第2話状況確認をしましょうか
セシリアは現状を認識し、無意識に頷く。
まずは、私を運んでいる者達の確認をしないとね
でもって、何を考えているか?
どんな命令を出されているか?
それと、エイダン王太子に追放宣告されてから、どのぐらい時間が経ったかよね
国の生贄として、澱みや穢れの浄化の器としての私はもう居ない
私に集まっていたモノは無くなり、魔道具を持つ者へと殺到するはず
そのコトに気付くのが、何時かってコトよねぇ………
王も王妃も神官長も、あと20日は帰国しないはずだけど
国に異変があれば、どうしたって戻って来る
まして、転移ができる神官長も一緒にいるんだもの
何時、転移で戻ってくるか………時間との勝負よねぇ
とはいえ、焦っても良いコトはないわ
とりあえず、まずは状況を確認よ
下手に動けば、いくらガタガタと音を立てていても馬車の御者をしている者達に気付かれる可能性があるので、セシリアは双眸を閉じて、耳に意識を集中する。
幼少期から、エイダン王太子が本来学ぶはずの、あらゆる魔法から帝王学までを学習させられたセシリアは、身体強化などもできるようになっていた。
聴覚をより強化し、外での会話を聴き取る。
『なぁ…あの樽のようなお嬢ちゃん…この辺で捨ててかないか?』
『あっ俺もソレに賛成』
『あのお嬢ちゃん…公爵令嬢なんだろ』
『下手に、商業都市の中央楼閣にある遊廓に放り込んだらヤバイって………』
『だが、俺達は頭に売ってこいと命じられた……それも、奴隷として売ったという……契約書を持ちかえれとも命じられている』
『いくら、そうしろって命令されたってさぁ』
『魔獣に襲われたコトにして、捨てようぜ』
『もう、この際だからさぁ……俺達も、あの国捨てて別の国に行こうぜ』
『こんなヤバイ命令されたってコトはさぁ………』
『俺達も切られたってコトだろ………』
『ああ…そんなコト理解ってる…けど……』
『ふふふふ………それならもう手配してあるよぉ~……』
『『『『えっ手配って?』』』』
『招集されたメンツ見てヤバイって思ったんだぁ………』
『ああ、それは俺も思った…過去に頭に睨まれた奴等ばかりだって……』
『うん…だから、俺はみんなの家族を説得し回ったんだ』
『何時の間に?』
『あはは……頭に酒持ってこいって命令された時にね』
『ああ、あの時か………』
『みんなには黙ってたけど、長距離は跳べないけど、転移モドキはできるからさぁ…』
『そんな特技あったのか………』
『ああ…んで、別の門から出でもらって、今頃は国境の検問越えていると思うよ』
そんな会話に、セシリアは嘆息する。
はぁ~…会話からは、時間の経過は判りませんわねぇ………
まぁ…声の数からして、御者台と屋根に居るのは4人か5人ってコトね
それにしても、私の側に見張りとして居ないのは……やっぱり……へこみますわねぇ…
この色彩が不気味だからかしらねぇー……はぁ~……
はぁ~……今の現在地が何処だかわかりませんが、不味いですわね
というか、商業都市の中央楼閣にある遊廓って………
こんな……自分で言うのもなんでが、醜い姿の私を売るの?
流石に、無理でしょ………
売買以前に、引き取りすら無理だと思うのよねぇ………
じゃなくて、現在地は何処になるのかしら?
商業都市で中央に楼閣と遊廓がある都市って言ったら、ロマリス王国よねぇ
あそこって、ゲテ専もあるの?
まぁ…異種族に平気で盛る……変態が……げふんげふん……
じゃなくて、とりあえず、ロマリス王国に向かってるのね
なら、西の門から出たってコトよねぇ……たぶん
確か砂漠を迂回しないとダメなのよねぇー……
サンドワームにサントアントとサンドアリゲーター
それに、サンドスコーピオンもいるわよねぇ………
あと忘れちゃいけないのが、蟻地獄よね
正体不明の流砂の中に潜む魔物って言われるアレ
流砂の中に、漏斗状態の場所が有ったら危険なのよねぇ
確か、1割ぐらいの確率で居るって何かの報告書で読んだわ
あれは、冒険者ギルドからの報告書だったかしら?
ロマリス王国に向かう砂漠にそんな場所が有るって………
はぁ~……やんなっちゃうわねぇ……捨てる以前に、襲われるわよ
最近、盗賊よりも魔物の被害増えているって報告上がって来ていたし
討伐の為に、騎士団の派遣要請が何日か前に上がってたはずなのよねぇ
サンドリザードにサンドスネークも居るし………
それも、毒持ちが多いのよねぇ………
などと考えている間に、馬車の御者台との間の扉が開き、3人の男が馬車内に飛び込んできた。
1人がセシリアの側を駆け抜けて、バンッと後部の扉を開く。
同時に飛び込んで来た男2人が、ガシッとセシリアの手首と足首をそれぞれ掴む。
えっ?……ええっ!……なにっ?…なにっ?…ひえぇぇっ…………
なにごとぉ~っ?……って?………えぇぇぇ~………
驚きすぎて猫だま状態のセシリアは身動くコトもできない。
一方、男達は無言でびっくりしているセシリアの手足を鷲掴みにして、開かれた後部の扉から、無造作にポイッと捨てるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます