意味決定委員会【KAC20237】
あーく
意味決定委員会
「言い訳とはなんだろうか」
「どうした急に。『意味決定委員会』か?」
説明しよう。
『意味決定委員会』とは、様々な単語の意味を具体的に決める委員会である。
過去には、例えば「深夜0:00過ぎに言う『明日』は『今日』の意味だが、午前3:00までは『明日』でも有効」と結論付けたという実績がある。
なお、構成員は俺とコイツのたったの二人。
高校から始まり、社会人になった今でも続いている茶番である。
「言い訳かぁ。確かによく『言い訳するな!』って言う人いるよな。『いや、言い訳じゃなくて事実なんだが』って」
「そうなんだよ。どんな事実でも全部言い訳にされてしまうのが腑に落ちないんだよ。問題は、どうすれば言い訳ではなくなるかだ」
俺はまず、どんな人が「言い訳するな!」と言うかを思い浮かべた。
上司が怒っている場面、先生が怒っている場面――常に誰かが怒っている気がする。
「怒っている人が主導権を握りたいから『それは言い訳』って言い張ってるだけじゃ?」
「確かに、勝手に言い訳と決めつけてるだけかもしれん。でも、理由によっては許されるときもあるだろ」
次に、言い訳に使われる理由を思い浮かべた。
電車が遅れて遅刻した、私ではなくあいつがやった、など――言い訳は全て他責である気がする。
「保身の理由は言い訳になるんじゃないか? 電車とか他人のせいなら怒られる。でも、自分のせいなら言い訳にならないから許される」
「うーん……本当に自分のせいじゃないときはどうすんだよ」
「それは言い訳だ。なぜなら言い訳は『その問題の原因を自分のせいにするかどうか』で、『事実に関係なく、責任を他人に押し付けた時点で言い訳となる』。どうだ?」
「世知辛いな」
俺は本当にこれでよいか頭の中で何度もシミュレーションをしたが、この仮説はどうやら正しそうだ。
すると、待ったがかかった。
「いや、待て。それは怒っている人が前提だろ? どんな理由でも許してくれる人もいるぞ」
『言い訳するな』と言うのは怒っている人、という先入観のせいで見落としていた。
他人のせいにしても許してくれる人はいる――本当にそうか?
「例えば電車が遅れて大事な会議に遅刻したとき、遅延証明書を見せれば『じゃあ仕方ないね』と許される」
「あ、そうか」
「それと、相手が理詰めするタイプの場合、『理由はいいから改善案出して』ってなるぞ」
「んんん?」
なんだか頭が混乱してきた。
「つまり、『なにかエビデンスとか改善案とかがあれば言い訳にはならない』ということか?」
「そういうことだな。ということで今から彼女に謝ろうと思う。浮気がバレちまった」
「……俺に話を持ちかけたのはそういうことか」
「今の話だと、『エビデンスとか改善案があれば言い訳とはみなされない』。だから改善案があれば許されると思うんだ」
どうしてだろうか?
結論が出たにもかかわらず、何か心の中にモヤモヤとしたものが残っている。
「
「…………」
和美は笑顔を保っている。
怒っていないということは、改善案を出せば許してくれるはず。
「今回は上司に誘われてキャバクラに行ったから、次は誘われても行かないようにするよ」
目の前に和美の拳が飛んできた。
鼻血を垂らしつつ床に伏していると、スマホにメッセージが届いた。
『さっきの話なんだが、理詰めするタイプの上司は言い訳と捉えた上で改善を求めていたのでは?』
「
意味決定委員会【KAC20237】 あーく @arcsin1203
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