がつくが、ブルースライムのもつ鍋がわからない。
ブルースライム、スライムにそもそも内臓があるのか?だとすればどんな内臓で、どんな味なのか全くわからん。
…一番安くて、どんなモンスターでどんな料理なのか予想がつくロックバードのモモ肉から揚げを注文しよう。
俺は受話器を取る。
『お電話ありがとうございます。伝説の総菜屋デリバリーサービスです。ご注文をどうぞ』
女性の声だ。
えっと。ロックバードのモモ肉一つ。以上で。
『ご注文ありがとうございます!すぐに配達員がそちらに向かいます』
あ、あんたは誰なんだ!ここはどこなんだよ!答えてくれ
電話を切られた。まったく、サービスの悪い店だ。
ちわーっす。伝説の総菜屋でーす。
声がしたので振り向くと、一人の青年が立っていた。帽子をかぶりリュックを背負っている。
びっくりした。気配がまるでなかった。こいつ、どこから現れたんだ。
ご注文のから揚げです、300円お願いしまーす。
あっ、ちょっと待ってくださいね。俺は2号を呼び、金を払わせる。
はいどうぞー。
あったかい白い箱を渡された。中を開けると、普通のから揚げ、骨付きのから揚げが箱いっぱいに詰まっている。
これで300円は安いな。
それでは、また。
ちょっ、ちょっと待ってくれ。あんたは誰なんだ、ここはどこなんだ。
あー、すみませんね。そういうの答えたらだめなんすよ。
そういうと配達員の青年は、空気に溶けるようにして消えていった。
から揚げは旨かった、みんなで食べた。
さてさて。
では、素材確定ガチャ!
ガタンッ
UC『人魚のミイラ』
人魚。上半身が人、下半身が魚で構成される空想上の生き物。そのほとんどが女性であり、マーメイド、セイレーン、ローレライなど多くの名で呼ばれる。
世界中にその伝説は残っており、歌で魅了し人を海に連れ去る、人魚の血肉には不死の効果があるなど多くの物騒な伝説がある中で人間との恋に落ちたなどの感動的なエピソードも存在する。
そしてミイラ、死体が人工的か自然かは問わず乾燥して長い間原型をとどめている人の死体。
エジプトのミイラが有名だが、アルゼンチンのインカ帝国跡でも見つかっており、日本の即身仏もミイラの一種である。
出現したのは、木の箱だった。持ち上げてみると中に何かが入っていることがわかる。
…鑑定
●人魚のミイラ。
人魚が砂浜に打ち上げられ、そのまま乾燥し餓死したサメの人魚。それを発見した人間が不憫に思い、箱の中に入れて埋葬し土に埋めた。それがミイラ化したもの。夢は自分の歌でみんなを笑顔にすることだった。
…埋めよう。ショッピングモールの花壇スペースの青薔薇を移設して、簡単だが墓をつくろう。
俺は土を素手で掘り出し、スペースを確保しようとする。
すると俺がガチャを回すのを見ていた首無しが俺に話しかけてきた。
…何だ?尿路結石の時みたいに貸さないぞ。
いえいえ、そのようなことは。先ほどのシステムメッセージ、私も確認しました。そして救いたいと考えたのです。
救いたい?
ええ。私に任せてください、彼女を救ってあげましょう。
俺の目には嘘をついているようには見えない。本当に心を痛めていて、心の底からミイラのことを思っているように感じる。
…わかった。お前に任せる。
俺は首無しに箱を渡す。
何をする気だ?
まあ見ててください。
すると首無しは、一言唱えたのだ。
『蘇りなさい』
どこからか発生した黒い霧が徐々に集まり、すぐに濃密になり箱の周りを覆い尽くす。
そして、木の箱が開いた。紫の瞳、病的に白い肌の人魚の姿だ。
人魚は、どういう原理なのか宙に浮かび静かに空気を吸い込むかのように、深呼吸をする。その動きは、優美で美しかった。
その一方で、人魚の目は不気味なほどに静かで、冷たい視線を放っていた。
人魚のアンデッド、完成です。
どうです?驚きましたか?これで彼女の夢を叶えることができます。
いやさぁ、確かに任せたのは俺だけどさぁ。
せめて一言言おうよ!馬鹿がぁ!死者の尊厳を侮辱するんじゃねえ!
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