第100話ここはもう、言っちゃいましょう
しばし悩んだセシリアは、無意識に耳飾りにふれてハッとする。
そうよ、こういう時は、やっぱり鑑定すれば良いのよ
ただ、この鑑定魔道具が何処まで、見通すコトができるかなのよね
そんなコトを考えつつも、手っ取り早く情報を手に入れるには鑑定しか無いと、ピアス型の鑑定魔道具へと魔力を込める。
ピロ~ンッ………ピッピッピ………
と、聞きなれた音が耳元に小さく響き、フワッと目前に内容が浮かび上がる。
えぇ~とぉ~……なになに?
龍帝陛下の第三の瞳
×××に抉りだされ、封印されたモノ
使い方(触媒になるモノ)によっては、時間停止できる
そのあまりの予想通りの鑑定結果に、セシリアは思わず膝をついてしまう。
あははは………やっぱり、予想通りのモノなんですねぇ……はぁ~…
文字化けして読めないところあるけど、誰かに抉りだされたようですね
と、なると、龍帝陛下をあんな惨い状態にして封印していたモノでしょうねぇ
龍帝陛下を立体魔法陣の中に封印して、魔力とかを搾取していたんだから
五体満足だと、封印を破られるから、力の源を奪ったってコトかしらねぇ?
嗚呼…こんなコトなら、オープニングからエンディングまでちゃんとやっておけばよかったわ
セシリアは、前世の日常を思い出す。
休日になると、ちょくちょく遊びに来ていた妹が『こっからが、乗り越えられないのぉ~………』と叫んでは、何度か『お姉ちゃんやってぇ~……』って、スマホを押し付けられていたのだ。
そう言えば、私が借りていたところって、電波が良いとか言っていたのよねぇ
お陰で、休日には連泊していったっけ……もう、名前も思い出せないのになぁ
それでも、この世界の両親の記憶がほぼ無いコト考えると、懐かしいのよねぇ
じゃなくて、今は前世を振り返る時じゃないわ
取り敢えず、蕾みの中から転がり出て来たのは龍帝陛下の第三の瞳だったってコトね
あとは、硬質化してキラキラしているグラデーション綺麗な、元、花びらね
そう思って、セシリアはルリが引っぺがした花びらを見る。
ピロ~ンッ………ピッピッピ………
と、聞きなれた音が微かに耳元で響く。
封麟翼〔ふうりんよく〕の羽毛
強大な魔力を秘めたモノを封印し、純粋な魔力を抽出する特性がある。
包むモノにもよるが、最低七枚は必要。
翼を持つ麒麟種でも極めて珍しい特性を持つ雛からしか採取できない
雛から幼体へと変わる時に、翼の根元付近から抜け落ちるモノ
ただし、抜け落ちると特質が失われる為、生きた雛から採取しないと使えない
文字化けもなく、丁寧な鑑定結果を見て、セシリアは思わずグラリッと身体が揺れるのを感じた。
えぇぇぇぇ~………もしかして、麒麟種とかいう種族の翼持ちの、生きた雛からむしり取ったモノなのぉ
なんて、非道なっ
いや、龍帝陛下をあんな残酷な立体多重魔法陣の中に封じて、第三の瞳を抉るようなコトをするモノなら、相手が雛でも平気でそんな残酷なコトするわね
目眩を感じて倒れかけたセシリアを、いち早くソレに気付いたグレンが抱きとめる。
「大丈夫か、リア?」
抱きとめられたコトを恥ずかしく思う余裕すら無いセシリアは、微かに頷いて言う。
「うん…ありがとう…グレン……」
セシリアは、抱きとめてくれた腕に縋り、なんとか自力で大きくよろめいた身体を立て直して、軽く首を振る。
「んで、そんなショックを受けるなんて…何が見えたんだい、リア」
ルリの言葉に、セシリアはゆっくりと深呼吸をしてから答える。
「そっちの包まれていたソレは、龍帝陛下の第三の瞳で、ソレを包んでいた蕾みの花びらみたいなのは、封麟翼〔ふうりんよく〕の羽毛って呼ばれる、翼のある麒麟種の中でも特種体の生きた雛から採取して作られたモノみたい」
はぁ~…もう、ここは思いっ切ってグレンやルリに言ってしまおう
私だけで対処できるコトじゃないし…絶対に、巻き込むコトになるもの
