前回離婚された俺は回帰後に……

リフレイト

後悔といいわけ

 妻が出て行った。その後の人生は散々だった。出世してモテモテだったのが、一転して降格し、あれほど俺に言い寄って来ていた女たちも去って行った。

 ある日、彼女にそっくりな小さな子を抱き上げる男と、幸せそうに家庭を築いている姿を偶然見た。

 信じられなくて泥酔した次の日、彼女が出て行った日から8年も前に戻っていた。

 

 回帰前、彼女の献身と愛情に胡坐をかき、何があっても俺から離れないと高をくくっていた。


「……あまりにも俺が憐れだと、神がやり直しのチャンスをくれたのか?」


 副騎士団長も逃げられ寸前からの大逆転で、奥さんと仲良くなった。同僚は、遠距離だったにも拘らず、奥さん一筋を貫いていて、家に帰ってからすぐに子供が出来ていた。


 俺はというと、ちょっとした遊びの浮気を繰り返していた。男なら誰でもする遊びで離婚した彼女を、最初は恨みもしたが、今度の人生は、彼女だけを大切にして愛そうと思う。


「お断りします」

「は……?」


 固く決意をして、早速プロポーズしに行った。若い頃の彼女は、とても愛らしく、前の俺は、なんで浮気なんかしたのか、信じられないほど。


 だが、差し出した彼女の好きな赤いチューリップの花束は、彼女の腕に収まる事はない。


 以前は、満面の笑顔で、頬を染めながら花束を抱きしめて、プロポーズに応えてくれたのに。


 一体、どうした事かと疑問に思っていると、彼女がこう言った。


「あなたと結婚したら、長い間辛くて悲しい思いをするんだもの。折角やり直せるんだから、私ひとりを愛してくれる人と、最初っから結婚したいわ。ああ、あなたには何の事かわからないわよね? 大丈夫、あなたは美人の恋人たちがいっぱいできるから安心して。お幸せにね」


 なんと、回帰前の記憶を持っていたのは俺だけではなかった。いいわけすら出来なかった俺は、彼女が回帰前に夫になった男の元へ駆け寄るのを呆然と見つめたのであった。

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