第4話 水2

夏谷は懐中電灯を持ちキョロキョロと辺りを警戒しながら鳥居付近まできた。


傍から見たら完全に不審者だろう。



ポツンと立つ夏谷の住むアパート以外、この場所は神社と動いているかわからない自販機と街灯、そしてちょっと離れた所に倉庫事務所と守衛所があるだけだ。


風もない。木々も揺らめかない。

思ったよりも肌寒くない。


ただ、鳥居と闇で見えぬ鳥居の先の階段が薄っすら目の前にある。


肝試しとは仲間うちで騒ぐもので、夏谷はただ好奇心で音の正体を少し知りたくて音がする神社を見たいだけだ。



その時

階段の遥か上の方から

笑い声が聴こえては…



ドン



と、言う音が鳴り響いた。






銃声?ではない。聴いたことはないが多分違う。

太鼓?

こんな夜更けに?


ドン



腹にズシッとくるその音は

こうして外に来るとはっきり聴こえる。


これが住宅街で鳴っていれば

家々の電気が点灯するだろう。




また笑い声が聴こえる。

階段の奥から。







若者が集まって騒いで音を立ててるのだろうか。




「とりあえず行ってみるか」



普通の人ならそのまま引き返す。

が、夏谷の選択肢にはそれがない。






鳥居をくぐり、階段の一歩目を踏んだ。



そして一歩

また一歩





先が暗くて見えない階段




階段を上る度に

ビチャビチャと水溜りを踏むような音がした。


夏谷は驚きもしない。


水。





「何かあればこの水が守ってくれる」



夏谷の身体に薄い水の膜が階段を上がるたびに包んで行った
















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