第7話 幼馴染じゃなくてお嫁さんって呼んでください

「ふう……やっと終わりましたね」

「ああ……おつかれ」


 俺の部屋を掃除してから、トリーシャの荷物を部屋に運んだ。

 2人ですごく頑張ったから、かなり疲れた。


「アルくんのお部屋が、予想以上に汚なかったせいですよ」


 ピンっと、トリーシャにデコピンされる。


「いてっ!」

「これからはちゃんとお掃除しましょうね」


 9歳も年下の女の子に、子ども扱いされてる。

 これじゃあ、どっちが保護者かわからないじゃないか。


「錬金術師のお仕事、すごく大変なんですね。お掃除もロクにできないくらい……」

「まあな。今は忙しい時期から」


 最近、新しい迷宮が王都の近くで発見された。

 そのせいで冒険者ギルドから、大量のポーションの発注がかかった。

 商会としては儲けるチャンスだが、肝心のポーション作る錬金術師が足りない。

 仕事は増えたのに人は増えないから、俺もイスミ先生もてんてこ舞いだ。


「アルくんが錬金術に一生懸命打ち込むところ、あたしは好きですよ」

「え、す、好き?」

「動揺しすぎです。人として好きって意味です」

 

 男として好き……なわけないか。

 だってトリーシャとは兄妹みたいなもの。

 年下の幼馴染の女の子と、年上のお兄ちゃん。

 そんな感じが一番似合ってる。


「でも……たまには錬金術だけじゃなくて、あたしのことも見てくださいね」

「うん。トリーシャは俺の大事な幼馴染だ」

「むぅ……幼馴染じゃなくて、お嫁さんって言ってほしいのです」


 ジト目で俺を見つめるトリーシャ。

 うん。かわいすぎる。目に入れても痛くないとはまさにこのことだ。


——ぐぅううううううう!


 トリーシャのお腹が鳴った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る