第6話 サプライズ バラ風呂



俺は宿に戻り、部屋のランクを上げて貰い…部屋数も2つにして貰った。


恐らく、ガイア達が帰って来るにはまだまだ時間が掛かる。


二つの部屋の風呂の湯を沸かし、マリア達のお風呂の湯舟には香りの良い香油を垂らしてバラの花びらを湯舟に散りばめた。


そして、料理だ。


高級な鴨の肉を使ったソテーを中心にしたコース料理を作った。


この世界、前の世界と肉のランクが違う。


まだ牛や豚の品種改良が出来ていないせいか、基本的に牛の肉が堅い。


その為『鳥>豚>牛』という感じのランクになる。


何が言いたいのかと言えば『鳥』が高級肉扱いになるんだ。


他にも魔物の肉もあるが高級肉といえば『鳥』だ。


これで第一段階の準備は終わった。


後はガイア達が帰って来るのを待つばかりだ。


◆◆◆


「ふ~疲れた、疲れた…勇者パーティも楽じゃないな」


「私は回復役だから、直接戦わないけど、回復魔法を連発で精神的には疲れたわ」


「私も魔法を使いすぎて、同じ~」


「私も流石に疲れたな」


今日、ガイア達が狩っていたのはオークだ。


敵としては今のガイア達なら余裕だが、相当な数だと聞いていた。


他の仕事に直すと『雑用を淡々とこなす』そんな感じだったのだろう。


まぁ疲れるよな。


俺は宿屋の前で待っていた。


「お帰り~、部屋をグレードアップして2部屋借りたんだ」


「お前、なに勝手な事しているんだよ! 俺達の資金は国から出ているんだぞ、そんな金額問題になるだろう」


「差額は俺が出すから安心して良いよ…俺やガイアが301でマリア達が304、風呂を沸かして置いたからまずは浸かったらどうかな? 少し休んだら301に来て欲しい、ご飯を作って置いたから」


「おい、良いのかよ?」


「なんだか悪いね」


「本当に良いの?」


「なんだか悪いね!」


「まぁ、俺はそこそこは稼いでいるから大丈夫だ! どんと任せて置いてくれ」


俺は胸をドンと叩いた。


◆◆◆


俺が紅茶を飲んでいるとマリア達に部屋に呼ばれた。


「お風呂に花びらが浮かんでいるんだけど、これなに」


「花なんて浮かべて入りにくいじゃん」


「なにしているんだよ!」


マリアにリタ、エルザはこの意味が解らないのか?


良く考えたら、職業(ジョブ)こそは凄いが、元が村娘で旅から旅…知らなくても可笑しく無いな。


「え~とですね、マリア様にリタ様、エルザ様これはバラ風呂って言いまして美容に良いお風呂なんです。リラックス効果や美肌効果があると言われていて貴族の方にも人気があるんです。 三人とも凄い美人だから、少しは美容に気を使ってもよいのかなぁ~って駄目でした?」


「へぇ~これ貴族が入る様なお風呂なんだ!そう言われてみれば豪華ね」


「確かに言われてみれば、良い香りだね」


「私はこう言うのに疎いが…うんゴージャスだな。ありがとうリヒト」


「どう致しまして…それでは失礼します」


これで良い筈だよな。


「ちょっと待ちなさいよ!」


マリアがこちらを睨んできた。

不味い、俺は何かミスったのか?


「リヒト、そのマリア様って言うの止めてくれない? 気持ち悪いよ!」


「うんうん、流石にリタ様は無いよ?」


「私もエルザ様は無いな…リヒトにそう呼ばれるのはこそばゆい」


まぁ普通に考えたらそうだよな。


幼馴染がいきなり『様』つけで呼びだしたら…余り嬉しくないな。


だが、此処で簡単にそうですか?と言ったら軽く思われる。


「聖女様に賢者様、剣聖様…これで良いですか?」


まぁこれも望んでないだろうな。


「リヒト…今迄通りマリアで良いわ」


「あたしもリダで良いよ」


「エルザで」


此処は簡単に受け入れない方が良いだろう…


「いえ、俺は幼馴染だからと甘えていました。ガイア様は勇者、マリア様は聖女、リダ様は賢者、そしてエルザ様は剣聖、それに対して俺は魔法剣士。四職は尊敬される存在だし、実際に皆は人気者で凄く人気があるんだ…三人の人気は歌姫や有名な女優すら超える位だし、美人で人気者の三人と気楽に話せる、これはきっと三人のファンからしたら羨ましくて仕方が無い待遇だと…」


「もう、気にしなくてよいわ、幾ら私達が美少女で人気者でも幼馴染でしょう? 呼びつけで呼ぶ権限位あげるわ」


「うんうん…流石に幼馴染に『様』はつけて欲しく無いから普通にリダで良いよ」


「私も気持ち悪いからエルザで…」


「ですが…」


「はぁ~『ですが』じゃないわ…仕方ないわね。これは聖女として命令するわ」


「そうだね、お願いだよ」


「頼むよ、なぁ本当にムズムズするんだ」


ここらが潮時だな。


「皆がそう言うなら…マリア、リダ、エルザ…これで良い?」


「うん、その方が良いわよ」


「そうだね、マリアの言う通りだよ」


「その方が良い」


「そう? 冷めちゃうといけないからバラ風呂…楽しんでくれ。今日も頑張ってご馳走を作ったから、お風呂を楽しんだ後、少し休んだら俺達の部屋に来てくれ…そうだ果実水もそこに冷やした物があるからお風呂を楽しんだ後に飲むと良いよ」


「そう、ありがとうねリヒト」


「うんうん、凄く良い匂い」


「確かに言われてみれば、肌に良さそうだ」


幼馴染だからか、男と見られてないのか服を脱ぎ始めた。


「それじゃあ」


紳士な俺はそれを見ないように三人の部屋を後にした。





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