第97話やっぱり通行許可証は、古代遺跡のモノでした
馬車に乗り込み、軍馬達にゆぅ~くりと歩くに近い速度で進んだ先に、外周道路と仮名として呼ぶ道のような、大きな石畳で作られた道の左右にある柱と柱の間に、壁のようなモノが出現していた。
おかげで、その先に進むコトが出来ずに立往生する。
あははは………やっぱり、あの音ってそういうのだったみたいね
でも、それらしい通行許可証があるから、何処かにかざすかすれば開くんじゃないかな?
どうする? 引き返す? という視線を交わすグレンとルリに向かって、セシリアは先ほど魔法の革袋の中から取り出したモノのひとつである、通行許可証を軽く振って持って言う。
「ルリぃ~…ほら、コレコレ……この通行許可証ってヤツ……コレが有れば通れるんじゃないかな?」
セシリアの言葉に、軍馬達の手綱を握っているグレンが、セシリアの振り回すカード型の通行許可証を覗き込む。
「なんか……俺が知っているモノと違うんだけど……」
グレンの言葉に、セシリアはちょっと小首を傾げて言う。
「ああ…それは…たぶんだけど…この古代遺跡に住んでいた錬金術師が作ったモノだからじゃない………古代の方が、文明文化が進んでいた可能性なんておおいにあるんだからさ……だから、アーティファクトなんてモンが存在しているんだし………」
セシリアの言葉に、グレンはなるほどと頷く。
そんな会話の間に、馬車の屋根上から降りたルリが、セシリアの手からカード型の通行許可証をヒョイッと手に取る。
たぶん、前世にあった自動改札のアレに近いんじゃないかな?
通行許可証を、所定の場所にかざすと閉まった扉が開くアレよ
そう言えば、電車…っていうと、思い出すなぁ……
財布を落としても、定期は落とすなっていう格言
私が通学に使っていた電車の線って、やたらと利権が絡み込んでいたのよねぇ
そのセイで、他の電車よりも遥かに区間金額がやたらめったら高かったからねぇ
お財布に入っている金額よりも、定期の方が高いから……
だから、そんな格言できたのよねぇ………じゃないっ…それは前世の話しよ
今は、この先に進む方法ね……たぶん、何処かにかざせば扉も開くはずよ
セシリアの手から通行許可証を取り上げて、矯めつ眇めつしているルリに、セシリアは言う。
「そのカード型の通行許可証、どちらかの柱にかざして見てくれる? かざす場所の目安は、魔石みたいなモノが嵌め込んである場所だと思うのよねぇ……そういう場所を探して、取り敢えずかざしてみてくれる?」
セシリアがそう言えば、その手から取り上げて、危険はないモノかと確認していたルリが通行許可証を手に頷く。
「了解……魔石のようなモノが嵌め込まれていたら、そこにかざせばイイんだね」
「うん…よろしく……危ないコトはないと思うけど、充分に気を付けてね」
「はいはい……んじゃ、ちょっくら行ってくるよ」
そう言って、ルリは通行許可証を手に、セシリアが指示したように柱へと向かう。
まず最初に左側の柱の側に到着したルリは、柱を上から下まで見て小首を傾げ、胸元ぐらいの高さに、通行許可証をかざすような動作をする………と。
『…ジィーー……通行許可証……ヲ……確認……シマシタ………オ通リクダサイ』
という、音声が響いた。
そのいかにも、コンピューター音的な、応答に思わずクスッと笑ってしまう。
うわぁ~……もしかして、休眠から復帰して、やっと稼働を始めたのかな?
なんとも滑らかさのない……いかにもな……ブツブツの回答音が笑いを誘うわ。
電池切れ間際なんかだと、こんな感じだったから……
きっと……これは、この遺跡を制御する魔道具が、停止から起動したセイでしょうね
そう、起動したてで、まだまだ魔力が足りないんじゃないかな?
確か、ラノベとかの設定にたまぁ~にだけど、あったわよねぇ~…こういうの………
きっと、この古代遺跡を含んだ此処の空間全てが時間停止していたのかもしれないわね
通行許可の音声と同時に、左右の柱の中に壁を作って居たモノが消えると、その向こう側には、同じ外周道路が奥へまでずっと続いていた。
「すごぉ~い……リアお姉ちゃんって……」
と、やたらと瞳をキラキラさせているユナに、セシリアは微苦笑を浮かべる。
いや、前世の知識があるお陰で、なんとなくの回答がわかるだけだからね
そんなキラキラの瞳で見られても、何も出ませんよ
なんて思っているうちに、ルリが戻って来て、馬車の屋根の上へとヒョイッと乗ってしまう。
そんなルリに、セシリアは言う。
「ルリ、次も頼むと思うから、その通行許可証に付いているヒモを、首に付いている従魔証明の首輪にでも付けといてくれる」
本当は、従魔証明の首輪なんて付けさせておきたくないんだけどねぇ~……
今のところ、他の旅人や冒険者に出合ってないから良いけど
もしもの時、私のモノだって証明できないと盗られちゃうのよねぇ
いや、従魔の首輪を付けているルリにしろユナにしろ、強いけどね
奴隷の首輪を嵌めているグレンにしたって、私より確実に強い
けど、もしもを考えると、着けてもらっている状態のが安全なのよねぇ
そんなコトを考えている間に、開いた扉を通り外周道路をゆっくりゆっくりと進んで行く。
通行許可証が、この古代都市のゲートを通過するモノだとわかったので、セシリアは安心して古代遺跡の外壁などに掘り込まれている壁画などを楽しむ。
そして、再びシャドウハウンドが襲って来たので、セシリアは魔法の革袋の中から取り出した犬笛を吹いてみた。
勿論、使い方が分からないので、一応気持ちとして『とまりなさい』という思いを込めて………。
人の耳には聞こえないモノだったが、ルリとユナが可愛い耳をピクピクさせ、軍馬達も耳をパタパタとさせていたので、獣ないし獣人に効くモノだとわかった。
……きゅぅぅぅ~ん……きゅぅぅぅ~ん……くぅ~ん……きゅう~ん……
そして、シャドウハウンド達は、とても情けなく鳴いて、馬車の周りにコロコロと転がり、お腹を見せて尻尾で股間を隠すように丸めていた。
そのお腹を晒す姿に、肋骨ががっつりと見えているコトで、かなり飢えているコトがみてとれて、セシリアは可哀想になる。
そう言えば、あの時にピアス型魔道具の鑑定で見たら、飢餓状態ってあったわね
もしかして、この子達もなのかしら?
いや、最初に襲って来たシャドウハウンドの群れの子達よりも、もっと痩せていない
「ねぇ…ルリぃ~…この子達に、ジャンボモアとか、その前に獲った獲物の内臓とか骨を上げても良いかな? レオやグリ達には、できるだけ新しいモノを食べさせたいし」
と言えば、ルリはケロリっと答える。
「良いんじゃないかい……どうせ、いずれは持てあますほど、あまるのが目に見えているモノだし……アタシ達を襲わないんだったら、そのぐらいの施しをしても………この古代遺跡がちゃんと稼働すれば、魔物が自然と湧き出て来るだろうからね……どうも、この古代遺跡はほんの少し前まで、時間が停止していたようだからね」
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