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アサクラ小牧
第1話 火
自分の右手を見ていた。
こんな事が現実に起こるのだろうか。
会社の喫煙所で煙草を吸おうとしたら、ライターがない。物をよく失くす。
誰かに借りようと思ったが、昼休憩も終わりそうな時間なので誰もいない。
ついてないなぁ
何もかも。
いや、自分がだらしがないだけ。
会社ではミスの連続。
週初めから業務より、上司に怒鳴られっぱなしだった月曜午前。
ぐうの音が出ないほど絞られた。
反論の余地すらなかった。
言い訳をした所で上司の怒りに火がつくだけだった。
ただでさえ危うい立場。
春日部正尚は煙草を元に戻そうと
したが、火のついていない煙草を加えたまままだ口惜しく右手の人差し指で煙草の先に火を灯す仕草をして戻そうとした時
ジ…ジ…
と、音がした。
喫煙所に煙があがる。
昼の休憩が終わるチャイムがなる。
そして朝から怒鳴りっぱなしだった上司が足早に持ち場へと、こちらを睨みながら去って行く。
春日部は人差し指を見ていた。
そして何事もなかったように煙を吐いた。
そうだ、昨日の酒がまだ残ってるんだ。んな訳ない。
ありえない、バカバカしい。
きっと怒られすぎてどうかしてるんだ俺は。
火のついた煙草をグリグリと灰皿に潰して小走りで持ち場へ向かった。
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