第106話油断は禁物です
リアの状態が落ち着いたコトで、リアの希望もあって、ルリとグレンは肩を竦めて、このまま外周道路の探検を続行するコトにした。
ちなみに、龍帝陛下の第三の瞳を包み込んで封印していた、封麟翼〔ふうりんよく〕の羽毛は、ユナがちゃんと回収していたりする。
外周道路の探検を続行するにあたって、リアはナナと子ウクダちゃん達に、レオとグリを一時的に姿見の中から出して、ご飯を食べさせていた。
当然、時空神様にもお供えしたのは言うまでもない。
ただし、色々と自分が知って良いの?的なモノを、盛りだくさんくらった後なので、呑気に料理をする気分にはなれなかったリアは、出来合いですませていた。
勿論、こういう時の為にと、腕輪型アイテムボックスの中にしまった料理である。
だから、調理してすぐにしまったモノばかりなので、出来たてほやほやなモノばかりである。
その料理したモノ中から、適当にチョイスしたモノを並べたのは言うまでもない。
ちなみに、リア達も休憩を兼ねながら、軽く食べていた。
あんまり、バッチリと食べちゃうと、動きが鈍くなるものねぇ
胃が重いと、動くのがイヤになっちゃうもの
勿論、ルリ達には食べたいだけ食べて良いって言って、多めに出したけどね
そこはそれ、ちゃんと自分の適量が判っているようだからと、リアは放置した。
ちなみに、リアが多めに出したので、残った料理は、ユナのマジックポーチへとしまわれていた。
リアが眠って居る時などに、小腹が空いたら何かを摘まみたいと、ルリが言ったからである。
リアは、馬車の御者台に登りながら、ついつい自分の足元を見る。
それにしても、改めて、この精霊のブーツって、マジもんで優れモノよねぇ
嗚呼、本当に、替えが欲しいなぁ~………
この精霊のブーツのお陰で、こんな大墫体型でも、身動きが楽なんだもの
そりゃ~……私は、動ける、デ……ゲフンゲフン……ぽっちゃりですけどね
そうじゃなかったら、サンドウルフに襲われた時にあっさりと死んでいたわ
でも…あの時は本気で死に物狂いだったもの………
火事場のなんとやら……で、助かったのよねぇ
そうじゃなきゃ、蟻地獄がいる漏斗状の巣になんで飛び込めなかった
それに、あの時は必死で、恐怖感マックスだったからなんか、感覚が変だったし
それもこれも、浄化を強制する魔道具が外されていたから出来たコトだけどね
私って、どれだけ色々な意味で拘束されていたのかしらねぇ……
今更だけど、お花畑なエイダン王太子に感謝かしらね
まぁ、恨み辛みの感情がまるっきり無いとは言えないけれど
大切な家族を手に入れて、どうでもよくなったのも確かなのよねぇ
下手に復讐しようなんて突いて、今の幸せをぶち壊すなんてする気ないし
ここは、ひたすら逃げの一手よねぇ
まぁ~…知っちゃったからには、全部見ないふりなんて出来ないのも本当だしね
だから、出来るだけ龍帝陛下から奪われたモノは回収するわよ
だって、人族に限らず、手に負えないモノを持つのは危険だから………
回収するだけして、お腹に眠る龍帝……もとい、神龍様に、どうするか聞きたいし
あげるって言われた抜け殻とか、どうしたら良いか聞きたいしね
ただ、龍帝陛下が始祖神様の最初の御子だって言うのは驚いたわぁ
そういう意味で言うなら、時空神様は始祖神様でもあって、創造主でもあるからね
この世界の生きとし生けるモノは、みんな時空神様の御子ではあるんだけどね
ただ、前世の記憶を持つ私なんて、ある意味で異物だろうし
ラノベ風な展開を考えると、時空震現象とか、時空シンクホールありそうだもんね
それが、異世界転移なのか? 異世界転生なのか? わからないけど
私のイメージとしては………
時空震現象は、何らかの理由で空間の亀裂が出来て、ソコに人や物が落ちるかなぁ?
時空シンクホールは、漏斗状の空間の穴ってイメージで、こっちは召喚で転移かな?
そうやって、異物が紛れたコトで、一番変質しやすい人族が強い影響受けてそうだし
陽の精霊王の神子が変質した原因だって、案外そういうモノが関わってそうだし
そう言えば、書物の中に、召喚について記載されていたのあった気がする………
やっぱり、この世界では、異世界召喚とかしているのかなぁ?
異世界人の知識とかチートをあてにして、空間に穴を開けて引き摺り落としているのかな?
基本的に、重なった空間階層に穴を開けて、下から上の人やモノを引っ張るんだろうしねぇ
そんなコトを考えつつ、リアは外周道路から見える壁やその間からちょこちょこっと見える建物などを観察していた。
グレンの指示で馬車はゆっくりと進むので、シャドウハウンド達は周囲を警戒しながら付いて来ていた。
しばらくは、何の変哲もない時間が過ぎ、全員が『今日はもう何もないかなぁ?』なんて気持ちで油断していた時に、ソレは起こった。
………ギャンッ………
グルルル……ガァァァァァァァ~………
どう聞いても自分達に付いて来て、周囲を警戒していたシャドウハウンドの鳴き声が響いた。
直後に、もっと太く重い唸り声が響く。
えっ? 今の今まで居なかったのに?
その瞬間、リアは馬車の屋根に寝そべっていたルリへと視線を向けるて名前を呼ぶ。
「ルリ?」
ルリは、リアの視線と問いかけを含む声に気付いて言う。
「突然現れたよ……アレは、たぶん空間転移だね」
「空間転移?」
グレンが首を傾げる。
「ああ…たまたま、そっち見ていたからね……空間からポンッと出で来たよ」
「ポンッと出て来た?」
えっとぉ?という表情のリアに、ルリは自分が知っている現象のひとつを口にする。
「……たまにだけど、あるんだよねぇ……『ダンジョン』内でのランダム転移ってヤツ……で、本当に極稀にだけど、そのランダム転移に魔物が巻き込まれるコトがあるんだよ」
そう言いながら、ルリがのっそりと屋根から降りて、一瞬で本体になり、横殴りの張り手を喰らわせて、熊型らしい魔獣を張り飛ばした。
そして、ルリの怒りに満ちた声が響く。
ったく…リアが可愛がっているシャドウハウンドを喰らおうなんて許せないね
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