幸運と悪運

@curisutofa

幸運と悪運

『成る程な。天から根元魔法の素質を授かりはしたが、魔法使マーギアーいとして根元魔法の扱い方を学ぶ環境に生まれ育たなかったから、先祖が遺した魔道具である邪眼べーザー・ブリックの指輪による催眠効果を悪用して、詐欺をはたらいていた訳か』


街の治安維持を担う警備隊の取調室で、隊長さんが身柄を拘束して邪眼べーザー・ブリックの指輪を取り上げた、詐欺犯から事情聴取を行っているけれど。


『天から根元魔法の素質を授かったからといって、全員が女魔法使マーギエリンいや魔法使マーギアーいになれる訳ではありません隊長。生まれ持って素質を伸ばせる教育環境を、御両親から与えてもらえる一握りの恵まれた幸運な人達だけが、根元魔法を扱えるようになります』


ボクはひいお爺さんが魔法使マーギアーいだったけれど、ひいお爺さんが始めた商売をお爺さんとお父さんが引き継いで、街でも豪商として知られるお金持ちなのは事実ではあるけれど…。


『少し不愉快かな』


魔道具を悪用していた詐欺犯の身柄を拘束する際に、警備隊に協力した学園で根元魔法を学ぶ男子学生の魔法使マーギアーいでもあるボクだけれど、泣き声といいわけを並び立てる詐欺犯に対して。


『ボクの家は確かにお金持ちだから、学園での学費は全額お父さんに出してもらっているけれど、共に学ぶ学友の中には、学費だけで無く生活費も全額自分で稼いでいる人が居るよ』


ボクの話しに隊長さんが頷いて。


金髪ブロンデス・ハールの彼の事だな。学園で学ぶ為に故郷から街への移動中に路銀を盗まれて行き倒れかけたが、何とか街まで辿り着くと、博士ドクトルに身元保証人となってもらい金融機関から学費と生活費の融資を受けて、学生と傭兵ゼルドナーの生活を両立させている苦学生だからな』


詐欺犯のいいわけを聞いていると、誇り高い生き方をしているボクの大切な金髪ブロンデス・ハールの彼を否定されたような不愉快さを覚えるから、話しておく事にするけれど。


邪眼べーザー・ブリックの指輪を悪用して稼いだお金を使い、毎晩街の娼館フロイデン・ハオスから女の人と男の子達を呼んで大騒ぎをしていたけれど。ボクの大切な金髪ブロンデス・ハールの彼は、金融機関から受けた融資の返済が滞れば、娼館フロイデン・ハオスで男娼として働くと、自らの身体を担保にして学費と生活費を捻出したんだよ。貴方も同じ事をして、学園で根元魔法を学ぶ為の学費を調達する事は出来たんじゃないかな?』


ボクの話しを聞いた詐欺犯は、自らを恥じたのか俯いて黙ってしまったので隊長さんが。


『天から根元魔法の素質を授かったのは間違い無く幸運だったが、自らの境遇に負けて正しい扱い方を選べなかったようだが、これからやり直す事は出来るぞ。刑期を勤め上げるまでに、今後の人生の生き方について考える時間はあるからな』


『…はい。隊長。真剣に考えてみます』


詐欺犯の人は刑期終了後に第二の人生を始める機会を得たから、悪運が強い人なのだと思うな。ボクの大切な金髪ブロンデス・ハールの彼だったら、容赦無く命を奪っていた可能性が高いから。

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