だからってもう、ルリやグレンやユナの居ない生活なんて考えられないし
グリやレオにナナに子ウクダちゃん達という家族もできたし
軍馬達だって良い子で可愛いし、このシャドウハウンド達だって飼えるなら飼いた
もう、こうなったら一蓮托生ってコトで、私の前世以外は話しておこう
そう言ったセシリアは、溜め息を吐いて、覚悟を決めて言う。
勿論、ルリにしろグレンにしろ、従魔契約や隷属契約がなされていて、安全な相手という思いがあるゆえの決断だった。
「そして、私のお腹から出た手は、その龍帝陛下のモノよ……御霊移しして、今は私のお腹の中にしまっているの……きっと、自分由来ノモノだと感知して、一時的に目覚めて取り返したんだと思うわ」
そんなセシリアに、グレンはその身体を抱き込むようにしたまま、頭を撫でて言う。
「了解……セシリアの腹部から出現した強大な力を持った手は、その龍帝陛下の手ってコトだな」
「うん」
安堵を覚えつつ頷けば、ルリが呆れを含んだ言葉を口にする。
「なんだって、そんなところに入れているんだい?」
これなら言っても平気そうだと、改めて実感したセシリアは、大きく息を吸って吐いてをしてから、端的に事実を口にする。
「…なんでそうなったかと言えばなんだけどね………つい最近? シルーク王国であったように、卒業記念パーティーの最中に、突然婚約破棄されたのよ」
「婚約していたのか? それで、婚約破棄されたんだな」
「うん……それで、国外追放を言い渡されて、砂漠に捨てられたからなのよ……そしたら流砂にのまれて、地下にある古代遺跡みたいなところに行きついたの……」
なんとなくその時の様子が目に見えるようで、ルリは肩を竦める。
「なるほどねぇ…それで、その古代遺跡の中を彷徨ったってことかい?」
ルリの言葉に、セシリアは頷く。
「うん……出口を探してウロウロしてたら、もの凄い残酷な姿で、封印されて魔力とか、色々なモノを搾取されていた龍帝陛下に出合ったのよ………私も、国土や国民の浄化というモノを、無理矢理背負わされていたから………」
セシリアが、母国で酷い扱いを受けていたコトを間接的に話すのを聞きながら、ルリとグレンは何とも言えない表情になる。
「そうか、大変だったなリア」
ありきたりな言葉しか言えないグレンは、無意識にギュッとコブシを握りしめ、唇を噛むが、そんなコトに気付かないセシリアは、言葉を続ける。
「その姿を見たら、なんか他人事に思えなくって、ついつい、龍帝陛下の御霊移しをしちゃったのよ………だって、あのまま魂がすり減って、砕け散るなんて許せなかったんだもん……」
その優しさの恩恵で、今の自分達がいるコトをルリとグレンは知る。
そう、セシリアに買い取られるまで、極限にまで追い詰められていた自分達を、なんの見返りも求めずに買い取って、癒してくれた優しさが生来のモノであると知る。
「あとね、私の本当の名前は、セシリアって名前なんだけどね………どうせ、捨てられたんだから、今までのすべては捨てて、新しい人生を生きるってコトで、リアに改名したの………だから、これからもリアって呼んでね」
そんなセシリアの言葉、ルリとグレンは目と目で通じ合ってしまう。
はぁ~…リアだねぇ~……
うん、リアだからなぁ~…
アタシ達がしっかりとリアを守らないとねぇ……
ああ、リアはあぶなっかしくて、目が離せないよ
同情と共感で、もの凄く危ないコトを平気でするセシリアに、ルリとグレンは首をユルユルと振る。
ちなみに、ユナは魔石に頬摺りしたままうっとりしていたままだった。
シャドウハウンド達は、大丈夫そうだと、待機の姿勢になって周囲を警戒していた。
勿論、軍馬達も耳をパタパタさせながら、同じように周囲を警戒していたのは確かなコトだった。
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