いいわけ
綴。
第1話 いいわけ
だってあいつがあんな目で俺を見てくるからさ。
俺もちょっと見ていただけだし。
いつも近くにいたから、パシりみたいに使っていただけだし。
俺が何かを頼んだら、「うん!」って嬉しそうな顔をして走って行くから。
お前を喜ばせてやっただけだし。
ふたりだけで花火をしたのも、みんなで遊んだ時の残りがたまたまあったからだし。
お前が何も言わないままでいたから、次の約束をしないで別れただけだし。
本当はお前が来るのを知っていたけど、俺には関係ないんだと思ってたし。
だけど、本当は吸い寄せられていたんだ。
お前のその澄んだ瞳に。
いつもお前が近くにいるのが当たり前なんだけど、何を話せばいいのかわからなかったんだ。
だから俺はいつもお前に「買って来い!」って言い方しかできなかったんだ。
すぐにお前が嬉しそうに返事をして走って行く姿を見るのが気に入っていたんだ。時々寝癖がついているのを見つけて、ひとりで笑顔になっていたんだ。
残っていた花火は、本当は俺がバレないようにこっそりと隠したんだ。みんなでいたから、隠すのに苦労したんだ。
次の約束もどうやってすればいいのかわからなかったんだ。俺は勇気がなくて声をかけれなかったんだ。
お前がその扉の向こうに居ることを知っていたから、俺の手は小さく震えていたんだ。
俺はこの気持ちを受け入れるのに少し時間がかかってしまったんだ。
お前は弱いくせに、何かあると俺を守ろうとするだろ。
指をちょっと切っただけなのに、大袈裟に手当てをしてくれるだろ。
お前が急に俺にキスをしてきた時は、驚いてはねのけてしまったけど。
初めてだったから恥ずかしかっただけなんだ。
この気持ちが恋だと気づいて俺はどうすればいいのかわからなかっただけなんだ。
だからお前が追いかけて捕まえてくれた時、俺は本当に嬉しかったんだ。
いいわけばかりして逃げてゴメンな。
陽介、俺はお前の事が好きなんだ。
いいわけ 綴。 @HOO-MII
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます